10月18日（日） 2009 J2リーグ戦 第45節
熊本 0 - 1 福岡　（13:03／熊本／12,730人）
得点者：35' 久藤清一（福岡）
スカパー！再放送 Ch181 10/19（月）14:30〜（解説：池ノ上俊一、実況：山崎雄樹、リポーター：吉田明央）
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　この試合に向け、今週のトレーニングで取り組んでいたのは、福岡のDFラインとボランチの間で受けて、食いついてくればその裏のスペースに2列目が飛び出し、食いついてこなければそこからターンして前を向き、さらに出入りして守備ブロックを割るという形。そこでつっかえればまたサイドに開き、GKとDFの間のスペースに球足の速いグラウンダーのクロスを入れ、飛び出して合わせる、という攻撃だった。だが蓋を開けてみればそうしたシーンはほとんど作れずじまい。決して押し込まれていたわけではないのに1点を失って敗れた熊本は、結局、福岡から1勝も挙げる事ができないまま、今シーズンの九州ダービーを終えた。

「目指すサッカーとはほど遠い」と北野誠監督が話したのも無理はない。何しろ、シュートも前半はゼロ、90分を通じてもわずか3本。確かに、福岡がDF陣と中盤で2ラインを作り人数をかけて守っていたこともあろうが、この試合では2列目からの追い越す動きも含め、本来やりたいはずの前線での流動性がほとんど見られなかった。ラインが深かったわけではない福岡の守備に対して、オフサイドがひとつもなかったことにも、裏への飛び出しが少なかった事が表れている。

　ポイントは、ここ数試合で機能していたはずの守備、とくに連動したアプローチからのボール奪取が見られなかった事。福岡の決勝ゴールを決めた久藤清一が「サイドバックから（ボールが）出るところへのプレッシャーは強いけど、そこでうまくかわすとフリーになれた。（高橋）泰と黒部（光昭）に入った後でフォローすれば、前向きで受けられると考えていた」と話している事からも分かる通り、1枚が寄せてもその後が続かないため、簡単にはがされてはオーバーラップした両サイドバックや久藤、鈴木惇を経由し、前線の黒部に当てられ、そのセカンドボールも効果的に拾えない。35分のこの試合唯一のゴールも、そうした形から久藤、高橋とつながれて、久藤にフリーでシュートを許したもの。

　守備がはまらないと攻撃も停滞する。高い位置でボールを奪えないためスピードを生かした飛び出しの場面を作れず、攻撃に時間がかかって福岡が自陣へ戻る時間を与えてしまう。中盤でボールを受ける動きも少なく、前述したように前の出入りがないためパスコースの選択肢が限られる。結局、「前でキジさん（木島良輔）が動いていて、出しやすい所へ出してしまう場面が増えてしまった」（福王忠世）ことでロングボールが多くなるという悪循環。さらには、前に運ぶ段階でのミスも多く、時間が経つに連れて疲弊していったのか、特に後半に入ってからは前がかりになったことで守備での対応が後手になり、不要なファウルを頻発して立て続けに警告を受ける等、ゲームのクオリティを下げた。

　それでも、公式記録によれば福岡の後半のシュートは1本だけで、積極的な仕掛けを期待して西森正明、そして中盤の底に原田拓を入れて全体も押し上げ、ボールも動くようになってリズムを作ったことで、流れはいったん熊本へ傾きかけた。54分には藤田俊哉のスルーパスに木島が抜け出して左足のシュート、61分には細かいつなぎで中央を突破して藤田が持ち込むなど決定的な場面を迎えている。しかし、いずれもゴールを割る事はできず。66分に藤田を下げて中山悟志を投入した影響もあってか、かえってまたロングボールが増えてしまった感もあり、福岡の篠田善之監督の言葉を借りれば「我慢して終わらせ」られた。

　過去2戦は内容的には押していながら勝ちきれなかったが、今日のゲームに関しては内容的にも『悪くなかった』とすら言えない出来だろう。せっかく集まった12,730人の観客にとっても90分を通しても見どころの少ない「凡戦」（北野監督）となってしまったことが非常に残念でならない。何より、チームとしてのポテンシャルを十分に発揮できず、ここ数試合で手応えとして掴んでいた展開に持ち込めなかったことが悔やまれる。

　だが、終わった試合の90分は帰ってこないし、経験値として蓄積して次の90分に生かすしかない。中2日で対するは、去年も含めて勝っていない水戸。現在、前半の好調ぶりが嘘のような7連敗という状態にあるが、熊本も累積警告の右サイドバックの市村篤司とMF山本翔平が出場停止となる苦しい状況。代わりに出場する可能性のある選手だけでなく、チームの総力を結集して臨みたい。それを表現するための勉強は、シーズンを通してここまで随分と重ねてきたはずである。

以上

2009.10.19 Reported by 井芹貴志