４年前に初めて徳島を訪れた時から気になっていたのが「CHA-CHA HOUSE COFFEE」。焼きそばや、たこ焼きなどの定番の屋台が並ぶ中、愛嬌のあるフォルクスワーゲンの移動販売車と、黒板に手書きされたメニューがひときわ目立つ。店構えに加え、やや太めの優しそうなマスターと、柔らかな物腰とさわやかな笑顔が素敵な奥さんが醸し出す雰囲気が、店の周りに優しい空気を作り出している。その空気に惹かれて、ついついそばに行きたくなる不思議な店だ。

　試合が終わった後も１時間以上は営業を続けてくれているのもうれしい。これなら選手を送り出してからも買い物ができる。しかも、メニューの豊富さにはびっくり。特に、ストレートコーヒーからフローズン系の飲み物まで揃える飲み物の充実度は高い。中でもこだわりはコーヒー類。注文を受けると、その場で豆をひくところから始める。徳島が勝った時はすべての飲み物が250円になるのもサポーターには嬉しい。食べ物はパンが中心。一番の売れ筋は「揚げパン（120円）」で、黄粉、砂糖、シナモンのいずれかを、お好みでまぶしてくれる。

　私がチョイスしたのは、スタジアム限定の「デラックス揚げパン（160円）」。あんこ入りに黄粉、カスタードクリーム入りにシナモンの組み合わせを選択。まずはあんこ入りからかぶりつく。揚げパンと言っても表面にうっすらと色がつく程度で、香ばしさはあっても油で揚げたしつこさは感じない。パン自体はもっちりとした食感で柔らかな弾力がうれしい。そして口の中いっぱいに広がる黄粉の香りを、あっさりとした甘さのあんこが追いかけてくる。なるほど人が並ぶはずだ。

　続いてカスタードクリーム入り。「私はシナモンをまぶすのが好きなんですけど、お客さんは砂糖が多いんですよ」と笑う奥さんの言葉を信じて大正解。鼻に抜けるシナモンの香りと甘さ控えめのカスタードクリームのハーモニーが抜群。味わって食べるつもりが、あっという間に胃の中に収まった。他にもフランクフルトソーセージをクロワッサンの生地で巻き、溶けるチーズを乗せて焼き上げた「クロワッサンフランクフルト（180円）」や、各種サンドイッチ（250円〜290円）もある。
　そしてお菓子は手作りクッキー（220円）。表面の固さと、ほろほろと崩れていく中身はクッキーならでは。こちらも甘さは控えめ。上品な味に仕上がっている。

　食べ物も、飲み物も、そして店構えも、「CHA-CHA HOUSE COFFEE」の最大の良さは、手作り感と素朴感。店が醸し出す雰囲気も優しいが、食べたあとも本当に優しい気持ちにしてくれる。もちろん、それぞれの味も確かで、甘さ控えめに仕上げられた食べ物は上品さも感じる。飲み物や食べ物の味だけではなく、醸し出す雰囲気も含めて楽しみたい移動式喫茶店。徳島市内には本店もあるそうで、そちらも覗いてみたくなった。

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2009.04.23 Reported by 中倉一志