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【J2:第44節 水戸 vs 横浜FC】レポート:きらめく個の力を擁して水戸は最後まで攻め抜いたものの、ホーム最終戦を勝利で飾れず。横浜FCの組織力と都並監督の強気采配に屈した(08.11.29)

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11月29日(土) 2008 J2リーグ戦 第44節
水戸 2 - 3 横浜FC (13:04/笠松/5,573人)
得点者:20' 難波宏明(横浜FC)、48' 西野晃平(水戸)、53' 難波宏明(横浜FC)、84' アンデルソン(横浜FC)、89' 荒田智之(水戸)
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 9月14日第35節鳥栖戦の試合前、鳥栖・岸野靖之監督から「なぜ水戸はパスをつながず、ロングボールに頼るようになってしまったのか」という言葉を投げかけられた。その1ヶ月前に岸野監督と話をした際、水戸のパスを大切にする攻撃的なサッカーを賞賛していた。だからこそ、水戸の豹変ぶりを残念がっているようであった。

 攻撃サッカーを標榜してスタートした今季の水戸。前線から激しくプレスをかけ、ボールを奪ったらパスをつないでスピーディーに攻撃を仕掛ける。守備を安定させることから入った昨季までとは変わった姿を見せてくれた。第1クールこそ結果は出なかったが、第2クールにパク・チュホが加わったことで中盤で起点ができ、主導権を握る試合が多くなり、勝ち星を重ねていった。その中で荒田智之、赤星貴文、パク・チュホといった個が圧倒的な存在感を示すようになる。

 そうしたきらめく個を水戸はうまく生かしていった。特に前線の荒田の飛び出しは相手に脅威を与え、前線にシンプルにボールを入れる攻撃が効果的となり、試合ごとにロングボールが多くなっていった。それが奏功したのが、ロングボールから抜け出した荒田の2つのゴールで勝利した第38節仙台戦だ。だが、そのサッカーには功罪があった。ロングボールを蹴り、中盤を排除することでリスクを負わずにすむ反面、ただボールを前に送る単調なサッカーになっていき、攻撃に厚みができなくなっていった。それは今季の水戸の目指すサッカーとは反するもののはず。仙台戦を境にチームの動きは停滞していき、その後の成績は1勝1分4敗。第3クールに入ってから自分たちのサッカーを見失ったツケが今になって表れていると言えるだろう。

 ホーム最終戦となる今節でも水戸は精彩を欠いた。序盤こそ勢いよく攻め込んだものの、15分を過ぎて試合が落ち着くと、横浜FCのパスワークに翻弄されてしまう。20分に右サイドからのFK、三浦淳宏のキックを難波宏明にフリーで合わせられて先制を許したのをはじめ、24分には左サイドからクロスを入れられ、根占真伍がボレーシュート。26分にも御給匠のポストプレーから右サイドに展開され、太田宏介のクロスのこぼれ球を難波にシュートされる。2本ともゴールマウスから逸れたものの、ゴールを脅かされ続けた。攻めても「ロングボールばかり」(パク・チュホ)で横浜FCの組織的な守備を崩すことができないまま前半を終えた。

 ただ、今季の水戸の特徴は「個の能力が高いこと」と「ゴールを狙う意識が高いこと」である。それが後半に披露されることとなる。48分に赤星のミドルシュートのこぼれ球を西野晃平が押し込み、同点に追いつくと、右MFだった赤星が「自分の判断で」(赤星)左MFへ移動。すると赤星にボールが集まりだし、さらに赤星が切れのある動きを見せ、横浜FC守備陣を切り裂きチャンスを演出。そこにパク・チュホが絡み、2人の高い技術を駆使して水戸は厚みのある攻撃を繰り出すようになっていった。「パク・チュホと赤星が切れていて捕まえ切れなかった。2人ともいい選手だなと改めて思った」と敵将に言わしめるほどの動きを2人が見せたことで、水戸の猛攻が続くこととなった。53分に本間幸司のキックミスから失点し、84分にもカウンターから失点を喫すものの、それでも最後まで水戸はゴールを狙う意識を持ち続け、試合終了間際にPKを獲得。荒田が右隅に蹴りこみ、1点を返した。結局、試合に敗れはしたものの、「最後のゴールが今季の水戸らしさだと思う」と本間が語るように、その1点こそ今季の水戸の集大成と言っても過言でないだろう。

 1年間攻撃サッカーを貫いた水戸。昨季までの「守備」を重視したサッカーから「攻撃」を重視したサッカーへ確かな変貌を遂げた。ただ、パスサッカーからロングボールサッカーに変更してしまったように、現段階では攻める姿勢は身についたものの、まだチームとしての攻める方法や手段を見受けられないのも事実だ。個だけでなく、チームとして攻撃をいかに繰り出すか。それが水戸が次のステップに歩みを進めるために必要なものだろう。今年見せた「変化」から、次は「進化」へ。その道筋を次節・山形戦(12/6@NDスタ)で見せてくれることに期待したい。沼田邦郎社長は試合後のセレモニーでこう語った。「すでに09年はスタートしています!」と。次節・山形戦で水戸は09年型フットボールの片鱗を見せてくれるに違いない。

 横浜FCにとっては難しい試合であった。今週25日に都並敏史監督の解任が発表され、チーム内に動揺が走ったからだ。しかし、「選手たちがプロ意識を持ってしっかり戦ってくれた」と都並監督が選手を称えたように1人1人が高い集中力を見せ、勝点3をつかみとった。前半は攻守においてバランスの取れたサッカーで水戸を圧倒。それは今季の横浜FCの目指したサッカーであった。後半は水戸の赤星とパク・チュホにてこずり、押し込まれる時間が続いたものの、最後まで粘り強い守備を見せて対応してみせた。

さらに都並監督の強気の采配も当たった。後半は水戸の猛攻を受けたものの、73分には三浦淳をトップ下に入れたダイヤモンド型に変更。そして80分には三浦淳をアンカーの位置に入れ、守備を固めるのではなく、中盤にパスの起点を作ることでリズムをつかみ返すという「攻めるというメッセージ」(都並監督)を込めた采配をふるったことでチームは勢いを取り戻すことに成功。中央で起点ができたことでサイドのスペースを狙えるようになり、84分のカウンターからのゴールにもつながることとなった。
「チームは今、非常にいい状態でやれている」と三浦淳は笑顔で語る。下位に低迷、さらに監督の解任が決まったものの、チームは1つのコンセプトの下、戦い方をぶらさずにやってきた。それがシーズン終盤になってやっと実になっているという実感が選手たちのプレーぶりからうかがえる。それは6戦負けなしという結果が何よりも物語っている。
『都並丸』での航海も残り1試合、最後までしっかりと帆を張って前進を続けるに違いない。それがきっと輝く未来へとつながっていくはずだ。

以上

2008.11.29 Reported by 佐藤拓也
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