1月1日(金) 第89回天皇杯決勝
G大阪 4 - 1 名古屋 (14:02/国立/42,140人)
得点者:6' ルーカス(G大阪)、40' 中村直志(名古屋)、77' 遠藤 保仁(G大阪)、86' 二川 孝広(G大阪)、89' 遠藤 保仁(G大阪)
★天皇杯特集
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●西野朗監督(G大阪):
「いろんな意味でいい時間が準決勝までありました。全員で準決勝、決勝と2試合分のすべての準備をして戦っていこうというなかで、選手は集中を切らさずにいいインターバルとして使えて、準決勝・決勝と非常に質の高いサッカー、ガンバのスタイルというのを最後まで出し続けられた。その上で結果も出せたということで非常に(満足しています)。
この大会というのはやさしいようで、一番難しいタイトルだ監督をやっていてつくづく思うので、連覇については非常に価値が高いものだと思っています。本当にすばらしいサッカーで圧倒できたという内容についても、非常に満足をしています。09年、いろんなチャレンジをしてきましたけれども、なかなかタイトルに届くことができなかったので、この天皇杯にかけるガンバとしての思いも非常に強かった。本当に選手一人ひとりの力を結集して戦えたシリーズだったと思います。とにかくガンバのスタイルで勝ち取ることができたので、非常に嬉しく思っています。
元日の大舞台でしたが、今年のサッカー界にはまた大きな舞台がありますし、いろんな意味で発展していかなければいけない年だと思います。元日にこういうサッカーを披露できて発信できたということは、サッカー界にとっても非常に加速するのではないかという気もします。2010年もいいサッカーができるように、ガンバも成長していきたいなと思います。本当に1つタイトルが取れてホッとしています。ありがとうございました」
Q:すばらしいサッカーで圧倒できたということでしたが、後半のある時間までは相手が勝ち越してもおかしくないような状況だったかと思います。最終的に大きな差になったのはどういうポイントだと思われますか?
「ここがガンバのウィークポイントかなとは思いますが、準決勝もそうですけれども、なかなか追加点、ダメを押すことができない。いい時間帯で先手を取りながら、その後に攻めあぐねる。そして徐々にペースを握られる。準決勝の仙台戦もそうだったんですけれども、確かに今日もそういう時間帯はあったと思います。ただ結果的にではないのですが、選手は落ち着いて試合をできていて、いなすところはいなしたり、我慢するところは我慢したり、そういうなかで自分たちのスタイルを全員が共有した上で戦っていたと思います。
逆に名古屋はケネディという超ストロングポイント、そこへの最終的なボールの配球というものがはっきりしていた部分もあったので、先制してからケネディに入れてくるのも早くなりましたし、入ってからの周りの連動性も高まってきて、ある時間帯はそういう攻撃的なスタイルを許したところもありました。でも、それはすべて全員が理解しているところだったので、それでも極力自分たちでゾーンを下げない、ラインを下げないということを最後まで徹底してやりました。確かにセンターにああいうターゲットがいるということは、非常にディフェンスしづらい部分ではあるんですが、それも理解した上でのことだったので、あまりベンチも慌てませんでした。常に言い続けてきたのは、ラインを落とすなということで、2-1になってからも、どうしてもズルズルと下がってしまう部分はあるので、そこはしっかりプッシュアップしながら、全体をコンパクトにということをやり続けられた。自分たちで落とさずにプレッシングできたというところ、そこが最後、ああいう差になったんじゃないかと思います」
Q:故障明けの松代選手を起用された理由と、掛けた言葉があれば教えてください。
「準決勝では木村が、大きなピンチが連続したゲームではなかったけれども安定してやったことは間違いない。しかし、このファイナルというのは別の見方をしなければいけないと捉え、キャスティングも考えなければいけない。松代の状態が悪ければ当然木村と思ったが、2日間で万全の状態に戻っていた。準決勝の日から『ここに合わせろ』ということを伝え、全体練習で合わせることはできなかったけれども、松代個人的には100%に近いコンディションをキープできた。木村の選択もありましたけれども、やはりいろんな意味でプレッシャーがかかる、経験も必要な部分もあるゲームとこの決勝戦を捉えていたので、最後はそういうところで決めました。
昨日の夜も松代が発熱したらしく、いろんな緊張からか足の状態はよくなったのに、熱を出してドクターにかかっているような状況もあった。今朝は戻ったんで『知恵熱だったのか』とか言ってましたけど(笑)。彼もいろいろとプレッシャーを感じたり、この決勝に間に合えばというなかで特別な治療をしたり、準決勝の日から決勝に合わせろという状況の中で、精一杯の努力をして戻ってきたというところもありますね」
Q:ガンバはベースは素晴らしい組織があって、そこに最前線に一人の個人プレーに優れた選手がいてというスタイルだと思いますが、それがどんどん中東にとられました。ところがそういうことを繰り返して、個人プレーヤーがいなくなったタイミングでいいサッカーをするという印象があるのですが、これは偶発でしょうか?意図的なのでしょうか?
「個人的なプレーというのが選手の誰を指しているのかはわかりませんけれども、ガンバはそういう一人の選手を中心にとか、その選手に頼ったチームスタイルというのは築いていない。組織でやっている中で、そういう選手が更に秀でている部分を感じるかもしれませんし、今日のゲームだと遠藤が…と言われるかもしれませんが、遠藤を中心にしたチーム作りは全くしていません。
多分そういうチーム作りをした場合には、その一人が動いてしまうということは、ものすごくマイナスです。そこからチームを更に立ち上げる、プラスの方向に行かせるというのは非常にパワーがいりますし、いろんなマイナスがあるでしょう。しかし、私自身も選手もそういうエクスキューズを言うことは全くありませんし、移籍が発生するというのは当たり前といえば当たり前のことかもしれません。生きているクラブというのがいろいろと変動していくことは当然と思わなければいけないと思います。ここ最近ではなくても、強豪チームと言われていると必ず毎年そういうことが起こりえる。これは一番難しいことです。
先ほどこの天皇杯が一番難しいと言ったのは、更に日本のシステムでは11月にはチームを去る選手も決まってくる。どの監督もこの時期にチームをトップパフォーマンスでスタイルを継続してコンスタントにやるのが一番難しい時期だと思います。そういう動きもあり、システムのなかでこの天皇杯に向けてチーム作りをしていくのは本当に難しいと思いますが、そういう中でタイトルを取れたという思いもあります。誰かがいなくなってチームが結束したというガンバではない。基本的に組織、全体として統一したコンセプトを持ってやっていくということ。そのなかでやり続けていく、やれているというのが強さだと思いますし、そこに更にストロングなポイントがあれば更にプラスになるのかもしれませんが、それはわかりません。融合できないでマイナスになる組織も考えられるので。どういう形でスタイルを築いていくかというのを全員で共有できるかできないか。天皇杯に関しては、そういう部分が強く出たなと感じています」
Q:ケネディというターゲットへの対策について、ラインを下げない以外にどのようなものを考えていたか、もう少し具体的にお願いします。また、守りという面では遠藤と明神がすごく頑張ったと思うのですが、守備について教えてください。
「ガンバのディフェンスは基本的に人に対するディフェンスではなく、ボールに対していかに全体がプレスをかけ、ポジションを取れるかということになります。ですから、ケネディ、ケネディということは全く強調はしていません。ケネディにボールが入ったら、たとえ競り勝ったとしてもボールはこぼれるし、セカンドボールは拾われる。山口が競り勝ったとしても、そう大きく弾き返すことはできない。ケネディが自分たちのゴールの近くにいるところで競られたら、失点したケースもそうですね…あれはキーパーが出るという約束ではないですけれども、自分たちのディフェンスラインが落ちた場合は、セカンドボールを拾う意識を高めなければいけないし、キーパーがアドバンテージを持った状態でプレーしなければいけない。当然ラインが落ちればボールは入ってくるんで、そうさせないようにライン設定を高いところでキープするということと、競り負けたとしても最終的にフィニッシュに関わらないところで競らせろと。
その前に、名古屋は単純にケネディに入れて来ない。ある程度サイドを崩して入れてくる。その前の、ゾーンの守備で戦う。今日、明神や遠藤がよかったというのは、そういうボランチラインと前のラインがコンパクトな距離感のなかでディフェンスが出来た。積極的にボールにアプローチしていく、高い位置で取っていく、相手のボランチ吉村、両サイドの阿部、田中に対してまずプレスをかけた上で。だから、ケネディに入ったボールや、ケネディに入ってくるボールへのディフェンスを考えるのではなくて、その前のディフェンスを全体で考えていくということでした。山崎やルーカスは前から追いますし、それに連動して橋本や二川も入って行きますし、さらに中盤のエリアでいかにボールにプレスをかけて3トップを孤立させるかということを考えていかないといけない。単純にクロスボールを上げられて、ケネディに対して…ということを考えすぎると、名古屋のスタイルになっていくのかなと。そこは多少のリスクを負っても、積極的にディフェンスラインを上げていく、ボランチラインも積極的に相手の高い位置にプレスをかけていくということをやり続けられた結果だと思います。多少ラインは落とされましたけれど、それは自分たちで落としたのではなくて、確かに落とされました。ボールをサイドにチェンジさせられたが、ある程度予想はしていました。ケネディは懐も深いし、グラウンダーでもキープできる。明神も前へのプレスと後ろへのプレスバックというのを常に考えながら窮屈な状況にしたというのが、ある程度の時間帯でやれたなという感じはしています」
Q:3年連続でタイトルを取るというのは過去にそうないかと思いますし、チームがひとつの成熟度に来ていると思うのですが、もっとこういうサッカーをやりたいというのを聞かせてください。
「結果は別にして、ガンバのスタイルというのが、チームのなかでも全員がどういうサッカーをして攻守にどういうことをしていくかというのは浸透してきたと思います。自分の理想としているところに近いものが、チームパフォーマンスとして出ていると思います。ただ、裏腹に弱い面もガンバにはあります。毎年一緒にやっている選手が9年目に入りますし、今日の選手の平均年齢を見ても『これだけ一緒にやってきたんだな』と思います。少し変えるべきではないかとも言われていますが、ガンバの30歳は他のチームの30歳とは違うなと自分では思っていますし、まだまだ追求してほしい部分はたくさんあります。メンバーが変わればまた新しいものが出てくるかもしれませんけれども、そういう発掘とともに、今のスタイルでいいとは思わないですけれども、より精度を上げていく、個の力を上げさせていく、そういう努力を今年またできる。いろんな意味で競争をさせて個の力を更に高めることも、平均年齢が高いといわれる中でも質を上げることを追求していきたいと思いますし、攻撃的なスタイルというのを更に追求していきたいとは思う。ただ、攻撃的に言うとどうしても攻撃のなかの攻撃と思われるんですけれども、ガンバは守備に関しても『攻撃的なディフェンス』をしていかないといけない。個の力は決して強いとは思っていないので、そういう部分も高めていかないといけないと思います。とにかく全体で動いていくトータルサッカーというのを、もっと選手にもわかってほしいと思うし、自分でやれないことをサポートしてもらう、サポートし合うということになると思います。より高いパフォーマンスを生めるようにやっていきたい」
以上
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