10月3日（日） 2010 J2リーグ戦 第29節
熊本 2 - 1 福岡　（16:03／熊本／16,098人）
得点者：27' 松橋章太（熊本）、51' 松橋章太（熊本）、82' 高橋泰（福岡）
スカパー！再放送 Ch185 10/4（月）後04:30〜
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　表示されたロスタイムの４分を回った辺りで、福岡がFKを得る。おそらくはこれがラストプレー。角度的にはほぼゴール正面、距離にして約27mの位置から中島崇典が左足で放ったキックは、熊本の選手が作った壁を越えて枠を捉える。しかしその軌道の先には、GK南雄太。南がしっかりとキャッチしたところで、試合終了を告げる岡部拓人主審の笛。３年越しとなる福岡からの２勝目は同時に、今シーズンのバトル・オブ・九州初勝利となった。

　しかし立ち上りは福岡のペース。まずは３分、久藤清一から末吉隼也、中島、永里源気、岡本英也と、テンポ良くつないで永里が抜け出す。その後も永里のクロスに対して入って来た久藤が合わせた16分の場面、オフサイドの判定だったが、中島のクロスに中町公祐が飛び込んだ18分の場面など、立て続けに福岡がチャンスを迎える。この要因のひとつには、この日トップに入った岡本とその下に位置する城後寿が左右に流れてスペースを作り、斜めの動きでバイタルエリアに入ってくる永里や久藤らをフリーにするシーンが多かったことが考えられる。それでも、出場停止が明けて３試合ぶりにスタメンに復帰した福王忠世をはじめ、中盤の吉井孝輔、渡辺匠らもボール際ではタイトに身体を寄せ、熊本はそうした時間帯を凌いだ。
　攻撃においては、特に永里がしかけてくる福岡の左サイド、つまり熊本の右サイドを起点に何度か形を作っているが、これには「少し隙ができる相手の左を突いて行くことが効果的」という高木琢也監督の思惑もあった。
　そして迎えた27分、先制点が生まれる。ペナルティエリア付近で相手のマークを背負いながらも身体を張ってキープした片山奨典が「いい感じで上がって来てくれて、声もあった」という堤俊輔に開くと、堤はファーサイドへ精度の高いクロス。ゴールに向かって入って来たカレン・ロバートが福岡DFを引っぱって頭ですらすと、さらにその外にポジションをとっていた松橋章太がきっちり収め、落ち着いて右足を振り抜きゴールに突き刺した。

　今シーズンの統計を見れば、先制したゲームは無敗、リードして前半を終えた試合は全勝と、データ的にも勝点を手にする確率は高まったが、ここ数試合、熊本にとっては後半の入りが大きな課題だったのも事実。しかし逆に、攻めに出て来た福岡の裏のスペースを狙い、開始早々に追加点を挙げる。51分、自陣の深い位置に戻って守備の対応をしていた宇留野純が意図のある長い縦パスを送ると、それに反応したのは再び松橋。攻めにかかっていた福岡DFの間でうまくボールを受けてドリブルで持ち込み、飛び出して来たGK神山竜一をかわして右足で流し込んだ。
　数多くのチャンスを作りながらもスコアレスドローに終わった25節水戸戦の後、「攻撃のスイッチをどこで入れるか、共有できなかった」とカレンが話していたが、この試合ではそうした部分がうまく解消されていた。そしてそれは、「しっかりとした守備のポジションが取れれば、それが攻撃につながるというのを再認識できた」という渡辺の言葉にもあるように、特に守備において「全員の意識を統一できた」（福王）ことが大きく影響している。２ゴールを上げた松橋も、身体を張ってタメを作ったカレンも、そして両サイドの宇留野と片山も、守備でも大いに貢献したことも見逃せない。

　一方、２点のビハインドを負った福岡は、久藤に替えて田中佑昌、城後に替えて大久保哲哉、さらに岡本に替えて高橋泰と次々に攻撃のカードを切り、中町と末吉の両ボランチも高い位置でボールに絡みはじめて60分前後から猛攻を仕掛ける。だが65分の岡本のシュートはクロスバー、そのこぼれに反応した永里のシュートはDFがブロック、その後の丹羽大輝のシュートもクロスバー、71分の大久保のシュートは左のポストと、立て続けに迎えた決定機もことごとくゴールに嫌われた。
　熊本にとってはもちろん幸運だったという側面もある。だがそれも、高木監督も話している通り「相手のビッグチャンスに対しても彼らが身体を張ったからこそ」であり、さらに言えば、激しい雨に見舞われたにも関わらず、今季のスタジアム最多となった多くのサポーターの強い気持ちと、途切れない後押しがあったからこそ。82分にPKから1点返されたが、逆に前にかかってバランスを崩した福岡に対し、交代出場のファビオやカレンがカウンターから決定的な場面を迎えるなど応酬。ダメ押しの３点目こそ奪えなかったものの、全ての選手がハードワークを見せ、第１クールの屈辱的な大敗のリベンジを見事に果たした。

　５試合ぶりに勝点３を手にした熊本は、これで６位に浮上。３位福岡とは７、４位千葉とは６、５位東京Vとは１と勝点差を縮め、ラスト８試合に勝負をかける。だが高木監督は言う。
「先を計算して戦う力はまだないし、１つ１つのゲームをしっかり戦っていくということだけ」。
「こういうゲームをベースに」（福王）して続けることが、クラブの将来を拓くことにつながる。連敗を２で止めて再びギアを上げた熊本が、１週間後の天皇杯３回戦、いよいよJ１の鹿島に挑む。

以上

2010.10.04 Reported by 井芹貴志