5月30日(日) 国際親善試合
イングランド 2 - 1 日本 (21:15/UPC)
得点者:7' 田中 マルクス闘莉王(JPN)、72' オウンゴール(ENG)、83' オウンゴール(ENG)
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試合開始直後に見せた岡崎慎司(清水)のプレーが、この試合の性格を特徴付けていた。彼は勇敢にイングランドにプレスを掛け、その岡崎のプレスがスイッチとなって日本代表は連動を始めた。それはつまり岡田武史監督による明確な意思表示だった。
御存知の通り今年に入り日本代表(SAMURAI BLUE)の前途は暗転していた。東アジア選手権で結果を残せず、セルビア戦、韓国戦と完敗。それによって国内世論は懐疑的なものとなり、このイングランド戦に対する見方も厳しいものとなっていた。
そんな中行われたこのイングランド戦は、もちろん相手が強いというエクスキューズがあるにはあった。ただ、もしここで大敗するようなことがあればサポーターの意識はもちろん、選手たちの自信そのものが喪失する可能性もあった。だからこそ、試合をどのように進めるのかに注目していた。自分たちのサッカーを貫いて前から行くのか。それとも、大敗を避けるべくリトリートするのか。
そうしたバックグラウンドがあったからこそ、岡崎のスイッチが示したこの試合の性格に勇敢さを感じたのである。すなわち自分たちが積み上げてきたサッカーの原点に立ち返るんだ、という意志の強さである。前からボールを追い込み、より高い位置で相手ボールを奪い、そこからショートカウンターを仕掛ける。そしてそうしたサッカーを実現するべくこの日の布陣は組まれていた。
4-4-2のスタイルを取るイングランドは、2トップの一角であるルーニーが中盤にまで下がり、ゲームメイクに加わっていた。日本にとって、そのルーニーをどう捕まえるのかはこの試合のポイントとなっていた。長谷部誠、遠藤保仁(G大阪)が横に2枚並ぶ従来型のシステムを採用した場合、彼らのどちらかがルーニーへのケアを強く意識しなければならなくなる。そうなると、日本代表の攻撃の要である彼らふたりの推進力をうまく使うことが出来ない可能性があった。相手はイングランドだからだ。そこで採用されたのが、阿部勇樹(浦和)のアンカーでの起用だった。
「一枚阿部ちゃんを置いた事で(守備面では)そこまで崩されることはなかった」とこのフォーメーションへの手応えを口にするのは長谷部。ただ、求められていた攻撃面で「ボールを奪ってからなかなか前に行けなかった。そこが課題」と反省も。後半に入り目立たなくなった長谷部と遠藤の攻撃参加について岡田監督は、コンディションに問題があるとしつつ「彼らのコンディションが上がってくれば、タメができてサイドバックも上がるという形ももう少しできるんじゃないかと思っている」との展望を口にしている。また阿部について岡田監督は「90分はもたないんじゃないかと正直思っていたんですけど、90分持った」と評価しており、ルーニーへのケアについても後半には順応出来ていたと振り返っている。本大会に向けた有力なオプションとして評価を上げたようである。
試合後の会見の冒頭に岡田監督はこの試合に向けてのポイントとして「ディフェンスでどこまでプレッシャーをかけることができるか。(そしてそれでも)裏をやられないかということ」と述べている。従来のポジションから一つ前に上がった長谷部、遠藤の両選手は、阿部の存在によって攻撃の意識を高め、それが前からのディフェンスをも実現させた。もちろん前ばかりが突っ込んでしまっても守備がうまく行かない事は自明であり、必然的に最終ラインも意識を前目に持つようになる。そこで生きてくるのが川島永嗣(川崎F)のプレースタイルだった。岡田監督は川島の起用について練習での調子の良さをその理由として上げている。ただ、そうした受身の理由にとどまらず、彼を起用する必然性があったのではないかと考えている。すなわち川島は、楢崎正剛の静のスタイルとは対極の、PKエリア外のかなり広大なエリアをも守備範囲とする動のスタイルを取っているからだ。時にそれが裏目にでる試合がないわけではない。しかし前からのプレスがかわされた時にラインの裏を使われる試合が実際にあったという点。そしてその対策を施した韓国戦が残念な試合内容になってしまったことを考えると、裏のスペースをケアできる11番目のフィールドプレーヤーとして川島にかかる期待は大きかったものと考えている。
岡崎のスイッチに始まる前からの守備は、イングランドという高い技術を持つチームに対しては、そう長くは通用するものではなかった。結果的にプレスをかいくぐられる場面は増えるのだが、韓国戦のように裏のスペースを意識するあまり自ら良さを消して自滅してしまった事と比べると、その出発点が違っていたという点で意味はあるし、希望も見い出せたものと考えている。
戦術的な希望とは別に、試合展開でも希望をもたらす展開でもあった。開始7分にCKから田中マルクス闘莉王(名古屋)が先制点を奪うのである。昨年9月のオランダ戦が、チャンスを作り続けながら無得点だった事を考えると、それがセットプレーであろうと、とにかく点を奪えたことに意味があると考えている。
ただ、惜しむらくは2点目を奪えなかったという点。21分の岡崎の1対1が枠を捉えられなかった場面を初めとして、惜しいシュートは複数回あった。これらの場面で2点目を奪えなければ、こうしたファーストランクの相手から勝ち点を奪うのは難しい。後半のPKを川島がストップした事を含めて。そして2失点がともにオウンゴールだった事を含めて、実に惜しい試合を落としてしまった。
もちろん善戦の一方で、イングランドが彼らの力を出し切っているとはとても言えないという現実は直視する必要がある。ただそれにしても、勝利がいろいろなものを好転させる力を持っており、そして実際に先制し、勝利の可能性を高めるプレーが出来ていただけに、勝ちたい試合だった。
試合を終え、サポーターに挨拶した日本代表チームに、イングランドメディアが真摯な視線とともに拍手を送っていた。もちろん賞賛というよりは、ねぎらいの拍手ではあるのだが、それにしても「母国」の目の肥えたプレスの人たちの拍手は率直に嬉しかった。ワールドカップへの出場を勝ち取り、一度モチベーションのピークを迎えている日本代表にとって、今年の立ち上がりは厳しい状況にあった。ただ、その山を乗り越えて、本大会に向けて一歩ずつ前進しているという事を改めて感じさせてくれる試合だったと言えそうだ。
以上
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【SAMURAI BLUE(日本代表)試合予定】
■国際親善試合
2010年6月4日(金)19:20(日本時間)/スイス・シオン
SAMURAI BLUE(日本代表) 対 コートジボワール代表
※この試合はTBS系列にて全国生中継!
2010.05.31 Reported by 江藤高志
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