というのは、先週６月15日、高木選手のオランダ・ＦＣユトレヒトへの移籍に関する記事がスポーツ紙で大きく報じられました。正式には未発表だったため、報道先行となってしまいましたが、このニュースを受けた川勝良一監督はその日の練習後、高木選手を個別にグラウンドで呼び止め、対話。その際、指揮官は次のように話したそうです。
「ヴェルディを離れるまで残り２試合しかないけれど、ここが人間性、選手としての見せどころだ。去るクラブよりも、『新しいクラブに早く行きたい、行きたい』という思いを露わに出して、この約２週間を心ここに在らずで過ごすのか、それともずっと育ってきたチームが（その時点では連敗中だった）厳しい状況の時、最後の最後、離れるまでヴェルディの選手として戦い、できれば自分が点を取ってチームを勝たせてから出ていこうとするのか。そういう気持ちは、いくら隠しても出てしまうもの。でも、善朗は、絶対に前者の性格ではないと思っている。最後まで、チームのために結果を残していくのがプロ。ヴェルディの選手として勝利に貢献し、良い状態で旅立っていったほうが、自分のためにも良いだろう」
昨季、まだユース所属選手だったにも関わらず、戦力としてトップに引き上げてくれた川勝監督。この１年弱、厳しくも愛情たっぷりに育ててくれた恩師の言葉を、高木選手はしっかりと受け止め、ゴールという最高の形で応えてみせたのでした。
ゴールを決めた瞬間、アウェイ・富山にも関わらずゴール裏に駆け付けてくれた東京Ｖサポーターの元へ一目散に走り寄り、喜びを爆発させました。そして、何度も、何度も、何度も思い切りユニフォームの胸のヴェルディ・エンブレムを強く握りしめ、アピールしていた高木選手。その18歳の姿には、自分を育ててくれた人への謝意、深い深いヴェルディ愛、そして未来への強い決意が表れていたのではないでしょうか。
この試合、高木選手はベンチからのスタートでした。しかし前半21分、負傷した井上平選手との交代で早くも出番が回ってきました。もちろん、ケガによる交代だけに、決して喜ばしいことではありません。それでも、日本での残り２試合という限られた機会の中で、１分１秒でも長くプレーできる時間が巡ってきたという彼の強運、そしてその大事な舞台できちんとゴールを決める“もっている度”に、海外移籍するための大事な資質を見させてもらったように思います。
富山からチームが帰京した20日、クラブからも正式に高木選手のＦＣユトレヒトへの完全移籍が発表されました。
改めて現実のことだと受け止めると、昨年10月、J's goalの月間ＭＩＰでのインタビューの際、海外移籍について尋ねたところ「チャンスがあれば」と話していたことを思い出します。早くもそのチャンスが到来したというわけです。担当記者として、２年ほどそばで見続けさせていただいてきた身としては、海外挑戦はとにかくとてもうれしい。でも、ちょっと…いえ、本当はかなり寂しいというのが正直な気持ちです。
「ユトレヒトは、前に練習参加したことのあるクラブで、雰囲気やどんな選手がいるかもだいたいわかっているので大丈夫」と、高木善朗選手。18歳とはいえ、しっかりと自分でものごとを考え、決断し、それに向かって努力ができる自立した青年です。必ず海外でも通用し、もっともっと大きな舞台で結果を残していくだろうことを信じて止みません。
今週末に行われるホームゲーム、Ｊ２第18節・岡山戦が彼のラストゲームとなります。オランダへ旅立つヴェルディっ子の雄姿を観られる、最後のチャンスです!! ぜひ、お見逃しなく。
以上
■6月25日（土）J2 第18節 東京Ｖ vs 岡山（18:00KICK OFF/味スタ）
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2011.06.20 Reported by 上岡真里江
