ガイナーレ鳥取のホーム開幕戦、FC岐阜戦が3月13日(日)に迫ってきた。地元は高揚感に満ちているが、そんな歴史的な一戦を心待ちにしている一人が、鳥取市在住の杣和洋(そま・かずひろ)さん。クラブ名『ガイナーレ』の“名付け親”だ。
学生時代はサッカー部に所属し、地元で就職した杣さんは、SC鳥取が中国リーグで戦っていた時代は、新聞で結果を確認する程度の興味しか持っていなかった。しかし、2000年に中国リーグで優勝し、2001年にJFLに昇格したのを機に本格的なサポートを開始。当時は5、6人しか同志がいなかった。クラブも弱小で、JFLから降格する危機に瀕したこともあったが、実力の向上とともに多くのサポーターで埋まるようになったゴール裏で、昨季までのホームゲームは、ほぼ全試合、アウェイにも数多く訪れて声援を送ってきた。
クラブ名が一般公募されたのは、2003年シーズン開幕前。杣さんは愛媛FCや栃木SCなどのシンプルなクラブ名が好きで、「SC鳥取のままでいいのに」と思っていたというが、とにかく考えてみることにした。そのとき思い出したのが、アウェイへ応援に訪れた際の、地元のサポーターからの質問。
「SC鳥取は、鳥取市のクラブなんですか? それとも米子(よなご)市のクラブ?」
クラブ発祥の地は鳥取県西部の米子市で、当時はホームゲームの多くが米子市で行われており、杣さんも県庁所在地の鳥取市から、米子市まで応援に駆けつけていた。『ガイナーレ』が浮かんだのは、「米子市で活動していることを示す名前にしたかった」という思いから。地元の方言で『大きな』を意味する「がいな」に、『大きくなーれ』という思いを込め、2つを合わせた造語だが、西側のお隣、島根県でも使われる「がいな」という方言は、鳥取県内では中部地区までで、東部の鳥取市では使われていない。「ガイナーレ」は、当時の状況を的確に表したクラブ名でもあった。
「ガイナーレ」はその後しばらく、あくまで愛称の位置付けにとどまり、公式には「SC鳥取」のままで活動を続けたが、Jリーグ参入を目指して運営会社が設立された2007年に、正式にクラブ名を「ガイナーレ鳥取」に変更。2008年には活動拠点を米子市から現在の鳥取市に移し、ホームゲームも、鳥取市のとりぎんバードスタジアムで行われるようになった。
そこから少しずつ力を伸ばしたクラブは、2008年、2009年と2年続けて5位に終わり、あと一歩でJ2昇格を逃す挫折を乗り越えて、昨季ついにJFLで優勝して昇格を実現。その過程で「ガイナーレ」の名前は全県に広まった。鳥取市の名付け親が、米子市のことを思ってつけた名前は、車で約2時間という東西の物理的な距離だけでなく、文化や風習の違いから、精神的にも距離があると言われる2つの都市を、サッカーでつないでいるのだ。そして、後ろに県名を冠した「ガイナーレ鳥取」は、鳥取県を代表するクラブとして3月13日、新たな一歩を踏み出す。
3月6日の徳島戦、杣さんはアウェイまで応援に行き、これまでと同じようにゴール裏で声援を送った。結果は0−1。「現地では悔しかったですけど、帰宅してから中継の録画を見て、『Jリーグ ディビジョン2』という字幕に続いてガイナーレの名前が出ると、実感が沸いてきました。やっとここまで来たか、という感じです。それにしても、Jリーグって面白いですね」と、新たなステージを新鮮な気持ちで楽しんでいる。
一男一女の父親でもある杣さんは、現在中学2年生の長男がサッカーを始めた頃から、ある夢を抱いている。
「息子に将来、ガイナーレでプレーしてほしいんです。その姿を、とりぎんバードスタジアムで息子の子供、つまり自分の孫と一緒に見てみたい。孫に『おじいちゃんが若かった頃は、すごく弱かったんだよ』と教えてあげたりしながらね。その頃はゴール裏は卒業して、メインスタンドで静かに応援しているでしょう」
親から子へ、子から孫へ、地元のサッカークラブを通じて、歴史と思いがつながっていく。それはまさしく、Jリーグが掲げる『百年構想』の理想形の一つだろう。クラブを愛する多くの人々の思いに支えられながら、ガイナーレ鳥取の挑戦が始まる。
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2011.03.11 Reported by 石倉利英
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