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栄枯盛衰…。今節対戦する大分と東京Vは、19年目のJで、天国と地獄を味わった２チームである。天国とは、もちろんタイトルである。東京Vは説明するまでもないが、伝統、人気、実力ともにズバ抜けた存在としてJの黎明期にタイトルを独占したチームである。大分は親会社を持たないチームとして県リーグからJの頂点に昇り詰め“地方の星”として2008年に脚光を浴びたチーム。その両チームが一転して、ここ数年はクラブの財務状況が圧迫し、チーム存続危機にまで追いつめられたのは記憶に新しい。今もピッチ外でのネガティブな話題がつきず、ピッチで結果を出し続けることが宿命とされているチームである。手の抜いた試合なんて考えられない。好試合が期待できそうだ。
２連勝中の東京Vは、ようやく攻守がかみ合い、本来の力を取り戻しつつある。特に前節の北九州戦では、退場者を出し数的不利の状況から４点奪い大勝した。伝統のパスサッカーと選手個々の閃きは健在で、ハットトリックを決めた平繁龍一、２試合連続得点中の井上平といった前線の選手にピンポイントでパスを合わせることのできる菊岡拓朗、ドリブルで局面を打開できる河野広貴とタレントは黄金期を彷彿させる。守備では気持ちを前面に出しチームを鼓舞する土屋征夫を中心に堅守を築きつつある。これもまた、クラブのDNAを受け継いだものである。「勝利は自信をもたらし、すべてを前向きにしてくれる。そこからいろんなことができるようになる」とは前節試合後の土屋の話しだ。自信を確信に変えるためにも、３連勝を狙いに大分に乗り込んでくるだろう。
迎える大分も好調だ。前節では首位の栃木から今季ホーム初勝利を手にした新システムがハマった。「守備のブロックをつくりやすかった。２列目からの飛び出しに注意し、ポジショニングに気をつければハマると思う」（作田裕次）と選手も手応えを口にしている。今節は、「欲を言えば、ボールを動かしたかった」（田坂和昭監督）修正点を改善し、累積による土岐田洸平の出場停止の穴を埋めるために、どの選手を起用するか注目が集まる。これまでの練習を見る限り、ボールをキープでき、守備もアグレッシブにできる幸野志有人が有力か。「（状態の）いい選手を使うコンセプトは変わらない」とブレない指針を持つ指揮官が、「腰の引いた戦いを絶対にしたくない」というホームで、どのようなプランを用意しているのだろうか。
壮絶な乱打戦あり。１点を争う緊迫した試合もあり。互いにチームの誇りを懸け、全力でサポーターが応援したくなる試合であれば、それでいい。クラブ再建への道には経営陣の手腕にかかる部分は大きいが、ファンやサポーターの目はチームに注がれる。誰しも強いチームを望み、黄金期の輝きを願っている。Jの酸いも甘いも知る者同士の対決は、結果とともに今後の道標となるような試合内容にも期待したいところだ。
以上
2011.05.21 Reported by 柚野真也
