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【J1:第30節 名古屋 vs 大宮】レポート:名古屋が得意のセットプレー2発で大宮を退け勝点差をキープ。今季の強さを象徴するゲーム運びで、悲願のタイトルにまた一歩近づいた。(10.11.15)

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11月14日(日) 2010 J1リーグ戦 第30節
名古屋 2 - 1 大宮 (14:05/瑞穂陸/17,489人)
得点者:5' ブルザノビッチ(名古屋)、32' 石原直樹(大宮)、42' 増川隆洋(名古屋)
スカパー!再放送 Ch183 11/15(月)前11:00〜
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一言でいえば、悪いなりにも勝つ。今季の名古屋のエッセンスが凝縮されたようなゲームで、首位がまた一歩優勝へと近づいた。

今季の名古屋の最大の特徴は、試合に勝つことだ。30節を終えた時点で20勝は群を抜く数字で、それがそのまま首位独走の要因となっている。時に大敗することもあるが、その次の試合で絶対に負けないことで、結果的に失う勝点は最小限に抑えられている。では、名古屋はなぜ勝てるのか。それはこの大宮戦を振り返ればわかる。

田中マルクス闘莉王と金崎夢生を負傷で、さらにはケネディを出場停止で欠く名古屋は、控えめに言っても苦境に立たされていた。前節の鹿島との上位直接対決に敗れたことで、状況的にもメンタル的にも厳しい中、ストイコビッチ監督は原点回帰ともいえる布陣で打開を狙う。就任当初から「最もバランスの取れたフォーメーション」と明言していた4−4−2である。中盤の底に中村直志とダニルソンを並べ、小川佳純とマギヌンをサイドハーフに、ツートップには玉田圭司とブルザノビッチを起用してきた。今季の基本布陣である4−3−3に適した人材が揃っていないと見るや、迷うことなく別の布陣を採用する。このフレキシブルさを体現する選手たちの戦術理解度は、相当のレベルにまで達している。

対する大宮はサイドの仕掛け役・金久保順が出場停止になったことで、ここ3試合で途中出場ながら2得点を挙げていた石原直樹をスタメンに抜擢。藤本主税、李天秀、ラファエルとともに、機動力と突破力に富む攻撃陣を組んできた。DFラインにはマトが復帰し攻守におけるセットプレーにも追い風が吹く。残留へ攻めの姿勢を貫く鈴木淳監督は、アウェーながら前へ出る意志をピッチ上に表現してきた。

試合は開始からハードコンタクトの目立つ激しいものとなった。両チームともに指揮官が「前へ」というジェスチャーをDFラインへ向け、全体的にコンパクトになった組織と組織が狭い空間でボールを奪い合う。ファーストシュートを放ったのは大宮の李天秀。しかし、その直後に名古屋が得意の形で先制点を奪った。左からのコーナーキックはニアサイドでDFに当たったが、そのクリアボールは真後ろ、つまりファーサイドへ。走り込んできたブルザノビッチが右足で合わせるようにダイレクトでボールを叩くと、シュートはGK北野貴之の手を弾いてゴールマウスに飛び込んだ。前回のアウェーでの対戦では前半で退場した指揮官の秘蔵っ子は、期待に応える早々の先制ゴールでチームにアドバンテージをもたらした。サブの選手が良い準備をし、起用時に良いパフォーマンスを見せるのも今季の名古屋の特長である。

しかし好事魔多し。その後もFWとして苦手な空中戦でも奮闘していたブルザノビッチだったが、27分頃に相手選手との接触で左ひざを負傷。タンカで運ばれ、一度はピッチに戻ったものの、すぐに続行不可能となり、巻佑樹との交代を余儀なくされた。この交代が大宮に付け入る隙を与えてしまう。交代直後の攻撃で、大宮が同点に追いつくのである。中盤に下がってパスを引き出したラファエルが前線の李天秀へフィード。李天秀のシュートはDFに阻まれたが、こぼれ球を拾ってクロスに切り替えると、走りこんでいたラファエルが落とし、最後は石原が豪快に叩き込んだ。以降は高い集中力を発揮した名古屋の守備陣だったが、この場面だけはボールへの詰めや寄せが甘かった。

1−1となった前半は、激しいせめぎ合いがエスカレートしていった。ファウルギリギリのプレーが続き、36分には大宮の金澤慎が負傷交代。その2分後にはボランチの李浩、3分後には李天秀が警告を受けた。そして42分、大宮の激しさが決勝点につながってしまう。左サイドの深い位置のFKを名古屋に与えると、小川のキックは測ったようにフリーの増川隆洋のもとへ。高い打点で打ち抜かれたヘディングシュートは、増川の今季初得点となってゴールに突き刺さった。セットプレーの強さ。ケネディと闘莉王の2枚看板を欠いてなお、名古屋の得点源は威力を失っていなかった。

大宮は2−1とされた前半の最後に李浩が2度目の警告で退場。後半は名古屋の一方的な展開になった。しかし「得失点差もあるので大量失点はしたくなかった」(大宮・藤本主税)と大宮が粘りの守備を見せ、追加点を許さず。名古屋も高いポゼッション力と安定した守備組織で大宮に反撃の余地を与えなかったが、10人の相手を崩しきれず、前半のリードをキープするに留まったことに課題を残した。慣れ親しんだ4−4−2のサイドハーフで躍動した小川も試合内容には不満をあらわにしたが、「きれいな勝ち方じゃなかったけど、今日は勝点3が欲しかったので、勝てたことが良かった」と指揮官同様の発言。美しいサッカーを標榜しスタートした“妖精”のチームは、泥臭くとも勝つ術を身につけ、受け入れることで現在のポジションを手にしたのである。

残り4試合で2位・鹿島との勝点差は8。次節のアウェイ・湘南戦に勝利し、鹿島が引き分け以下ならば初のリーグ優勝が決まるという状況に、試合後の報道陣は色めきだった。しかし名古屋の選手たちの表情はむしろ逆。生え抜き最年長の中村は「どうですかね」とかわし、在籍12年目の楢崎正剛も「簡単に決まるとは思ってない」と楽観視を封印する。タイトルに届きそうで届かない、雌伏の時を過ごしてきた彼らは、ようやく巡ってきたチャンスに対し慎重だ。彼らの目に映るのは水曜日に控える新潟との天皇杯4回戦、それが終わって初めて週末の湘南戦が見えてくる。気負いすぎず、弛緩しすぎず。初のリーグ優勝へ、名古屋は極めて良いメンタリティーで向かい合っている。

以上

2010.11.15 Reported by 今井雄一朗
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