10月10日(土)キリンチャレンジカップ2009 日本 vs SCO(19:20KICK OFF/日産ス)
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香港との間で行われたAFCアジアカップ2011カタール予選の試合後。岡田武史監督はその香港戦からの代表3連戦の位置づけについてこんな話をしている。
「ワールドカップ予選を勝ち抜いて、ヨーロッパ遠征をして、今後やらなくてはいけないこと、(ワールドカップ)本大会までのステップアップの方向性が見えたところでの、新しい段階のスタートという位置づけで、今回やってきました」
すでに2010 FIFAワールドカップ 南アフリカ本大会への出場権を手にしている日本代表にとって、先月のオランダ遠征を皮切りに始まったW杯南ア大会までの実戦経験は、世界との距離感を縮めるためにある。そうした中で行われたこの香港戦は、アジア杯への出場権を勝ち取るという目的と同等の重みで、世界での戦いを見据えたものとなった。現実に目の前に対峙する香港のその背後には、オランダにおいて肌で感じた世界との距離が見えており、それを縮めるためのひたむきさが6-0というスコア以上に戦う姿勢として出ていた。
「この試合は勝たなくてはいけない試合だったが、勝つだけのためならあそこまで無理して攻めることはなかった。彼らはテーマをもって取り組んでくれた。6−0で満足することもないし、全く心配はしていない」と岡田監督は試合全体を振り返っている。
香港戦から中1日。会場を日産スタジアムに移してのスコットランド戦は、前述の通りW杯本大会に向けた日本代表のチャレンジの一つとなる。このスコットランド戦に向け岡田監督は「次のスコットランド戦(10月10日@日産ス)は中1日ということで、今日、裏に出たボールに全力で戻るということとか、90分(手を)ほとんど抜かずにやってくれた選手たちが(フルで)出るのは辛いと思っている。そういう意味で、呼んでもなかなか使えなかった大事な中堅どころの選手プラス、新しい戦力を使っていきたい。彼らは今日の試合を見ていて、イメージができていると思うし、モチベーションも高まっていると思う」と語っている。つまり香港戦で90分をフル出場した選手に関しては、スコットランド戦でのフル出場は回避される模様であり、今まで思うように起用できていなかった選手たちにチャンスがめぐってきたという事が言える。
何人かの選手に注目したいが、その中でも特に見たい選手の筆頭として、本田圭佑(VVVフェンロ)の名前を上げておきたい。香港戦の日本代表は、決定的な形を作りながらも決めきれないという悪弊が繰り返されてしまっていた。しかし、そうしたいわゆる決定力不足を打開する切り札として、本田の力には注目が集まるところだ。本田については、チームコンセプトに対する理解度や、それを実現するための運動量の面でまだ岡田監督からの十分な信頼感を得ているとは言いがたいが、現時点で他の選手の能力を確実に上回っているものがある。それがシュートを打ちに行く気持ちの強さである。
そもそも突出した事を避ける傾向の強い日本社会の中で生きてきた日本人選手は、必然的に目立つ事を避ける傾向にある。だからこそ自らの行動に心理的な理由付けが必要となり、可能性が低い場面ではシュートを回避する事が多い。またパスサッカーに美しさを見出しがちな国民性もあって、シュートとパスの2者択一の場面でのパスという選択肢は、責められるどころか喜ばれる傾向にすらある。しかし、そもそもシュートを打たなければ、ゴールが生まれる事はない。そうした観点で見れば、決定力不足を解消する手段としてシュート数を増やす選択肢には十分な意味があると考えている。もちろんチーム戦術として相手を完璧に崩す努力は必要だろうし、シュートの精度そのものを高めるという意識も必要だ。ただ、本田に関しては現時点ですでにシュートを打つ、というリスクをとれるパーソナリティを持っており、そうした選手に昨年の名古屋合宿以降、チームが推し進めてきたコンセプトを教え、運動量の必要性を自覚させる、というアプローチに多少の期待を持っているのは事実である。岡田監督が提唱するコンセプトは戦術的なサッカーへの取り組みではあるが、そこに今までとは真逆の方法論、つまり局面を打開できる個性を持ち込もうとしているという点で、注目しているのである。
決定力不足解消の切り札として、さらにもう一人の名前を上げるならば、森本貴幸(カターニャ)という事になるのだろう。シュートへの貪欲さやセリエAという結果にこだわるリーグでの実績に着目した人選であるのは間違いなく、森本もまた本田と同様に、決定力を高めるための方法論を逆算して求めた選手選考なのだろうと考えている。もちろん彼らと同じ系譜の選手として石川直宏(F東京)の名前も上げられるはずだ。
現在の日本代表には、まず選手を統率するコンセプトがあり、そのコンセプトをより高い次元で達成できれば自ずと決定機が増え、得点も増える、という行動原理が働いていた。そうした日本代表に対する本田や森本という選択肢は、コンセプトにより向上が見込まれる決定力やシュート数という回答をあらかじめ持っている選手を組み込んだ際に、コンセプトに基づく日本代表にどのような化学反応が起きるのかを見極める作業なのではないのかと思えるのである。岡田監督の、本田や森本といった選手への期待は、理想主義者が現実の壁にぶつかった事でもたらされた一つの回答なのではないかと思えるのである。
もちろん、その回答が正しいのかは現時点ではまだわからない。わかりはしないが、理想と現実との狭間に立った岡田監督のこのアプローチに、岡田監督の世界への思いの強さを感じており、またそのアプローチそのものは論理的思考を経た十分な必然性を持ったステップなのだろうと考えている。
コンセプトという精密機械の中にもぐりこんだ、生身の職人がどのような働きを見せてくれるのか。非常に高い興味を持ってこの試合を迎えているところだ。世界との距離を縮める手がかりが見つかる事を期待したいと思う。
ということで、この試合の見所は、複数の主力を欠くスコットランドにあるのではなく、コンセプトへのアンチテーゼたる職人気質の選手たちの、コンセプトへの逆方向からの融合の度合いにあると考えている。まさに日本代表の戦いそのものが見所になるのである。ぜひとも日本代表の戦いに注目してほしいと思う。もしかしたらW杯南ア大会における一つの解答がもたらされるのかもしれないと、思っているところだ。
以上
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【日本代表10月の試合スケジュール】
■キリンチャレンジカップ2009 ALL FOR 2010!
10月10日(土)19:20(予定)/神奈川・日産スタジアム
日本 vs スコットランド
テレビ放送:テレビ朝日系列にて生中継
ラジオ放送:ニッポン放送にて生中継(予定)
10月14日(水)19:30(予定)/宮城・宮城スタジアム
日本 vs トーゴ
テレビ放送:TBS系列にて生中継
ラジオ放送: 調整中
2009.10.09 Reported by 江藤高志
J’s GOALニュース
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