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すでにJ1復帰、J2優勝を決めている柏とのラストバトルは、後半戦の「上位決戦」だ。シーズン序盤で苦戦した草津は６月のW杯中断期間を挟んで起死回生を果たした。20節からの後半戦で３連勝スタートを切ると前半の不振がウソのような快進撃をみせて着々と勝点を積み重ねた。高田保則、廣山望、尾本敬らに戦力外通告が下された35節甲府戦からはチーム内に鉄の結束が生まれ甲府、千葉、横浜FCの上位陣をなぎ倒して連勝を伸ばしている。
草津の後半戦績は11勝１分５敗で勝点34。後半戦首位の福岡（11勝３分３敗）の36点には及ばないものの、柏（９勝６分２敗）の33点を上回る成績を残しているのだ。ちなみに草津は昇格組の甲府、福岡に加えて千葉、東京V、熊本、横浜FCの上位陣から白星を奪っていて７位以内で残すところは首位柏のみ。「今はヤスさん（高田）とかヒロさん（廣山）とか選手それぞれが得意なポジションでプレーしていて個の力のすべてがチームに還元されている」（熊林親吾）。今季わずか２敗しかしていない柏を倒すのは容易なことではないが、草津は柏に真っ向勝負を挑む。
前節敵地横浜FC戦で４連勝を決めた草津だが、高田の決勝ゴールを呼び込んだのは左サイドバック田中淳の執念だった。体力が底をついていた後半４３分、左サイドを駆け上がった田中はマークが薄いとみるや内へと切り込んでミドルシュートを放つ。田中はその瞬間に倒れこんだため自分のシュートがどんな軌道を描いたか分からなかったという。「起き上がったらヤスさんのゴールが決まるのが見えた」（田中）。選手たちは極限の中でプレーし、結果をつかんだ。松下裕樹は「（横浜FC岸野靖之監督の）根性サッカーに『根性』で勝った」と胸を張った。草津は、今季培った力のすべてを柏へぶつける。
正田スタへと乗り込んでくる柏は、すでに目標は完遂したものの手綱はまったく緩んでいない。ネルシーニョ監督は就任以来、トレーニングで力を発揮した選手を試合で起用、チーム内に激しい競争意識を植え付けた。チャンスを勝ち取った選手たちは、指揮官の期待に応えるかのように結果を残しシーズンの荒波を乗り越えた。厳しいときには必ず救世主が現れた。ベテラン北嶋秀朗を精神的支柱に一体となったチームは来季J1戦線へ殴り込むための準備を始めている。今節は栗澤僚一、ホジェルが出場停止となるが問題はないだろう。
４年ぶりの正田スタ来襲となる柏だが、２００６年シーズンの第２節（草津ホーム開幕戦）では昇格２年目の草津を木端微塵にした。ゴールラッシュに沸く柏サポーターたちは正田スタゴール裏芝生席でラインダンスを披露してくれた。あれから４年、草津にとってこの柏戦はチームとしての成長を確認する場所だ。副島博志監督は「Ｊ２で柏と対戦する機会はもうないと思うので自分たちの力を試したい」と語る。Ｊ２で柏のゲームが観られなくなるのは名残惜しいが、柏の選手、サポーターには正田スタでのＪ２ラストゲームをおおいに満喫してもらいたいと思う。そして、試合後には群馬の温泉にでもつかって１年間の疲れを癒してほしい。
シーズン終盤にきて最高のチームに仕上がった草津に、残された時間はあと９０分だ。「チームの調子がいいので早く試合をしたいという気持ちがある半面、このメンバーで戦える最後のゲームになってしまうのですごく複雑な心境だ」。草津の主将・松下は２０１０シーズン最終節・柏戦への気持ちを話した。草津にとって最終戦は、戦力外となった高田、廣山、崔成勇らベテランとの別れを意味する。破竹の４連勝を記録しているチームは、最終戦でクラブ新記録となる５連勝を達成し、功労者の花道を飾る。
以上
2010.12.03 Reported by 伊藤寿学
