栃木戦試合当日。記者室に入り、取材の準備に取り掛かっていると、奥の方から筆者を呼ぶ声がした。見ると栃木担当の大塚秀毅さんだった。そして不敵な笑みとともに差し出してきたのは、もちろん『レモン牛乳』である。最近のＪ２日記では、徳島担当の松下英樹さん、千葉担当の赤沼圭子さんが取り上げていたが、「ついに柏にも来たか！」という気持ちが強く、ジンクスに恐れおののくというよりも、筆者は「それではいただきまーす」と受け取るや否やストローを挿し、一気に飲み干してしまった。
この筆者の瞬く間の行動に大塚さんは苦笑い。しかし筆者が飲み干した後、彼はこうジンクスを語ったのである。
「原液なので（効果が）強いですから」
そうか！確か松下さん、赤沼さん、そして過去にジンクスを破った鳥栖のサカクラゲンさん、皆さんが口にしたのは『レモン牛乳』のクッキーやケーキ。飲み物の方ではなく、食べ物だった。

まさか……とは思ったが、柏はリカルド・ロボの先制弾を浴びた。北嶋秀朗のゴールで同点に追いついた後は、ゲームの主導権を圧倒的に握り、ほぼハーフコートゲーム状態で栃木にシュートを浴びせ続け、決定的な場面は何度もあったのだが、なぜかシュートがＧＫ武田博行の正面にしか飛ばない。もしやこれが原液の威力なのか？千葉、福岡との上位対決を制し、札幌戦では大勝を飾ったにもかかわらず、柏は極度のシュート精度欠落が響き、試合は１−１のドローに終わった。

悔やまれるのは、筆者が『レモン牛乳』を一気飲みしてしまったことではなく、大塚さんへの逆ジンクスを忘れていたことだ。実は、柏の対戦相手は「柏を食う」という意味で柏餅作戦の発動が目立つが、どうもその作戦に出た相手の成績は、柏にとって有利な方に転がっている傾向がある。そのため、『柏餅』の力で『レモン牛乳』を制すことを戦前は画策しており、したがって柏餅の失念は明らかな落ち度だった。
だが今季、まだ柏は栃木との対戦の可能性が残されている。次の天皇杯３回戦で柏が神戸に、そして栃木がＧ大阪に勝てば、４回戦での対決が実現する。その時こそ、『柏餅ｖｓレモン牛乳』の勝負だ。

以上

2010.10.06 Reported by 鈴木潤