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中断明けの3試合で2勝1分の好成績を収めながらも、その後に2連敗を喫した鳥取と、同様に中断明け初戦を制して開幕2連勝とした後は、2分2敗と結果が出ていない水戸。似たような失速状態から、浮上へのきっかけをつかみたいチーム同士の対戦となる。
鳥取は前述の中断明け3試合を無失点で乗り切った後、千葉に0‐1、札幌に0‐2で敗れているが、相手との力関係から考えても、全般的な守備の出来は決して悪くない。最大の問題は攻撃力、特にシュートに持ち込むバリエーションが少ないことにある。現状で得点の可能性を感じさせるのは、リスタートと、高い位置でボールを奪ってからのショートカウンターの2つのみと言っていい。スローダウンさせられると、敵陣に侵入しても、そこから先で攻めあぐねる場面が頻発している。
こうした状況を打破すべく松田岳夫監督は攻撃陣を再編し、ＦＷの一角で、ハメドが今季初めて先発起用される見込みとなった。08年に加入し、昨季はＪＦＬでチーム最多の10得点を挙げて昇格の立役者となったものの、今季は2試合に交代出場したのみ。前節はベンチからも外れたが、トリッキーなプレーを駆使する突破力、利き足の左足から繰り出すシュートの威力と精度はチーム随一で、松田監督も「点が取れる、高い位置で基点を作ってゴールに向かうことができるという点で魅力がある」と起用の意図を語っている。
ただしハメドは、運動量と守備力については多くを期待できない。これまで前線からの献身的な守備がチーム全体の堅守を支えてきたことを思えば、バランスが大きく崩れる可能性もあるだろう。実際、ハメドを起用した紅白戦では控え組に攻め込まれる場面も多く、スタッフ・選手間では試行錯誤が繰り返されているのが実情だ。さらにＧＫが井上敦史から、中断期間中の右頬骨骨折が癒えた小針清允に代わる見込みで、連係面で影響が出る可能性もある。
水戸としては、こうした状況を勝機につなげられるかがポイントの一つ。鳥取の2試合に対し、水戸は3試合連続無得点と、同じく得点力不足に苦しんでいる。ただし、松田監督が「守備がしっかりしていて、カウンターが強烈」と警戒するように、奪ったボールを縦に運ぶ際の鋭さは鳥取を上回る。特に、自陣で奪ったボールを一気に敵陣へと運び、複数の選手が絡んでフィニッシュに持ち込むロングカウンターは迫力十分で、前節の熊本戦でも多くのチャンスを作った。リトリートが早く、ゴール前をしっかり固める守備は鳥取が最も苦手とするところで、そこから効果的な攻撃を繰り出せば、主導権を握ることができるだろう。
もう一つ、勝敗のカギを握りそうなのがセットプレー。鳥取にとっては前述の通り、数少ない得点パターンの一つであり、これまでのチーム3得点のうち2得点をＣＫから決め、札幌戦でもＣＫから決定機を生み出した戸川健太のヘッドに期待がかかる。一方で水戸も、191センチの長身、加藤広樹をターゲットにする空中戦は脅威で、セットプレーの守備に課題がある鳥取のスキを突きたいところだ。
水戸は今季のアウェイゲームは2戦2敗と結果が出ていないが、鳥取も過去2試合のホームゲームは1分1敗で、しかも無得点。初勝利のためにも、まずは初得点が求められる。ハメドは「クラブにとっても、自分にとっても歴史的なゴールを、ぜひ決めたい。決めることができたら、（母国のコートジボワールにちなんで）アフリカのダンスを見せるよ！」と笑顔で宣言した。自らのゴールとダンスで、とりスタに歓喜をもたらすことができるだろうか？
以上
2011.05.20 Reported by 石倉利英
