3月8日（日） 2009 J2リーグ戦 第1節
湘南 2 - 1 横浜FC　（16:03／平塚／8,221人）
得点者：23' 阿部吉朗（湘南）、53' アジエル（湘南）、89' 西田剛（横浜FC）
☆顔写真クイズ｜勝敗予想ゲーム
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わずか1分で放たれた難波宏明のファーストシュートが示すように、立ち上がりに攻勢を見せたのはアウェイの横浜FCのほうだった。難波はその数分後にも、奪った後のカウンターから鋭い動き出しとシュートで相手ゴールを脅かしている。守備では後ろの2ラインで湘南の3トップをコンパクトに挟み、ことアジエルと阿部吉朗の両ウイングにボールを収めさせない。ホーム開幕戦という要素も多分にあったろう、動きの硬い湘南を尻目にサイドで主導権を握り、序盤は横浜FCが優位に立った。

ひとつの契機は20分だった。ボールを欲しがったアジエルがボランチの位置まで下がり、すかさず相手DFの裏へとスルーパスを送る。反応したのは田原豊だ。惜しくもオフサイドの網にかかったものの、ここから徐々に湘南の組織が滑らかに動き出す。そしてわずか3分後、ふたたびアジエルが中からスルーパスを刺すと、斜めに裏を突いた阿部がDFを引き連れながら冷静にシュートを沈めた。「できるだけ裏を意識していた。前に前にという姿勢が得点に結びついてよかった」。反町湘南の公式戦初得点は、昨季はケガで出遅れたストライカーの貴重な開幕弾だった。

狙いどおり素早くシンプルにゴールを奪った湘南は、本来のポジションチェンジや追い越す動きを繰り返していく。連動性は増し、アジエルがつくるスペースに坂本紘司や臼井幸平が絡んで組み立てれば、寺川能人もゴール前を窺った。逆に寺川と坂本の裏は、ジャーンとこの日J初ピッチを踏んだ村松大輔の両センターバックとともに、キャプテンマークを巻く田村雄三がケアし続けた。穴を察知し、最終ライン近くまで守備に走った田原の献身も見逃せない。「開幕戦は数年ぶり」と気持ちを高めていたGK野澤洋輔の、的確な声と鋭い反応もあった。他方、横浜FCはカウンターを織り交ぜ応戦するが、湘南も1対1で譲らず、また三浦淳宏の遠目からのフリーキックも凌いだ。

「ボールを奪ったときに前線との距離がありすぎたので」という述懐どおり、横浜FCの樋口靖洋監督は起点をつくるべく後半開始間もなく三浦知良を投入した。J最年長出場記録を更新したベテランによって時間が生まれ、加藤大志ら攻撃陣が攻めに転じる。だが、攻められても湘南の中央は堅い。逆にショートコーナーから臼井が抑えの利いた強烈ミドルを撃ち、詰めたアジエルがこぼれ球を巧みに押し込んだ。53分、「チームとして準備してきたことが出せてうれしい」と、阿部が自身の先制弾以上に喜んだ湘南の追加点である。

以降も湘南は動きを絶やさず、サイドを使いながらゲームを主導する。かたや横浜FCは89分、それまで集中力高く危険なゾーンでファウルを与えていなかった湘南から、ペナルティエリアの外でフリーキックを得た。三浦淳からのボールに反応した三浦知のシュートは枠を捉え切れなかったが、ロスタイム、緩んだ相手の隙を逃さず、右サイド深く切れ込んだ加藤のクロスに途中出場の西田剛がヘッドを合わせ、デビューゴールを決めた。しかし反撃もここで終わり、両軍の初陣は明暗を分けた。

「51試合の一歩目を前に大きく踏み出せなかったことは非常に残念」試合後、横浜FC樋口監督は語った。「イニシアチブを握る時間をなかなか多くつくれなかった。ただ、準備してきたサッカーを出す時間帯をつくれたことは自信になるし、今後もブレることなくより成長させていかなければいけない。気持ちをしっかりと切り替えて、次の熊本戦に向かいたい」。序盤のコンパクトな守備や起点をつくって以降の人数をかけた攻撃など、一定の成果は果たせている。トレーニングのなかで辛抱強くチーム力を高めていきたい。

　一方、湘南は反町康治監督の初陣とバースデーを勝利で祝った。試合後に選手たちから水をかけられた指揮官は、「負けていたら冷や水もいいところ」と笑いを誘いつつ振り返る。
「相手を分析したうえでだいたい狙い通りできたが、まだ地に足が着いていないようなゲーム展開。もっと冷静に燃えることができるといいと思う。ただ、長く準備してきた成果が出てきて、こうしてホームで勝点3を取れたことは非常にうれしい。向上できる部分はたくさんあるので、また1週間しっかり見つめ直してやっていきたい」

「勝つことが監督へのバースデープレゼント」戦前、野澤はチームの想いを代弁したものだ。冷たくも温かい祝福を号砲に、反町湘南が貴重な一歩を踏み出した。

以上

2009.03.09 Reported by 隈元大吾