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浅野哲也新体制になって３試合。結果は１勝２敗だが、福岡は確実に変化の跡を見せている。
やり方そのものが変わったわけではない。浅野監督が着手したのは、従来の戦い方をベースにしたまま、その特長を最大限に引き出すこと。守備面では、高い位置から行けない時にブロックを作って守備を安定させることを付け加え、攻撃面では両サイドバックの位置を高く設定した。そして、若干のメンバー変更は、選手に対する評価の違いではなく、それぞれが持つ特長を最大限に生かすために行われたもの。第22節の柏戦では、後半途中から、キム ミンジェが左ＳＨの位置でプレーしたが、それも、ミンジェを守備の負担から解放し、彼の最大のストロングポイントである攻撃力を活かすためのものだった。「チームとしてやるべきことが、より明確になった」と中町公祐も話す。
もちろん、まだまだ解決しなければならないものは多い。前節の柏戦で、執拗に裏のスペースを狙ってくる相手に対し、準備が整っていない中でラインを高く設定することにこだわって失点を重ねたのも、そのひとつ。勝負どころでミスを重ね、チャンスの芽を広げられなかったのも引き続きの課題だ。しかし、前後半で別のチームのようになってしまう現象は消え、失点の後に大きく崩れる姿は見られなくなった。そして何より、自分たちがやろうとしていることを、90分間を通して表現できるようになった。スタンドの大歓声に後押しされて勝利を手にした川崎F戦は典型的な例。柏戦では、力の差を感じさせられながらも、いくつかのポイントを押さえさえすれば勝点を拾えると感じさせるサッカーを展開した。そして福岡は、感じられる変化を勝利という形にするために神戸を迎える。
対戦相手の神戸は９勝４分９敗の８位。現在は４連勝中と好調を維持している。総得点28は決して多くないが、ここ４試合だけを見れば11得点。好調な攻撃陣がチームを引っ張っている。その中心は、ポポ、吉田孝行、朴康造、大久保嘉人の４人。４連勝中は、この４人だけで11得点中８点を叩きだしている。中でも突出した活躍を見せているのが、４試合で５得点を叩き出した吉田。第19節の甲府戦で今シーズン初ゴールを決めると、この試合で２ゴール。続く浦和戦でも２ゴールを挙げ、前節の新潟戦では貴重な同点ゴールを決めたのをはじめ、逆転ゴールを生むきっかけも作った。スピードと、わずかな隙を見逃さない得点感覚に優れる選手で、新潟戦でのゴールは、その特長を発揮してのものだった。
攻撃の始まりは大久保。２列目を自由に動いてボールを引き出す。そして大久保が前を向くと同時に、吉田、ポポの２トップが動き出し、その２人を２列目から前線に飛び込んでいく朴康造がサポートに入る。攻撃のスイッチが入ってから縦に速い攻撃が４連勝の最大の要因でもある。
そして、総失点26はリーグ４位タイ。その数字が表わすように、固い守備が神戸の、もうひとつの特長。ラインを下げて守りを固めるのではなく、アグレッシブに高い位置からボールにプレッシャーをかけ、奪ってから前の４人に預けて攻撃につなげる。そして、前節まで、全試合フル出場を続けていた北本久仁衛、河本裕之の両ＣＢとＧＫ徳重健太の３人がチームの中央を締めて得点を許さない。ただし、次節は河本が累積警告のために出場停止。そのポジションをどうやって埋めるかが、神戸にとっては、ひとつのポイントになりそうだ。
前回の対戦では、アウェイながら福岡が勝点１を奪ったが、「あの時とは全くチーム状況が違う。アグレッシブでスピードもあり、得点力もある。勢いに乗せると嫌な相手。前回のようなギクシャクさはない」と浅野監督は警戒を強める。しかし、だからと言ってひるむ様子は見せない。「柏戦の反省を踏まえて修正すべき部分は修正するが、基本的な部分に変更はない。主導権を握って戦い、90分の中で勝利を目指す」と話す。
試合は、ピンチもあれば、チャンスもある白熱した試合になることが予想される。中３日の試合では、お互いに思うようにならない部分もあるが、そんな試合で勝敗を分けるのは、勝利に対する思いを相手よりも強く表現できるかどうかにある。そのためには、川崎F戦のような雰囲気を作り出し、スタジアム全体で神戸と戦うことが福岡には求められている。戦いの場所は聖地・レベルファイブスタジアム。福岡に住む人にとって、福岡の誇りを背負って戦うチームにとって、ここが特別な場所であることを示さなければならない。その先に勝利がある。
以上
2011.08.23 Reported by 中倉一志
