10月24日(日) 2010 J2リーグ戦 第31節
草津 0 - 0 水戸 (16:04/正田スタ/3,356人)
スカパー!再放送 Ch185 10/25(月)後03:30〜
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「今日の引き分けはただの引き分けではない。ポジティブに捉えたい」。本間幸司は軽い笑みを浮かべながら、こう口にした。草津に今年1度も勝てなかったことは、悔恨であり、屈辱ではあるが、それよりもこの試合においてはアウェイの地で2人数的不利になりながらも無失点でドローに持ち込んだことに大きな意義があると言えるだろう。試合後、木山隆之監督は「よく頑張ったなという感じ。それしか言いようがない」と選手たちを称えたが、度重なるアクシデントに遭いながらも水戸の選手たちは本当に強くたくましく戦い抜いた。「勝ちに等しい引き分け」と言っても、決して言いすぎではないだろう。
北関東頂上決戦は、実力伯仲五分の展開で幕を開け、互いに決定機を作り出すアグレッシブな展開が続いた。だが、36分に水戸が1度目のアクシデントに見舞われる。中盤で激しくタックルに行った村田翔がこの日2度目の警告を受け、退場処分となってしまったのだ。早くも数的不利に陥ってしまった水戸。アウェイということを考えると、そこから引いて守るだけの展開になってしまうかと思われた。
しかし、水戸は勇敢であった。1人少なくなったため、前線からのプレスが緩くなった中でも最終ラインを高く保ち、高い位置でのコンパクトを維持したのである。再三ラフィーニャに裏を狙われ、危ない場面を迎えるが、それでも水戸の守備陣は必死に戻ってゴールを死守した。そして流れが切れると、またDFラインを高くしたのである。「引いて相手に合わせてしまうと、向こうのペースになってしまう。リスクがあっても高い位置を維持した」と大和田真史は言い、DFラインを高くする理由について、「DFラインが下がると中盤まで下がってしまう。そうすると前に出る動きが減ってしまう」と語った。数的不利になりながらも、攻撃的な姿勢を失わずに戦うことを選手たちは意識していたのである。ボール自体は草津に握られても、一瞬の隙を突いて電光石火のカウンターでゴールを狙うという鋭い刃を草津に突きつけながら水戸は試合を進めていった。
ある意味、水戸のプラン通りであった。「後半30分まで耐えて、そこから攻めようというプランだった」(本間)。ハーフタイムに木山監督は選手たちに「最後は3バック、2トップにして点を取りに行くぞ」と伝えたという。宣言どおり、終盤、中村英之、中山悟志を投入し、システム変更の用意を済ませ、攻め疲れした草津を叩きのめそうとしたのである。すべては木山監督の掌中で動いていたのだ。だが、中山投入の1分後、あまりにも想定外の出来事が起きてしまう。ラフィーニャのドリブル突破を大和田が阻止したシーン。自ら「狙い通りの守備ができた」と振り返るように、完全にラフィーニャの動きを読んでドリブルを止めた素晴らしいディフェンスに見えたが、レフェリーは「反スポーツ的行為」という判断を下し、大和田はこの日2度目の警告を受け、ピッチを去ることとなってしまったのだ。
2人の数的不利に陥り、さすがの木山監督でも手の打ちようがなかった。それでも水戸は負けることはなかった。なぜなら、本間幸司がいたからだ。これまで幾度となく水戸を救ってきた守護神が、この試合でも“魅せた”。86分の草津のFK、松下裕樹が蹴ったグラウンダーの強烈なシュートを左手一本ではじきだし、さらに90+2分にはスルーパスに抜け出した山田晃平にフリーでシュートを打たれるが、今度は左足で止めてみせたのである。後半だけで17本、90分通して26本ものシュートを放たれながらも、“北関東の門番”本間がゴールに立ちはだかり、草津に得点を許さなかったのである。見事なセーブの数々。それを見られただけでも、この日の観客は幸せだ。試合後の監督記者会見で、草津陣営では「得点力不足」について悲観的な言葉が飛び交っていたが、それほど気にすることはないだろう。この試合の草津の最大の不幸は、水戸に本間がいたことだろう。
結局、ドロー決着となり、今年の北関東王者の行方は第36節栃木戦まで持ち越されることとなった。しかし、この試合を見た人ならば、誰もが感じたことだろう。北関東の希望は、2人少ないチームを攻めあぐねたチームではなく、2人少なくなっても最後まで強くたくましく戦って勝点1を手にしたチームであるということを。しかも、若い選手が多く、今後の伸びしろが十分となれば、なおさらだ。あとは第36節栃木戦で勝利し、“希望”を優勝カップという目に見える形に変えるだけ。これからも水戸が北関東のトップリーダーとして走り続ける。そう予感させた今年最後の『北関東クラシコ』であった。
以上
2010.10.25 Reported by 佐藤拓也
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