茨城で生活するには車は不可欠です。

　1年半前に知り合いから車を借りて生活していたのですが、その車はかなり年季が入ったシロモノで、今年に入ってからかなり調子が悪くなることが続いていました。

　ある朝、練習取材に行こうと車で出発したものの、途中でエンストを起こし、茨城県の大動脈である国道6号に大渋滞を巻き起こすこともあったし、また、その後、修理して戻ってきたので安心して乗っていたらボンネットから煙が出たことも……。間一髪で近くにあった駐車場に止めて対処したのですが、知り合いによれば「そのまま乗っていたら、車が炎上していたかもしれない」という状態だったそうです。どうやらキャブレターが異常をきたしていたみたいで……。そんなスリリングな日々を送っていたのです。

　ただ、僕もまだ死にたくない気持ちがあります。なので、4月でその車の車検が切れるということもあり、車を買おうと計画を立てていました。そんなある日、取材で東京国際大学サッカー部監督の前田秀樹水戸前監督に取材しに行くことになりました。そこで、前田さんに会うなり、発せられた言葉が「佐藤、車買わないか？」という一言でした。

　前田さんらしい唐突かつ自己完結型の言葉にビックリしたのですが、聞いてみると、前田さんは新車を購入する予定で、今乗っている車を下取りに出すよりも誰かに売ろうと思っていたみたいです。それで、水戸でかなり年季の入った車に乗っていた僕に白羽の矢が立ったようです。2つ返事で前田さんから（かなり格安で！）買うことを決め、後日前田さんの住む横浜から水戸に持ってくることになりました。

　このウイングロードは水戸サポーターにとって思い出の車と言えるでしょう。前田体制時、勝利した後、毎回のようにサポーターはスタジアム前に止めてあるこのウイングロードの周りに集まり、前田さんを胴上げしたり、車を紅白幕で覆ったり、「前田祭り」を開催して前田さんと喜びを分かち合っていました。そんな思い出の詰まった車に乗ることをうれしく思うのと同時に「自分が乗っていいのかな」と恐れ多く思うことがあります。ただ、そうしたいろんな人たちの思いをこれからも伝承していければいいと思っています。
　「友達が前田さんの車が走っているのを見たって言ってたので、こっそり前田さんが偵察に来ているんだと思ってましたよ（笑）」と本間幸司が話すように、選手や関係者の中ではちょっとした都市伝説になっていたみたいです。

　“あの”ウイングロードはいまだ健在！　これからも水戸ホーリーホックのため、そして日本サッカーのために走り回ります！

以上

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2009.04.22 Reported by 佐藤拓也