9月23日(水) 2009 J2リーグ戦 第41節
水戸 1 - 3 鳥栖 (13:05/笠松/3,089人)
得点者:8' 高橋義希(鳥栖)、41' 高崎寛之(水戸)、56' 高地系治(鳥栖)、59' ホベルト(鳥栖)
スカパー!再放送 Ch180 9/24(木)17:00〜(解説:菅野将晃、実況:野村明弘、リポーター:高木聖佳)
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試合開始直後から両チームの監督が立ち上がって選手たちに激しく指示を飛ばす。その姿からこの一戦にかける両指揮官の強い気持ちを感じ取ることができた。同勝点で並ぶ6位水戸と5位鳥栖。3位湘南との勝点差は8。残り試合を考えると、この試合で負けたチームは昇格争いから脱落と言っていい。まさに崖っぷちの一戦。「意地と意地のぶつかり合い」(木山隆之監督)。指揮官たちが熱くなるのも当然と言えるだろう(岸野靖之監督はいつものことかもしれないが)。
ここ数試合の悪い流れを断ち切ろうと、前半、水戸は攻めた。これまでのように単調なロングボール攻撃ではなく、村松潤とキム・テヨンのボランチがうまくサイドに展開し、幅の広い攻撃からチャンスを作り出した。8分に先制点を許すものの、水戸の攻勢は変わらず。1人1人の球離れが早く、鳥栖のプレスをいなしながらテンポのいいパス回しでペースを握った。そして、41分に左サイドからのクロスを頭で合わせようとした高崎寛之がファウルを受け、PKを獲得。それを高崎が冷静に左隅に決め、同点に追いつくことに成功した。「自分たちの方が勢いに乗っていける可能性がある展開だった」と木山監督が振り返るように、十分逆転の可能性を感じさせる内容のまま、前半を終えた。
だが、そんな淡い期待は後半開始とともに消えた。「前半、相手のボランチをフリーにしすぎたので、中盤をダイヤモンド型に変えた」(岸野監督)。トップ下に入った高橋義希が水戸のボランチに対して厳しいプレスをかけると、水戸は展開力を失い、中盤を鳥栖に支配されることに。さらに「ピッチ状態も考えて前半はロングボールを多めにしようと考えていたけど、意外とパスがつなげたので、ハーフタイムにつないだ方がいいと話をした。それで左右からいい崩しができた」と高橋が言うように、前半とは打って変わって鳥栖が華麗なパスワークを披露。水戸のプレスを揺さぶりながら次々にチャンスを作り出していった。「前半が生きた」と高橋は振り返る。前半に浮き上がった課題をしっかり修正して後半に臨んだことで流れを引き寄せるしたたかさを見せた鳥栖。56分には右からサイドチェンジしたボールを受けた島田裕介から中央の廣瀬浩二へ。廣瀬が落としたボールを受けた高橋がペナルティエリア内に走り込んだ高地系治にスルーパス。高地が豪快にゴールに蹴りこんで勝ち越し。さらに3分後には左サイドからのCKのこぼれ球をホベルトが冷静に押し込んで追加点。その後も鳥栖が水戸を圧倒する展開が続いた。
「今の鳥栖を表している」と岸野監督を喜ばせたのは1点目と2点目。1点目はサイドを突破した廣瀬のクロスを高橋が合わせて決め、2点目は左サイドバックの高地がペナルティエリアまで入っていき、シュートを決めたもの。これまで「鳥栖はMFの得点が少なかった」(岸野監督)が、ここに来て、FW以外の選手のゴールへの意識が高まっている。前節も島田がゴール前に飛び込んで頭で合わせて決めており、彼らのゴールに向かう姿勢がチームにさらなる勢いを加えていることは間違いない。
6位水戸を一蹴し、昇格争いに踏みとどまった鳥栖。3位と勝点差は8のままだが、「力はついてきていると思う。それは第2クールからの成績を見ても明らか」と高橋が自信を見せるように、今最も勢いのあるチームと言っていいだろう。今年もシーズン終盤に向け、ダースホークとして存在感を示すに違いない。「目標はシーズンが終わったときにみんなが笑顔でいること」と岸野監督。試合後に目を赤らませていた指揮官の表情が笑顔に変わる日まで、鳥栖は「1試合1試合大事に戦っていく」(高橋)だけだ。
泥沼の3連敗を喫した水戸。結果だけでなく、内容でも上向きの兆しが見えないところが苦しい。前半は中盤で効果的な展開を見せていたが、うまくいかなくなると簡単にロングボールを蹴りこんでしまう癖が出てしまった。昇格争い生き残りをかけたこの試合で敗れたところで、もう1度自分たちを見つめ直したい。春先から今までで成長しているところがどこなのか、悪くなっているところはどこなのか。そして、水戸はどういったサッカーへと向かおうとしているのか。9月に入ってからそこが見えないところが最も大きな問題だ。昇格は確かに厳しくなったが、水戸には強くならないといけない義務がある。今、下を向き、やるべきことを見失ってしまったら、それこそ本当の敗北だ。次節『北関東ダービー』草津戦で歓喜の咆哮をあげるためにも、進むべき道筋をしっかりと見つめ直したい。
木山監督の家の前には奥さんが植えたアサガオが咲いているという。夏の花であるアサガオがこの時期まで咲いているのは珍しいことである。そのアサガオは以前1度枯れてしまったそうだが、それでも木山監督の奥さんが水をあげ続けたことで再び花が咲くこととなったという。枯れたように見えたアサガオに宿っていた生命力。それを見た木山監督は「次につながるために無駄なことは何もない。1つ1つの積み重ねが大事なんだ」と強く思ったという。そして、それを水戸というチームになぞらえてこう語った。「昇格は厳しくなったかもしれないけど、花を咲かすために努力することでしか次につながらない。僕は自分たちのやってきたことに自信を持っている。それをやりきろうと思っている。そうすれば、必ず花は咲くし、次につながる」。
決して水戸は死に体ではない。活力に満ちた可能性の塊だ。負けることや失うことを恐れることはない。トライして、トライして、トライすればいい。それこそが水戸の存在意義。わずかな可能性を信じて戦うこと。その積み重ねが、いつかでっかい花を咲かせるはず。『諦める』なんて言葉は、水戸にはない。
以上
2009.09.24 Reported by 佐藤拓也
J’s GOALニュース
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