大分戦の前日、藤田俊哉が今季限りでチームを離れることが発表された。ちょうど昨シーズンの今頃、主力を含めて大量に契約更新しないという発表があったことで、多少は免疫ができているつもりではあったが、やはり実際に公式に発表されてしまうと、大きな喪失感に包まれる。
23日の大分銀行ドームには、10台が出発したツアーバス、自家用車、そして自転車で山を越えてやって来た人も含め、1,000人近い熊本サポーターの姿があった。大分との「バトル・オブ・九州」を力強く後押ししたいという想いが強かったこともあるが、加えて2年間の在籍期間にもたらしてくれた様々なこと、そして熊本でプレーしてくれたことそのものに対する感謝の気持ちを伝えたいという想いも、少なからずあったのではないかと思う。
ウォーミングアップのために選手達がピッチに登場すると、スタメン発表と合わせて高まったゴール裏の声援はひときわ大きくなる。藤田俊哉は笑みを浮かべながら、スタンドに向かって手を上げ、サポーターの声に応える。いつも通りに。その姿と、ボリュームの上がったスタンドの声援がスイッチになって、写真を撮りながら胸に込み上げてくるものがあった。
ゲームでの出番はなかったが、試合後のミックスゾーンで多くのメディア関係者に囲まれた彼は、今回の決断について次のように話した。
「名古屋から熊本に来た時、2年間思いっきりプレーしようと思っていたのが、ひとつポイントで。ここで2年間やって、自分の身体のことやチーム状況、その他のこともいろいろ考えて、このタイミングが自分にもチームにもいいかなと。だいぶ悩みましたよ。熊本で温かく応援してもらって、その後押しで去年は51試合、今年もここまで24試合出ることができた。チームメイトやクラブスタッフ、関係者の皆さんも本当にサポートしてくれて、自分がサッカーをやりやすい環境を作ってくれた。ホントに感謝することばかりで…、もう少し年齢が若ければ、高木さんの元でもう一度ポジションをつかむトライをしたいという思いもあった。将来に向かっての一歩をいつかは踏み出さなきゃいけないから、どこかで決断しないといけないなと。時間というのは限られてますし、39歳になって、この先も20代のように何年も先を見てサッカーができるわけじゃないので…、その中で判断しなきゃいけない苦しさはありました。何かが決まってこの決断をしたわけではないですけど、もちろん現役を続けることしか考えてないし、いつか熊本と試合ができたり、熊本で仕事ができる日が来ればいいかなと(笑)」
確かに、昨シーズンに比べれば出場時間は減ったが、練習で見ていてもプレーのクオリティが落ちているようには感じられなかった。もちろん本人にしか分からない微妙な差はあるのだろうが、今回の決断に至った判断や、メディアの対応で見せるインテリジェンスも彼のプレーにつながる部分があるはずで、そうしたファクターは体力的な面を十分に補うものだと思う。何より、彼が来たことで、格段にとは言わないまでも、練習環境や選手達の考え方は少なからず変わった。つまりそれだけの影響力を持つ選手だった。言うまでもないけれど。
ひと通りの囲みが終わって再度声をかけ、握手をしてもらった。
爽やかにバスに向かいながら、彼は言った。
「28日もあるんだから、皆ウルウルすんの早いですよ」。
今までと同じように、笑いながら。
赤いユニホームを着てプレーする姿を、この目にしっかりと焼き付けたいと思う。藤田俊哉という選手がこのチームの一員だったことを、ずっとずっと、忘れないために。
以上
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2010.11.24 Reported by 井芹貴志
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