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横浜Ｆ・マリノス栗原勇蔵にサンフレッチェ広島戦について尋ねると、淡々とつぶやいた。
「あまりいいイメージがない。最近よくやられているし」
その通り、横浜FMは広島相手にリーグ戦３連敗を喫している。しかも３戦合計の失点数は「10」。堅守を誇る横浜FMにしては、不本意な数字が残る。前回の対戦では敵地で０−３と、まさに手も足も出なかった。今回は悪いイメージを完全払拭するための戦いとなる。
一方、11月３日にヤマザキナビスコカップ決勝を控えている広島。その直前の試合で『お得意さま』に再び快勝して、景気よく国立競技場に乗り込みたいことだろう。
また、広島は不敗ロードを歩んでいる。リーグ戦で４戦４分と８戦連続、黒星知らず。だから逆に今節負けると、せっかくここまで積み上げた「好調」という山が、多少なりとも崩れてしまう恐れがある。決戦を前に、それだけは避けたい。
横浜FMの選手が、この一戦を前にキーワードとして使っていたのは、「先手」「後手」という言葉。
「後手を踏んだらボールを回され、やられてしまう。相手の先を読んで、先に動いて守ることができたらいい」（栗原）
「広島はパスを出し、よく走るから、後手に回ると大変になってくる。なので、先手を取る守備を心がける」（飯倉大樹）
広島のパスサッカーは一度、発動すると手が付けられない。数的有利な状況を巧みにつくり、自在にボールを回してくる。対広島戦での横浜FMは、それで受け身になるケースが多かったように思う。守備ラインも引き気味になり、たとえ崩されなくても、ミドルを決められるパターンも少なくない。
そんな負のスパイラルを打破するには、２人が言うように先手を取る守備が必須。パス出しの起点になる相手センターバックやボランチに圧力をかけ、『パスワーク発動ボタン』が押される前に潰しておきたい。それは攻撃面においても大事なこと。高い位置でボールを奪えるので、おのずと好機に繋がるからだ。
広島では、リーグ戦５試合連続ゴールを記録中の李忠成に熱視線が注がれる。いまや佐藤寿人不在を忘れさせるほど、フィニッシャーとしての地位を確立。６戦連続弾を決め、勢いそのままにヤマザキナビスコカップ決勝に臨みたいとは、本人ならずとも思うだろう。
また、今節からケガ明けの佐藤がベンチスタートで復帰する可能性がある。よって、少しでも調子を落とせば、大エース佐藤にポジションを奪われると、誰よりも危機感を抱いているのは李のはず。そういう意味でも横浜FM戦は、紫の背番号９にとってターニングポイントになる一戦かもしれない。
楽しみなマッチアップは、横浜FM・栗原と広島・槙野智章の新生『ザック・ジャパン』対決。お互いDFだけに、当然、直接対峙する機会は少ないが、それでも栗原は槙野を意識。
「調子に乗らせるとやっかいだから、攻めて来たらしっかり抑える。まあ、ガツンと止めるよ」
そう言って、栗原は不敵な笑みをこぼした。代表で同じポジションを争うライバル同士のバトルに注目を。
以上
2010.10.29 Reported by 小林智明（インサイド）
