「やっぱり途中出場とは何もかもが違いますね。選手入場時は鳥肌が立ちました」
26節の鳥栖戦のことだ。プロ初先発を果したFW横野純貴が、そうやって試合を振り返る。札幌のアカデミー(下部組織)からトップチームに昇格して3年目。ルーキーイヤーにもJ1のリーグ戦でデビューを果しているが、そこからおよそ2年の時間を経て掴みとった初めての先発出場。それも彼が幼いころから通っていた厚別競技場での出来事だったとあって、それはやはり特別な出来事だったということなのだろう。
「とても緊張しました」
こちらは、9月5日の天皇杯2回戦で初めてのベンチ入りを果したGK曳地裕哉の声だ。彼もまたアカデミー出身で2年目の若きプレーヤー。試合出場こそならなかったものの、試合中はベンチ裏で溌剌とウォーミングアップをこなしていた。会場は同じく厚別競技場だ。
どちらも、一般的な観点でいけば決して大記録なわけではない。でも、彼らにとってはやっぱり特別な出来事だったと思う。もちろん、先発出場やベンチ入りというのは最終目標ではない。だけれど、ここを通らなければそれ以上の目標を果すことは不可能なわけで。
そういえば、札幌のアカデミー出身ではないながらも、同じように厚別競技場でデビューを果した先輩選手がいる。プロ10年目、チームに加わって7年目のDF西嶋弘之だ。
04年の9月23日。シーズン途中に神戸から加入すると、直後の試合ですぐに先発出場を果している。試合後には「前の晩は、緊張してあまりよく眠れなかったです」と話していたことを思い出す。その日のことを現在の彼に聞くと、「そんなこと言うてましたっけ?」という返答。でも、単なる取材者である筆者が覚えているくらいだから、やっぱり何か印象深いものがあったんだと思う。
余談になってしまうかもしれないが、04年に西嶋の移籍が決まったタイミングというのは、追加登録期間のリミットぎりぎりだった。本人もオファーに対して即答を求められたとのこと。そして日本列島に台風が直撃していたこともあり、資料などの輸送が遅れ、本当に“駆け込み移籍”だった。
そうしたなかで彼がオファーに「YES」と即答できたのはやはり、「試合に出たかった」からだった。
「やっぱりプロ選手というのは試合に出てナンボやと思ってましたから。とにかく試合に出てみたかった。プロになりたての頃というのは、それこそベンチ入りしただけでも僕にとっては一大事でしたからね」と西嶋は自身のキャリアを振り返る。プロの世界は厳しい。たった1試合とはいえ、出場すること、ベンチ入りすることはやはり大変だ。「たった1試合」という言い方さえも、もしかしたら軽率すぎるのかもしれない。
同時に、37歳のDF藤山竜仁の言葉も並べたい。
「若い選手が台頭してくるのはチームにとって大きいし、頼もしくはある。でも、こっちとしてはそう簡単にポジションを与えるつもりはないけどね」。
いずれにせよ今年の9月、札幌の2人の若者がひとつのメモリアルな試合を迎えた。「鳥肌が立った」や「緊張した」。きっとこれから先、「そんなこと言ってましたっけ?」と忘れてしまうくらいに、さらに多くの経験を彼らは積んでいくのだろう。そしてその一方で、本人でさえ忘れてしまうような試合のことを、ずっと忘れずに応援をしていくファンもたくさんいるんだと思う。
雲は白、スタンドは赤。そんな9月の厚別競技場には、いろんな想いが詰まっていた。
以上
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2010.10.05 Reported by 斉藤宏則
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