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【2010シーズン始動!ニューカマー・レコメンド】年輪豊かな21歳のコリアンボランチ。今季も熱く、泥臭く:キム テヨン(水戸→岡山)(10.02.05)

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2010シーズン始動!ニューカマー・レコメンド
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昨季の水戸の象徴と言える試合のひとつが、第30節鳥栖戦だ。試合開始とともに鳥栖の勢いに押され、水戸はシュートの雨あられを浴びることとなってしまう。打たれたシュートは水戸の倍以上の28本。いつノックダウンされてもおかしくなかった。しかし、それでも倒れないのが、昨季の水戸であった。6分に菊岡拓朗のFKで先制すると、59分には主審と鳥栖の選手が交錯した隙を突いたキム テヨンがミドルシュートを決め、2点差とする。その後、両チームとも1点ずつを加えるものの、水戸が3対1で逃げ切りに成功。この試合を機に粘り強く戦うことを覚えた水戸は、その後、快進撃を見せるのであった。

しかし、この試合において周囲の選手以上に気を吐いた選手がいた。決勝ゴールを決めたキム・テヨンだ。試合前日に第一子が誕生。鳥栖戦があったため、出産に立ち会うことができなかったが、なんとか結果を残して新たな生命の誕生を祝おうと必死だった。後半開始から投入されたキムはそれまでの試合以上の気迫をみなぎらせていた。球際の争いで負けることはなく、たとえかわされても最後まで粘り強い対応を見せ、突破を防いだ。そして59分、ペナルティエリアの前に転がったボールを鳥栖の選手が拾おうとしたところ、主審と交錯。思いもよらぬ出来事が目の前で起きたことで全員足を止めてしまったが、ただ1人ボールに食らいついて行ったキムが豪快にシュートを決めたのである。まさに神様からのプレゼントと言うべきボール。シュートが決まった後にはチームメイトから揺りかごダンスで祝福され、キムの顔に最高の笑顔が浮かびあがった。

21歳という若さながら父親となったキムからはどこか大人びた印象を受ける。やわらかい物腰、そして、韓国人ながら丁寧な日本語を使うところなど、話をしていて、ものすごく落ち着きを与えてくれる選手なのだ。激しいプレースタイルから想像もつかない優しい父親であることは容易に想像がつく。ただ、彼が大人びているのは父親になったことだけが理由ではないだろう。若い頃から様々な経験をしていることが起因しているのではないだろうか。

少年時代から将来を嘱望されていたキムは、中学時代から韓国の年代別代表に選出され、多くの国際試合に出場してきた。そして、高校時代にはフランスリーグのFCメスユースに留学し、腕を磨いた。高校卒業とともに日本に渡り、神戸に加入。その後、愛媛、水戸と移籍し、そして岡山に辿りついたのだ。つまり、中学時代から常に海外という異文化の中で生活をしてきたのである。1か所にとどまっていては決して体験することのできない出来事をたくさん体験してきたのだろう。いいことも悪いことも含めて、すべてが彼の年輪となり、一般の21歳とはかけはなれた厚みのある人間性を育んだのではないだろうか。おそらく岡山でもキムは、周囲の人をなごませる笑顔を振りまくことだろう。

ただ、サッカー選手としてはまだまだこれから。特にボランチとして、パスの精度や展開力など攻撃的な部分については成長の余地は十分残されている。しかし、球際の強さ、ボール奪取能力の高さ、運動量の多さなど守備的な能力はリーグでも屈指。そして、なんといっても気持ちの強さが彼の最大の売りだ。前述の鳥栖戦のように絶対にあきらめない気持ちを胸に秘めており、勝利のために泥臭く戦う彼の姿勢が昨季の水戸の快進撃を支えたのである。昨季最下位となった岡山にとって、躍進を遂げるための最高のピースを獲得したのではないだろうか。チームが苦しくなった時、そこにはいつもキムの懸命に戦う姿があるはずだ。

以上

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2010.02.05 Reported by 佐藤拓也
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