どの世界でもコミュニケーションは重要だが、試合中に監督や選手が自らタイムアウトをとれないスポーツのサッカーでは、試合中の選手間のコミュニケーションは重要だ。だが、試合では「ここで確認したい」「相談したい」と思っても、その瞬間に思いどおりにはプレーは途切れない。それだけに、『試合』=『本番』の前の『練習』=『準備』でコミュニケーションをしっかりとり、「たぶん〜だろう」とか「〜でいいんじゃないか」という曖昧さを払拭し、疑問や不安をゼロにして試合に臨むことが必要だ。そして、それが常によくできているチームほど強いように思われる。
例を挙げると、4月27日の千葉の午後練習では、給水のタイミングで志垣良コーチを交えて坂本將貴がマーク・ミリガンと話していた。内容を聞くと、「F東京戦(J2リーグ戦第8節)ではディフェンスラインが下がっていたということで、後半からミルジー(マーク・ミリガンの愛称)が入って修正したけど、今日はミルジーだけがラインを高くしていた。一緒にやるのが久々なので、ラインのことを確認しました」とのこと。また、原正宏通訳を介してオーロイと話していた青木孝太は、「普段はあまり一緒にやっていないので、ディフェンスのポジションのことを言われました」と話した。自分の意見を伝え、相手の考えを聞いて、思い込みや推測のままで先へ進まないことが選手とチームを成長させる。
『準備』段階でのコミュニケーション不足を感じて残念だったのが、千葉のJ2リーグ戦第8節の試合前のイベントとして企画され、直前に中止になった「『You'll never walk alone』を歌おう!」という企画だ。リバプールを筆頭に世界的に多くのクラブチームのサポーターが歌っており、最近では東日本大震災で被害を受けた日本を鼓舞する歌として扱われているが、この歌はF東京サポーターが長らくF東京の選手に向けて歌っているもの。そのため、J1昇格争いのライバルのF東京とホームゲームで戦う前にその応援歌を歌うことを多くの千葉サポーターが嫌がり、それを各々がクラブに伝えたようだ。それは、筆者にはごく自然なサポーター心理・行動に思えた。
中止決定後、千葉のクラブスタッフに事情を聞くと、あの企画は千葉サポーターの発案だったそうだ。発案者はたぶん「千葉サポーターは嫌がらないだろう」という思い込みのまま、ほかのサポーターグループに確認することなく提案され、千葉のクラブスタッフは「千葉サポーターの総意だろう」と思い込んで発表に至ったようだ。他者の心情を想像して思いやる気持ち、そしてコミュニケーションを欠かなければ、大事な一戦の前に千葉のサポーターもクラブスタッフも心身両面で無駄な労力を使わずにすんだのではないだろうか。今後は、多くの千葉サポーターが気持ちよく応援できるように努力していただければと思う。
『思い込み』ということで余談を書かせていただくと、筆者は千葉のオフィシャル媒体で長く仕事をさせていただいているからか、「千葉のオフィシャルライター」だとか「千葉県に住んでいる」とか思われがちだが、いずれもNOだ。また、小心者の筆者は自分の原稿への反応が知りたくて、時々、千葉サポーターの皆さんのブログや「赤沼 ジェフ」の検索でヒットしたページを見るのだが、某掲示板では筆者が千葉のオフィシャルの携帯サイトで試合のプレビューやレポートを書いていることになっていた(苦笑)。筆者がオフィシャルライターだったことは一度もなく、携帯サイトの仕事は一切していない。また、過去に『J2日記』に掲載された筆者の原稿を「クラブに頼まれて書いた」「選手が書かせた」と思っている人がいるようだが、それも絶対にない。筆者が自分で皆さんにお伝えしたいと思うことを書いているので、どうか誤解の思い込みをされませんようにお願いします。
以上
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2011.04.28 Reported by 赤沼圭子
J’s GOALニュース
一覧へ【J2日記】千葉:『準備』段階でのコミュニケーション(11.04.28)
4月27日の練習で、志垣良コーチ(左)を交えてマーク・ミリガン(右)とディフェンスラインの高さや上げ下げについて話し合っていた坂本將貴(中央)
J2リーグ戦第8節の試合前のミニライブで3曲を熱唱したアーティストの光永亮太さん。3曲目は被災者を励ましながら日本が一つになるための歌として、観客に「一緒に歌ってください」と言ったあとで『上を向いて歩こう』を歌った
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