スカパー！生中継 Ch183 後06:50〜
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後半、ロスタイムに得点が入り、決勝点となる試合があるかと思えば、追いつかれて勝点を分け合う試合もある。味方ＤＦの延ばした足に当たって入ったオウンゴールが決勝点となるかと思えば、ＦＷが折り返したクロスに、長い距離を走りこんでサイドＤＦが決めて勝ち越したゴールもある。
前節のＪリーグ各会場では、劇的なゴールが多く生まれた。中でも、横浜FCvs柏戦で生まれた４ゴールのうち、３ゴールは前後半のロスタイムに生まれたものだった。こんなことが、たったボール１個のスポーツで生まれるのだから、サッカーは本当に面白い。
この第１８節、上位陣で勝点３を得ることができたのは２位の甲府だけ。引き分けて勝点１を得るに止まった首位の柏をはじめ、軒並みに勝点の上積みができずに上位と下位の差が縮まってしまった。ワールドカップ中断期に、それぞれのチームが目指すサッカーの質を上げたことが、前述した内容の試合が多かった理由に挙げられるだろう。これで、応援する側にも熱が入るし、リーグ全体が盛り上がって、さらにサッカー熱が上がってくれるに違いない。
ゴールや試合の勝敗だけではない。細かなスペースでパスをつないで相手を崩したかと思えば、素早い出足で相手のボールを奪っては主導権を握るサッカーを見せたチームもあった。他にも相手のボールの入りどころを確実に抑え、相手に主導権を与えず先制点を奪ったチームもあった。前者は現在１８位の草津であり、後者は５位につける鳥栖である。今節は、質の高いサッカーを見せた両チームが、ベストアメニティスタジアムで激突する。
両チームとも、見る側をひきつけた内容を展開できた最大の要因は、中盤の選手の活躍によるところが大きかった。草津は櫻田和樹と松下裕樹であり、鳥栖は朴庭秀と下地奨である。櫻田と松下は、相手の中盤に入ってくるボールを積極的に奪いに行った。彼らだけではない。チーム全体が、組織的にプレッシングを行い、相手の自由を奪うかと思えば、奪ったボールは長短のパスでつないで相手ゴールへと迫っていった。パスワークとスピードの強弱を使って勝点３を奪い取ったのである。中断前までに見せていたチグハグ感を全く感じさせることは無かった。今節も同様なサッカーを行ってくるに違いない。唯一の心配点を上げるとすれば、ＦＷラフィーニャが出場停止といったところか…。
迎え撃つ鳥栖も、朴と下地が中盤で相手の自由を奪うことで、攻撃のリズムを作った。サイドに入った金民友と衛藤裕がピッチの横幅を使ってうまくスペースを作ると、そこにＦＷが降りてきたり、下地が走りこんだりと相手に狙いを絞らせることは無かった。９０分間をこのままで戦えることができれば勝点３を得ることができただろうが、相手もタテのスペースをうまく作って攻めてきた。結果は１−２と今季初の逆転負けを喫してしまったが、目指すサッカーは出来ていた。心配点を上げるとすれば、集中力が途切れる時間帯にどれくらい早く修正できるのかと言ったところだろうか…。
いずれにせよ、前節を見る限りにはこの両チームの戦いでは中盤の攻防に焦点は絞られそうだ。『中盤を制するものは、試合を制する』とは、少し前のサッカー理論でよく聞かれた言葉ではあるが、今もこの言葉が生きていることが証明される一戦となるだろう。梅雨明けした鳥栖に、本格的な夏と本当に面白いサッカーが訪れそうだ。
冒頭に述べたが、ボール１個でこれだけ熱狂的にはまり込んでしまうことができるサッカーは怖い。ワールドカップを見て熱狂し、その勢いのまま贔屓チームの試合を応援できる至福を感じられるサッカーは本当に怖い。しかも、筆者に関しては、それらを言葉に代えて生業にできるのだから、サッカーに感謝してもしきれない。（笑）
選手だけでなく監督も審判も、１個のボールの動きを予測し真剣に追い続ける。
それを観ている人は、ボールに触れることができないからこそ、自然と大きな声が出てしまう。
ボール１個でこれだけ熱狂できるサッカーは、本当に怖い。
そして、シンプルだからこそサッカーは面白い。
以上
2010.07.23 Reported by サカクラゲン
