11月10日（水） 2010 J1リーグ戦 第28節
湘南 1 - 3 大宮　（19:03／平塚／6,032人）
得点者：17' 金久保順（大宮）、33' ラファエル（大宮）、71' 深谷友基（大宮）、90' 阿部吉朗（湘南）
スカパー！再放送 Ch183 11/12（金）前11:00〜
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自分の言葉で伝えたかったのだろう。今季かぎりでクラブを離れることが決まり、怪我の治療のためブラジルに帰国するジャーンは試合後、4年間を過ごした平塚競技場のピッチの真ん中に立ち、通訳を介さずに感謝の思いを口にした。盟友を快く送り出す気持ちに一点だけ曇りがあるとすれば、ジャーンの立つまさにその場所で直前に行なわれた大宮戦に勝てなかったことだろう。

2試合連続の先発となった三平和司やリーグ戦初先発のU−19日本代表・古林将太、ベテランの坂本紘司らがパスワークで左サイドを崩す。あるいは、「もっと点を取りに行かなければ勝てない」と攻撃の意欲を高める臼井幸平が前線に飛び出す。大宮の攻撃を食い止めながらゴールに向かう湘南の立ち上がりはけっして悪くない。反面、相手のブロックを前に攻撃が停滞すると、逆に奪われてカウンターを食らい、ペナルティエリアの外でフリーキックを与えてしまう。17分、「直接蹴るのは想定外だった」と反町康治監督が悔いた金久保順のシュートは、見事な放物線を描き、GK都築龍太を釘づけにした。

ビハインドを背負った湘南は、しかし失点後もリズムを失することなくゴールに近づいている。前半6を数えたオフサイドに前向きな狙いも見えた。背景には、この日反町監督が採用した3バックと、その中央に入った遠藤航の存在がある。先のAFC　 U−19選手権に飛び級で出場した17歳は、「DFから持ち出してゲームを主導する」という指揮官の狙いどおり幾度もビルドアップに閃きを見せた。

ただ、気付けば湘南はシュートを撃っていない。かたや先制して優位に立った大宮は、セットプレーを含めて隙あらばフィニッシュに至る。33分の追加点も然りだ。自陣でボールを奪い返すやあっという間に敵陣まで運び、左に開いた李天秀から中央のラファエルへと折り返す。人数をかけて攻めていた湘南も素早く戻り、ゴール前に人垣をつくった。しかし、「わずかにコースがあった」と振り返ったとおり隙を見逃さなかったラファエルの技ありシュートが右隅に決まり、大宮が湘南を突き離すのだった。

シュート本数にも通じる組み立ての精度とフィニッシュ自体の精度に相手との違いを見るなら、湘南の生命線は回数をできるだけ多く重ねることにある。「悪い流れではない。続けること」と指揮官に送り出されたチームは果たして、後半シュートの意欲を高めた。エメルソンが自らパスカットしミドルを撃てば、6試合ぶりに先発した田原豊も遠目から強引に枠を狙った。相手FWのスピードに対し、後ろでは3バックが粘りの守備を続けている。

それでも、先にゴールをこじ開けるのは大宮のほうだった。71分、金久保のフリーキックのこぼれ球に藤本主税が反応する。シュートは惜しくもポストに嫌われるが、深谷友基が跳ね返りを押し込んだ。「もう1点取れれば試合が決まる展開だったので、決めることができてよかった」と、本人も笑みをこぼした大宮の3点目である。対して湘南もエメルソンのフリーキックを途中出場の阿部吉朗がヘッドで押し込み、仕事人らしくゴールを奪ってみせる。だが湘南の反撃は、90分のこの1点にとどまった。

大宮は次節、アウェイ名古屋戦（11/14＠瑞穂陸）に臨む。鈴木淳監督も試合後に触れたように、残留争いはまだ予断を許さない状況だが、16位の神戸に勝点5差をつけて降格圏を遠ざけたアウェイゲームの勝利は大きい。一方、敵地で清水に挑む湘南（11/14＠アウスタ）は、負ければ次節にも降格が決まる状況となった。

チームに貢献してくれた背番号3を勝利で見送れなかったことが残念でならない。そして現状を踏まえたその忸怩たる思いは、誰に言われずともピッチで闘う者たちがいちばんに感じているはずだ。残り5試合、湘南はプライドという足跡をJ1に刻む。

以上


2010.11.11 Reported by 隈元大吾