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【キリンチャレンジカップ2010 日本 vs セルビア】レポート:日本は、疲労したアウェイチームのセオリー通りの戦いに完敗。岡田監督は条件付きながらもコンセプトの転換を示唆(10.04.08)

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4月7日(水) キリンチャレンジカップ2010
日本 0 - 3 セルビア (19:20/長居/46,270人)
得点者:15' ムルジャ(セルビア)、23' ムルジャ(セルビア)、60' トミッチ(セルビア)
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試合開始直後の4分に日本代表の守備陣は決定的に破綻する。最終ラインに生まれたギャップを突かれ、ムルジャが飛び出して楢崎正剛(名古屋)との1対1の場面を作られたのである。スタジアムを埋めたサポーターが肝を冷やした場面はポストに救われて事なきを得る。そうした場面はそれで終わるはずだった。終わってほしかった。しかし、その11分後に全く同じような形でギャップを突かれ、再びムルジャに走られて先制点を献上してしまう。
セルビアのサッカーが特段素晴らしかった訳ではない。それどころか、日本代表はパスを主体とした組み立てでセルビア代表を押し込み、何度となくゴール前へと迫っていた。試合の外面だけ見れば、日本代表が優勢に戦っているようにも見えるが、実はそれはアウェイへと遠征してきたチームが仕掛けた狡猾な罠だった。どうしようもない既視感が脳裏をよぎった。つい先日行われた第17回多摩川クラシコである。このローカルな戦いに関しては、国内でヤマザキナビスコカップを戦ったF東京に対し、川崎FはAFCチャンピオンズリーグでオーストラリアへの遠征を終えた直後。川崎Fがコンディション面でのハンディを背負っているのは紛れもない事実だった。だからこそ、川崎Fは先制後に割り切って守りに入り、F東京をうまくいなした。そんな試合が頭をよぎったのである。

遠征した側のセルビアは、最終ラインの4枚と中盤の4枚とで強力なブロックを形成。ペナルティエリアの外側にあたる、いわゆるバイタルエリアをきっちりと締めていた。そんなセルビアに対し遠藤保仁(G大阪)は「裏へ抜ける回数を増やしたかった。できればDFとMFの間に入りたかった」との思いを持ちつつ試合を進めていた。過去形で話していることからも明らかなように、その思いは結果として形にはできなかった。コンディション面で明らかに見劣りするはずのセルビアは、90分間の試合時間を見据え、いかにして体力勝負にしないのか、という戦いに出て成功したのである。
ワールドカップ本大会で、今回のセルビアのような戦いに出るチームはあるだろう。特に日本が1点を先に失った場合、そうした場面が出てくる可能性は十分にあり得る。何しろ昨年のオランダ戦にせよ、このセルビア戦にせよ、ブロックを作って守りに入れば守れてしまうのである。そうした実績を着々と見せてきたのである。だからこそ、先制を許してはならなかった。

そういう点で、前半開始直後に与えた決定機は、日本代表の戦い方に対して大きな示唆を与えていた。すなわちラインを上げてプレスをかけようとしても、形の悪い失い方をした場合にピンチになるということを、あれだけはっきりと示したのである。もちろんこれがワールドカップ予選を戦ってきた最終ラインのメンバーであればまた話は違っていたはず。しかし闘莉王(名古屋)と内田篤人(鹿島)の両選手が抜けた最終ラインがそう簡単に完璧な統制を実現できるべくもなく、そして実際に前半4分に決定的に破綻をしたのである。だからこそ、本音を言えばその時点でもう少し注意深く最終ラインを調整してほしかった。

セルビアの狡猾さが出ていた場面をもうひとつ上げるとすれば、チーム全体が攻撃へとスイッチする際の共通理解の高さである。セルビアのブロックに対し日本代表が攻めあぐね、ハーフライン付近でボールを回さざるを得ない中、何度かいわゆる高い地点で日本代表がボールを失うと、一気に枚数をかけて日本陣内へと攻め込むのである。チャンスを見極めた攻撃参加への共通理解度の高さは見事なもので、カウンターの勘どころを完璧にチーム全体が掴んでいるという印象を持った。同じような形で2度ラインの裏を取り、日本が悪い失い方をすれば一気にリスクテイクして攻撃をやりきる。まさにサッカーを知っているチームの戦いがそこにはあった。

日本代表は前半の途中から稲本潤一(川崎F)をアンカーに置き、阿部勇樹(浦和)を1列前に上げるというシステムチェンジを行っている。岡田監督が試合前から用意し、ベンチからの指示によって行われたシステムチェンジによって日本代表の守備はある程度安定する。2ゴールのムルジャと長身の9番レキッチが上下に並ぶ位置関係を取っていたことも、システムチェンジの遠因だったはずだが、いずれにしてもあの状態の中で試合をより安定させることのできる手段を持っていたことは希望になるものと考えている。それが選手たちの自主的な判断で行われれば立派なことなのだが、今の日本代表にそこまでのものを求めるのは難しいのかもしれない。

1点ずつ返そうとした後半にさらに3点目を奪われ、試合はさらに厳しいものになる。そんな中、ハーフタイムからピッチに立った石川直宏(F東京)が決定的な裏への飛び出しを実現し、可能性を見せていたのが救いだった。パスワークが冴え、見た目には攻めていたようにも見えた前半ではなく、裏を取れていたという観点で「点を取るということに関しては、後半の方が可能性が感じられたと思います」と岡田武史監督は述べている。スペースを消されていても、やりようによっては裏を取れたことについては一定の評価が可能であろう。
しかし、コンディション面でハンディを背負うチームが、アウェイでとるべき戦いをされ、そして彼らの思い通りの試合を展開されて、日本代表は敗れた。これほど残念な負け方はないという試合をしてしまった。相手の思うつぼ、でやられたことが、悔しくて仕方がなかった。

試合後の岡田監督はこの試合のポジティブな面として「11人揃った時に、そこそこできる」と前置きしつつ「ケガ人が出た時に同じ戦い方では厳しい。(中略)我慢するような戦いも必要」なのではないかと振り返っている。そもそも日本代表は高い位置でボールを奪い、ショートカウンターで得点を取ろうとしてきた。しかし岡崎慎司(清水)が「中国戦とか韓国戦もそうでしたが、相手の(ブロックの)前ではサッカーはできたが、バイタルの中に仕掛けていけなかった」と述べているように、そのショートカウンターを打てない時間帯の戦い方、つまりポゼッションできている時にどうリスク管理するのかを、改めて考えさせられた試合となった。
いずれにしても、ワールドカップ出場メンバー発表(5月中旬予定)前の最後の試合としては、あまりに残念な戦いをしてしまった。試合後の地鳴りのようなブーイングが悲しかった。ここから岡田監督はどのようにチームを立て直すのか。時間はないが、ゼロではない。ワールドカップが終わった時に、この試合に前向きな意味が与えられていることを願うしかない。

以上

2010.04.08 Reported by 江藤高志
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