10月11日(月)第90回天皇杯3回戦 浦和 vs 徳島(13:00KICK OFF/駒場)
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浦和のサッカーは確実に進化している。それを第25節大宮戦( /jsgoal_archive/result/2010/1002/20100100010320101002_detail.html )で示して見せた。特に前半はフォルカー・フィンケ監督が「いかにサッカーが魅力的かということをお見せできたのではないでしょうか」と胸を張ったように、まるでボールと選手とがダンスペアのように一心同体の動きを見せながら、ピッチ上を華麗に舞った。4分、16分と流麗なパスワークからサイドを崩し、ゴールを叩き込み、勝利を手にしたのであった。
以前、調子の出なかったときの浦和のサッカーは“パスサッカー”という言葉にとらわれすぎ、ボールを回せどもゴールに近づかない展開が多かった。ボールも人も前に進まないため、“ペアで舞う”というよりも“手をつないで歩く”という感じであった。だが、今の浦和はそこから脱しつつある。その支えとなっているのが、攻守におけるハードワークだ。
そして、その象徴となっているのが、柏木陽介である。大宮戦の1点目、中央から右サイドの田中達也にボールが渡ったとき、柏木はセンターサークルの中にいた。だが、田中にボールが渡るや否や、すさまじいスピードで前へ走りこみ、ペナルティーエリアまで入り込んでいたのだ。そして田中の上げたクロスのこぼれ球を柏木が拾い、DF裏へ送ったラストパスを高崎寛之が頭で合わせてゴールを決めたのである。正確無比なラストパスの技術の高さに目がいきがちだが、そうした技術を発揮できるのも、その前にハードワークしているからこそ。
また、守備においても柏木の動きは際立っていた。攻守の切り替えがすこぶる早く、中盤の高い位置で相手のボールホルダーに厳しくチェックに行き、相手の展開を封じることに成功。それにより、高い位置でボールを奪取できるようになり、自然とゴールに向かう場面が増えることとなった。柏木を中心にチーム全体がハードワークする集団へと変貌を遂げたことで、ボールと選手との間に“ゴール”という1つの共通意識が芽生えることとなり、絶妙なハーモニーを奏でるようになったのである。
ただ、「前半と後半はまったく違う内容になってしまった」とフィンケ監督が語ったように、まだ90分舞い続けられないという課題を抱えているのも事実。浦和のサッカーはかなりの運動量と集中力が必要とされているだけに、ちょっとした気の緩みがあれば、すぐに連動性は失われることとなる。それだけに状況に応じたサッカーが求められることとなる。疲れが見える時間帯にどうするのか、そしてそこから再び自分たちのペースに持っていくためにどうするべきか。さらには、自分たちのサッカーをどれだけ長い時間継続することができるか。チームとして目指す道が見えてきているだけに、あとはゲームコントロールという部分が今後の課題となりそうだ。大宮戦後に柏木が語った言葉に、この一戦においてやるべきことが集約されていた。「次の試合は、最後まで僕らのリズムで試合を進めたい」。
大宮戦後、ゴール裏サポーター席で掲げられた横断幕には「ACL」という文字が躍っていた。J1リーグで3位以内に入れば、「ACL」に出場する権利を得ることができる。しかし、やはり海外の舞台に出るからには「王者」の称号を手に、胸を張って挑みたいところ。かつて世界3位に輝いた経験を持つ浦和ならば、その思いはなおさらのことだろう。リーグ優勝の可能性もまだ残されてはいるが、現在8位の浦和にとってかなり厳しい状況なのは言うまでもない。だからこそ、この天皇杯は「王者」としてアジアに出る大きなチャンス。何としてでも勝ち進まなければならないのだ。代表戦のため欠場する細貝萌とサヌの代わりには濱口水輝、高橋峻希といった若い選手の起用が予想されるが、それでも浦和らしさ全開で勝利を収めることで、チームはさらに勢いをつけるはず。カテゴリーが下の相手だろうと関係ない。今はとにかく自分たちのサッカーを貫いて勝利をするだけ。その先に、すべての希望が待っている。
徳島にとっても非常に重要な一戦だ。現在、リーグ戦で3連敗中。一時期は5位につけ、昇格争いに加わる勢いを見せていたが、一気に10位まで順位を落とし、昇格争い脱落の危機にある。リーグ終盤戦に向け、もう一度勢いをつけるためにも浦和から勝利するしかないだろう。徳島にとって今後を占う一戦と言っても過言ではない。
そのためにもアグレッシブな姿勢を取り戻せるか。その一点に尽きる。中断期間以降の徳島は以前の攻撃的なサッカーではなく、ブロックを敷いてカウンターを狙う受動的なサッカーになってしまった感がある。第25節栃木戦まではそれで結果が出ていたが、それ以降、悪くなった流れを断ち切れずにいる。やはり、今こそ自分たちの目指すサッカーに立ち返るべきだろう。思い出したいのは今年2月に行われた浦和とのプレシーズンマッチ。徳島は終始積極的な姿勢を見せて、浦和から勝利を手にして見せたのだ。その勢いのままリーグ戦に臨み、開幕4連勝という最高のスタートダッシュを切ることができたのである。この試合においても積極的な戦いを見せ、そして浦和に勝つことで、何かが見えてくるはず。徳島の未来は、選手たちが「勇気を持ってピッチに立てるか」に懸かっている。
以上
2010.10.10 Reported by 佐藤拓也
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