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【キリンチャレンジカップ2009 日本代表 vs フィンランド代表】レポート:攻守両面で成果あり。この流れで、1週間後のW杯最終予選オーストラリア戦へ!(09.02.05)

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2月4日(水) キリンチャレンジカップ2009
日本代表 5 - 1 フィンランド代表 (19:20/国立/34,532人)
得点者:15' 岡崎慎司(日本代表)、32' 岡崎慎司(日本代表)、44' 香川真司(日本代表)、50' ロニ・ポロカラ(フィンランド代表)、57' 中澤佑ニ(日本代表)、86' 安田理大(日本代表)
★2.11日本vsオーストラリア@横浜国 テレビ朝日系列、NHK-BSにて全国生中継
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試合後の岡田武史監督は、この試合で設定していたテーマに関し、攻守両面で簡単に説明している。いわく「1つはDFの仕方をどういう形で始めるかというところ。攻撃に関しては、相手のそれぞれのラインの間でいかにボールを受けられるか。ちょっと抽象的だが、ボールをいかに動かせるかというところ」。
守備に関しての岡田監督の説明は、自分たちからボールを奪いに行く場面についてのものだろうと推測される。つまりプレスのかけ方である。この試合の日本のボール支配率は62.7%で、37.3%にとどまったフィンランドの2倍近い数字になっていたこともあり、奪いに行く機会そのものがそう多いわけではなかった。ただ、前半には後ろの岡崎慎司(清水)を振り返りながら玉田圭司(名古屋)がプレスを仕掛け、3手目のパスミスを誘う場面なども見られ、守備のスイッチについて共通理解が進んでいることをうかがわせた。

ただ、先日行われたバーレーン戦(AFCアジアカップ2011予選、1/29)や08年10月のウズベキスタン戦(FIFAワールドカップ 最終予選)などで露呈していた守備の最大の課題は、枚数をかけて前に出てくる相手への対応だった。試合を通じて日本が支配し続けていたこのフィンランド戦においても、枚数をかけて、リスクを背負って前に出てくる相手にシュートで終わられる場面が後半に見られていた。もちろんリスクを覚悟して前に出てくる相手を抑え込むのは難しいことではあるのだが、そこをどうしのいでいくのかは守備の安定を考えたときに必要不可欠なことである。
バーレーン戦後の合宿では、攻撃側に有利な8人対6人の局面で守備練習が行われていた。これは前の選手が攻めに出てしまった後の手薄な状況で枚数をかけて攻めてくる相手を受け止める練習であり、今までの傾向として日本が苦労してきた形である。岡田監督はこの守備練習を最終ラインの4枚とボランチの2枚とで守らせており、基本はこの6枚のセットだと考えていい。この6枚で奪えるならばそれで問題はないし、前線の選手が帰陣するまでの間、攻撃を遅らせることができればそれでいい。これはオーストラリア戦までに練度を上げてほしい部分である。

攻撃面では岡田監督が意図していたことがある程度できていたのではないかと考えている。たとえば日本代表では初めてのトップ下に入った中村憲剛(川崎F)は、攻撃の局面での話として「相手のゾーンの間に入るとパスが出てくる」と述べていた。これはフィンランドの最終ラインと中盤のラインの間のスペースに入り込んでパスを引き出す動きのことで、実際に中村憲を中心として岡崎、香川真司(C大阪)の3枚が横方向にスライドしながらポジションを変え、ここに玉田の上下方向の動きが加わった流動性の高い前線のコンビネーションは相手のマークをずらすのに十分なものがあった。もちろんフィンランドの中盤の緩さもあったのだが、前線の選手のほしいタイミングで遠藤保仁(G大阪)を起点とした縦パスが出続けており、攻撃の形はよく作れていたと言える。
 この前線の4枚の流動性は、たとえば香川の「今日は運動量を意識して、動こうと思っていました」という言葉や、動きの判断は岡田監督から任されていたという中村憲の「今日はトップ下だったので、どこでも行こうと思っていました。自分が顔を出せば、オフェンスで数的優位になりますし…」という言葉から判断するに、合宿で繰り返し続けてきていた攻撃練習の成果のようである。そして、これが岡田監督が述べている「ボールをいかに動かせるか」というテーマであったと考えられるのである。そういう点では、戦前の期待通りの成果が出ていたのではないかと思われる。

この試合はフィンランドの仕上がりの悪さもあって、一方的な試合になった。ただ、設定していた課題に取り組むという点では日本にとって意義深い試合になったのではないかと考えている。少なくともこれまでの合宿で取り組んできたいくつかの練習が、実戦の中である程度の形を見せていたためである。
戦術の進展具合を確認できた試合の中で、うれしい副産物が「計算できる選手の発掘」であろう。岡田監督は「今まで出場機会がなかった選手のなかで、十分計算できるプレーをしてくれた選手が何人かいた。試合の2日前に帰ってきてすぐ試合をする海外組のポジションに十分取って代わる力を示してくれた。うれしい誤算だった」と、試合後に述べている。これは2得点の岡崎、1得点の香川のことである可能性が高く、特に岡崎に関しては守備面でもハードワークできるという点で高い評価を与えられる試合内容だった。岡田監督にとっては、欧州組のコンディション不足というリスクを回避できる選択肢が増えたわけで、そういう点でもこの試合の収穫は大きいと言える。

選手個々が取り組んでいた課題についても言及しておこう。
手術を終えた直後であり、蹴る感覚を戻している最中であると話していた田中マルクス闘莉王(浦和)は、試合前日の公式練習後に「試合の中で自分のプレーを出せるかどうか、そこはやりたい」と口にしていた。おそらくそのプレーの1つが、50m前後の中長距離のパスである。セーフティーに行きたいという意図もあったのかもしれないが、前半は闘莉王を起点としたフィードが目立っていた。前後の距離感にばらつきを感じさせており、まだ100%の精度とは言い難いものがあったが、そうした感覚を実戦の場で試せたのは闘莉王にとってはプラスだったはずである。
しかしこれによって遠藤に入るパスが少なくなっていたのも事実。闘莉王自身は「フルで行くつもりだった」と述べているが、その闘莉王を後半55分に下げたのは、遠藤により多くボールを触らせるためではなかったのかと考えている。闘莉王に代わって投入された高木和道(G大阪)は、ルックアップした直後のファーストチョイスとして遠藤を見ることが多く、実際にパスを出していた。
遠藤は後半に入ってボールタッチの回数が増えたのでは? との問いかけに「相手の中盤が緩くなったこともある」と述べていたが、いずれにしてもボールに触る回数自体は増えていた。この試合の目的の1つとして、遠藤の試合勘を戻すという側面があったのだが、そうした目的を考えれば、闘莉王に対する交代采配は理にかなっていた。もちろん中澤佑二(横浜FM)と高木のセットを試せたことも評価できる。
後半57分で3点差がついたことあり、72分の内田篤人(鹿島)以降の交代は選手を休ませる意味合いが強かったのだろう。その中でも特に内田は指宿合宿からの招集組で、中村憲と共にここまでの2試合を先発フル出場して働き続けた選手の1人である。内田に休息を与えられたのは、大量得点できたことによる副産物だったと言える。

この試合は、表層的な5得点1失点という結果はもちろん、それぞれが設定していた課題に対してそれぞれが手応えを感じる結果となっていた。オーストラリア戦(2/11@横浜国)につながる成果も少なくはなく、バーレーン戦での悪い流れを断ち切るきっかけになったのではないかと考えている。この試合で手にしたいい流れを、しっかりとオーストラリア戦につなげてほしい。

以上

2009.02.05 Reported by 江藤高志
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