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【AFCチャンピオンズリーグ2010 アデレード vs 広島】レポート:58分間を10人で戦い抜き、逆転のドラマを演じた広島。死闘に力つくも、スタジアムを興奮のるつぼに(10.03.25)

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3月24日(水) AFCチャンピオンズリーグ2010
アデレード 3 - 2 広島 (18:00/アデレ/12,841人)
得点者:11' ドッド(アデレード)、55' 森崎和幸(広島)、75' 高柳一誠(広島)、77' コーンスウェイト(アデレード)、82' カッシオ(アデレード)
ホームゲームチケット情報 | 決勝戦は11月13日(土)に国立競技場で開催!
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何から伝えれば、何を伝えればいいのか、わからない。どんな言葉も全て陳腐に聞こえそうだ。しかし、それでも書かなくてはならない。

フローレスが一発のトラップでわずかなスペースをつくり、強烈なスイングスピードで放ったスーパーなクロスとそこへのドッドの鋭い飛び込み。11分に広島は先制点を許し、32分には森脇良太からボールを奪ったレッキーの突破をストヤノフが止めたプレーが「得点機会阻止」とみなされ、レッドカード。広島は10人でのプレーを余儀なくされた。
試合後、カメラマンが撮った写真を見てみると、ストヤノフの足が先にボールに触ってその後にレッキーの足がつっかかっているようにも見える。しかし、判定は受け入れざるをえない。広島の大魔神は無念の表情を浮かべ、ピッチを去る。
浦項ほどのハイプレスではないが、ヴィドマー監督が敷く4−1−4−1の布陣が織りなすゾーンディフェンスの前に、広島のビルドアップのパスやクサビが潰されていた。その上、必殺のロングパスを持つストヤノフの退場。大黒柱がいなくなり、この試合の大敗すら予感させた。だが、ここから奇跡的な大反発を広島は見せる。

55分、後半から入った高柳一誠が左サイドに飛び出し、相手のファウルを誘う。FKを蹴るのは森崎浩司。「意識した」という速くて鋭いボールをクリアするのは、アデレードの守備の中心=コーンスウェイトだ。だが、そのクリアは森崎和幸の足元へ。ミドル! 左足で放たれたボールは、「そこしかない」というコースを通ってゴールに吸い込まれた。
そこまで約1万3000人の大歓声で包まれていたスタジアムが、一気に冷え込む。その中を広島の選手たちの歓喜と紫のサポーターの大声援だけが響いた。ドラマが大きく展開した瞬間だ。

そこから広島は一気にペースを握る。広島が1人少ないことを忘れさせるようなコンビネーションの数々。センターバックとボランチの間にあるスペースを佐藤寿人・森崎浩・高柳の3人で使い合い、相手を翻弄する。広島のパス回しについていけずアデレードは後手を踏み、疲労から足が止まってきた。
75分、交代の出場の李忠成が奪った右サイドのFK。森崎浩の鋭いボールがニアをとらえるとそこにスッと走ったのは高柳だ。174センチの高柳がバックヘッド気味にすらしたボールは、190センチ近い選手たちがズラリと揃うアデレードの巨漢たちがつくる林の上を抜け、そのまま逆サイドのネットへ。
逆転! 逆転!! 手の震えが止まらない。「大変なことが起こっている」。隣の日本人記者と、そう言い合った。

だが、2008年ACLファイナリストの意地が、ドラマをもっと複雑にする。77分、ジェイミーソンのキックをヘッドで叩き込んだのは、痛恨のクリアミスを犯して失点に絡んだコーンスウェイトだ。197センチの巨体を身体ごとたたきつけるヘッドが炸裂し、再び同点。
この時、西川周作の飛び出そうとしたコースにファイフが立ちはだかったプレーは微妙だったし、CKを与える前のシーンでもセルジーニョがボールをキャッチしようとした西川を突き飛ばしている。反則をとってほしかったが、そこも含めて国際試合だ。
さらにドラマの流れは急に。82分、ゴール前でのFKをカッシオが蹴る。壁だ。だがここでコースが変わり、サイドネットに突き刺さってしまった。どうしようもない不運。
それでも広島は諦めない。パスをつなぎ、サイド突破を仕掛け、コンビネーションで崩そうとトライした。アデレードも疲弊し、レッキーは足をつらせて立てなくなった。死闘。だが、ドラマはこれ以上、動かなかった。

敗れたのだから、もちろん課題はある。同点の場面、コーンスウェイトはフリーだったこと。序盤戦に相手のカウンターを受けすぎたことも、修正ポイントだ。
しかし、しかし、しかし。身体中の毛穴が開き、神経はしびれ、鳥肌が立ち、胸の中の心臓音が大きな音で聞こえてくる感覚。レベルどうこうではなく、違う世界観を持った異文化同士が全力をぶつけあう闘いは、国内では感じられない質のもの。これぞ、ACL。そう言い切れる試合に立ち会えた興奮に、試合後、声を発することすら忘れていた。茫然としながら、視線を何気なくベンチ横に降ると、ペトロヴィッチ監督が立ち尽くし、虚空をながめていた。ずっと、ずっと。まるで凍り付いたように。

日本人もオーストラリア人も、様々な記者から広島のプレーを賞賛する言葉が相次いだ。ライセンスの関係で記者会見に出席できないヴィドマー監督(アデレード)も「広島は中盤でのプレーが速くて、10人なのに攻撃的にきた。広島の課題? 何を言うんだ。1人少ないのに、あれほどのプレーを見せたんだよ」と言葉を連ねた。
しかし、この日の指揮官は、どんな言葉を受けても、瞳の奥にある哀しげな色が消えることはなかった。会見の後、彼はポツリとつぶやいた。
「心が痛い。選手たちは、最後の力を振り絞って、全力で戦った。それだけに……」
その時、ミハイロ・ペトロヴィッチという男の瞳が、ぼやけて見えた。

以上


2010.03.25 Reported by 中野和也
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