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【Jユースカップ2010 決勝 F東京 vs 横浜FM】レポート:横浜FMが三大タイトルのチャンピオンを倒してタイトル統一に成功。F東京に競り勝った強さが成長の証(10.12.27)

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12月26日(日) Jユースカップ2010 決勝
F東京 3 - 4 横浜FM (13:33/長居/2,587人)
得点者:4' 星 雄次(横浜FM)、30' 江口 貴俊(F東京)、57' 松本 翔(横浜FM)、67' 岩木 慎也(F東京)、78' 高橋 健哉(横浜FM)、88' 江口 貴俊(F東京)、100' 松本 翔(横浜FM)

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昨年のJユースカップのチャンピオンがF東京で、今年のクラブユースのチャンピオンが東京Vで、高円宮杯のチャンピオンが広島。このクラブチームの三大大会のチャンピオンチームが揃った今年のJユースカップ決勝トーナメント。その3チーム全てと対戦する運を持っていた横浜FMは、広島に5-3で勝ち、東京Vに2-0で勝って決勝に進み、無失点で決勝トーナメントを勝ち進んできたF東京に4-3で勝利。横浜FMに初のJユースカップをもたらしただけなく、ここ12ヶ月間のタイトルを統一する王座についた。しかし、優勝してもあまり嬉しそうではない横浜FM・松橋力蔵監督は淡々としていた。喜びたいのに喜ぶべきでないと考えているのか、ニヤニヤしそうな表情筋や口角に必死で制御を掛けているのか…。

この王座への道程は「上手いけど勝負弱い」とも言われることがあった横浜FM・成長の過程でもあった。なかでもJクラブで最高に粘り強く闘うチーム・広島との試合は2-0とリードしながらも2-3と逆転され、そこから3-3に持ち込んで延長戦に持ち込み5-3と勝利した。ボールへの執着心では広島が上回っていたが、その重要性を感じながら勝ったことで自信がついた。そして、迎えた決勝戦。安定感と個人能力のバランスが高いレベルで融合するF東京には武藤嘉紀というスーパーな選手がサイドハーフにいて、個人でも相手チームのバランスを崩すことができる。このF東京に対して横浜FMの松橋力蔵監督は武藤を特別に意識させなかった。もちろん選手は何度も対戦しているので、F東京の戦い方も武藤の力も知っている。しかし、松橋監督は選手が自分で判断することをここでも要求した。キャプテンの保田隆介は「チーム(戦術)の大前提として、ボールがあるサイドに人をかけるので武藤君にマークに行って、もし逆サイドにボールを出されればスライドしていけばいいという考え方がある。(逆サイドは数的不利になるので)捨てるに近い考え方でもあります。1年間そうやって来ました」と話す。

実際に武藤がドリブルをすれば1対1でボールを奪うことはほとんど不可能で、常に2人以上、ペナルティエリア付近なら4人で抑えに行く場面もあった。試合の流れは個人のキープ力で上回るF東京がやや優勢だったが、先制点を挙げたのは横浜FM。武藤をマークする右サイドバックの星雄次がドリブルで上がってから逆サイドにグラウンダーで入れたボールを中央で小野裕二がスルーし、すぐ後ろにいた星広太が少し触って逆サイドにいた松本翔に流れ着く。松本のシュートはGKに阻まれたが星(雄次)が猛然とゴール前に駆け上がってこぼれたボールを蹴り込んだ。これが、結果的にこの日のゴールの中で松橋監督が一番気に入っているゴールになる。

先制したことでF東京の選手に少しの焦りを感じさせることが出来たが、それも束の間、F東京はすぐさま攻勢に出る。攻守にわたって1対1で有利になることが出来るからだけはなく、横浜FMには頭の上をボールが行き来するだけの選手がいて11対11なのに数的不利になってしまうような場面があった。逆に、F東京はゲームに絡まない動きをする選手はいない。これもF東京の強さの理由だろう。しかし、横浜FMの松橋監督はこの未完の部分を選手が自分で感じて判断する駆け引きとして、あえて残している。言いたいこともベンチでじっと我慢。30分に武藤のサイドチェンジから同点ゴールを許した横浜FMは、57分にPKで再びリードするが、67分には自陣での不安定なパス回しからミスが出て再び同点ゴールを許してしまう。しかし、「ここまで打ち合いの試合を勝ってきたので悲観的になることはなかった」(保田)というメンタルの強さがあった横浜FMは、78分に松本のクロスに途中出場の高橋健哉が走り込み、左足のつま先で触って3度目のリードとなるゴールを決めて3-2。

この時間帯になるとF東京のプレーにも慣れたのか横浜FMの選手が自信を持ってプレーしているように感じた。しかし、F東京の倉又寿雄監督はツートップを下げてフィジカルの強い武藤と橋本拳人を上げてパワープレーで主導権を取り戻す。武藤をFWに上げることでサイドからのボールの供給能力はある程度犠牲になるが、この日はF東京も横浜FMもサブの選手が活躍した。F東京は最初の同点ゴールを決めた江口貴俊が3度目の同点ゴールも決める。柏戦で負傷退場した「佐々木陽次の代わり」とは言わせない充分の活躍。前日、宿舎で見た天皇杯で、トップチームが見せた粘りに匹敵する貴重なゴールだった。78分の勝ち越しからタイムアップまでの12分間は、横浜FMにとって守るには長すぎる時間だった。もともとそれが残り5分でも、時間をうまく稼いだり、使ったりして勝つ気はない横浜FMにとって、それは起こりうるケース。広島に競り勝った自信が活力として残っており、3度追いつかれても下を向くことはなかった。

延長戦に入っても足が止まらず、攣(つ)らない両チーム。立ち上がりはF東京がFW・武藤を中心に個の力を発揮して決定機を作るが最後の最後の場面では横浜FMが守りきる。延長前半・94分の武藤のドリブル突破は、ペナルティエリアでファールを受けたようにも見えたが武藤は倒れてPKを貰うことは考えていなかったようで、大きく体勢を崩しながらもシュートまで持ち込んだ。ゴールは決まらなかったが、この精神の素晴らしさも武藤の魅力。その後はチャンスとピンチが交互にやってくる展開となり、そのチャンスを活かしたのが横浜FM。ワンツーで右サイドを突破して途中出場の鈴木雄斗が入れたクロスに、162センチの松本が、ヘディングは高さだけではなくタイミングでやるものだということを証明するゴールを決める。後のないF東京はパワープレーを更に強めるが守ろうとしない横浜FMのプライドがそれに立ち向かう。ゴール前では保田がクリアしようとしているボールに鈴木がスライディングするくらいボールに執着して闘った。そして、120分間の激闘の末にチームの誇りとなるJユースカップの初タイトルを手にした。

「メンタルが強くなったかどうかは、ここでどうであったかよりも、この先でどうなるかで見えてくると思う。次のステージで試されるものは大きいと思う。Jユースカップはみんなに賭ける想いがあるから(戦えるが)、本当の強さはそういうところだけでは図れないと思う。でも、ここでやらないと先はない。そういう意味では驚くほどの成長を見せている。試合中、選手に言いたいことはいろいろあるが、それ(プレーの選択肢や判断の考え方)はトレーニングで伝えてきたつもり(だから言わない)。選手自身の判断でそれをこの場で出せるかどうかが重要。狭い中、時間がない中でコミュニケーションを取り、お互いを感じ取れるのか。その中でスピードが上がっていけば自然とワンタッチが増えるはず。F東京相手に出せれば本物だと思う。その点では不足しているものがある。まだまだ大味なところもある。1点目はよかったけれど、あとはプレーが止まっている中で隙をついた場面が多かった。1本目、2本目のパスはよくても、ゴール前に入る3本目、4本目はなかなかスピードアップできない。足元でボールを止めてから考えていれば崩せない」という趣旨の話をする松橋監督。これがトップチームなら大騒ぎして喜べるのだろうが、松橋監督の考える育成を3年間の時間で表現することは難しいかもしれないが、難しいと諦めずにやり続けることに意味がある。その姿勢に対する勲章が今回のタイトルかもしれない。その相手がF東京だったということがその価値を更に高めている。そして、松橋監督が言いたいことを我慢した中で選手が瞬間瞬間の判断のクオリティを高めてタイトルを取ったことに――完全な満足はないだろうが――大きな成長を認めることが出来る。

長居にはJ2リーグの最も少ないときと同じ程度の観客(2587人)が入り、J1の優勝が決まる大事な試合並みの偉い人(日本サッカー協会、Jリーグ、クラブ関係者)が観戦に来ていた。テレビ中継もあったので準決勝とは違う雰囲気だったが、両チームは大舞台で真摯に向き合って戦った。トップチームに昇格する選手はプロの世界で次の戦いが始まるし、大学に進学する選手の多くは4年後のプロ入りを目指した挑戦を始める。F東京のエース・武藤と横浜FMのキャプテン・保田は慶大でチームメイトになり、F東京の前岡信吾は京都の選手が多く進学する立命大で新たなスタートを切るなど、チームメイトとの別れは新しいチームメイトとの出会い。国内最高峰のユース年代の戦いで経験を積んだ選手のJリーグでの活躍、4年後のJリーグ入りが楽しみになる2010年のJユースカップだった。

以上

2010.12.27 Reported by 松尾潤
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