42試合を終えて、J2最多78失点を喫している熊本。得点数は上から数えて9番手と、点が取れているだけに、失点さえ少なければもう少し上の位置にいるのに…という歯痒さはある。
周囲同様、選手やコーチングスタッフも同じ思いを抱いているに違いないが、中でも昨年まで守備の柱だった上村健一コーチの思いは如何ばかりか。
「トレーニングで厳しく言ってやらせても、ゲームでできていないということは、僕らの言い方が足りないという事」。
屈辱的な6失点を喫した徳島戦の翌日の練習では、試合に出たメンバーは移動のため不在だったが、練習見学に訪れたファンに向かって、ふがいなさを詫びたという。
昨シーズンいっぱいで現役を引退して約10ヶ月。最初の頃こそ、選手とは違う色のウェアをまとった姿に違和感もあったが、時間が経つにつれて見ている我々もずいぶん慣れた。練習中はマーカーコーンを運んでグリッドを作ったり、ビブスを配ったりと、黒子としてチームを支える。練習が終わっても、スカウティングのために大瀬良直人コーチらとビデオを分析したり、トレーニングのメニューを考えたりと、夜遅くなる事もしばしばだ。
試合ではベンチに入らない。だがその分、毎日の練習では厳しい声を飛ばす。公式戦の前々日や前日は、ベンチ入りする選手たちが練習を切り上げた後、その他の選手はミニゲームを行なうのが通例。その際に細かい指示を与えたり、アウェイゲームの遠征に帯同しないメンバーのトレーニングを仕切ったりするのも上村コーチの仕事だ。そして、山内祐一、西森正明、チョ・ソンジン、松岡康暢など、開幕の頃は“居残り組”だった選手がシーズン途中からポジションを掴んで試合に出場し、徐々に結果を出していることは、彼にとって密かな喜びでもある。
「僕よりも能力の高い選手もいると思うんですよ。僕でも代表を経験できたんだから、選手たちにはもっともっと上を目指して欲しい。できないと思ったら言いませんし、できると思うから厳しい事も言う。そうやって、できなかったことができるようになる喜びというか、楽しさも感じて欲しいんです」
そんな上村コーチ、今年の夏にJFA公認C級コーチの資格を取得。「指導法云々よりも、今までプレーして積み重ねて来た事の確認ができたし、いろんな指導者の方達と話して、それぞれの考え方を聞けた事が良かったですね」と笑った。昨年、引退発表後に話を聞いたときには、「早く監督になりたい」と話していたことを覚えている。それが実現するまでにはまだ時間がかかりそうだが、現役時代同様、サッカーにかける情熱は冷める事はない。
以上
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2009.09.28 Reported by 井芹貴志
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