9月3日（水） 2008 ヤマザキナビスコカップ
清水 1 - 1 Ｇ大阪　（19:00／日本平／8,013人）
得点者：10' 二川孝広（Ｇ大阪）、54' 枝村匠馬（清水）
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痛めていたMF二川孝広の右足が輝いたのは10分のことだった。ペナルティエリア付近でもらったフリーキックのチャンス。右足が完治したとは言い切れない状態だったため、基本的にはコーナーキックを含めたセットプレーのキッカーは務めないはずだったが、「近距離のFKは蹴れと、監督に言われていた（MF二川）」こともあり、ボールのもとへ。日本代表によって離脱中のMF遠藤保仁に次ぐ“名手”は、落ち着いて右足を振り抜き、低い弾道でゴール左下を突き刺した。

『アウェイゴール』が適用される今大会において、ナビスコカップ制覇を実現した昨年も、そして今年もそれを活かして勝ち上がってきたG大阪だけに、その重みを感じて挑んだアウェイ戦だった。合言葉は『ゴール』。西野朗監督がスターティングメンバーにケガあがりのMF二川を戻したのも、ベンチに約４ヶ月ぶりの復帰となるFW播戸竜二や調整不足を指摘されてきたFWロニーを座らせたのも、『ゴール』に対する決意の表れ。MF二川の先制弾は、そんな全員の思いを結実させた。

前半はこのMF二川の先制弾も含め、攻守に機能を見せた。その軸となったのがボランチのMF明神智和とMF橋本英郎。守っては相手の攻撃を作る清水MF枝村匠馬らをしっかりと身体を張って押さえ込み、両サイドへのケアも怠らない。また攻撃においてはポゼッションサッカーの中心となり、前線の４人をサポートし続けた。だが、『追加点』が奪えない。そのうち、ビハインドを追いかける清水は徐々に攻撃に勢いを増し、それに伴いMF明神、MF橋本を含めG大阪に消耗がみられ始める。併せて、清水の両サイドに対する対応にも遅れが見え始め、清水に形勢が傾いていく。前半こそ０−１で折り返したものの決してセーフティな状況ではないことは、明らかだった。

「ここからもう１点という意識を持っているか？獲りに行け！」
ハーフタイムに飛ばされた西野監督のゲキも虚しく、54分、清水のMF枝村にゴールをこじ開けられ、１−１に。これを受け、どうしても追加点の欲しいG大阪は西野監督が早めに動く。60分にはFW山崎雅人に代えてFWロニーを、67分にはMF寺田紳一に代えてMF倉田秋を、更に73分にはMF二川孝広に代えてFW播戸を投入。次々と前線の顔ぶれを代えて、攻撃の糸口を見出そうとする。実際、この交代が功を奏し、カウンターでのチャンスから、持ち前のドリブルとパスセンスを活かしたMF倉田が前線で勢いを見せゴールチャンスを作り出すが、フィニッシュに今ひとつパワーが感じられない。80分にはゴール前中央でのFW播戸の粘りからMF倉田に決定的チャンスが訪れるも、狙いすませて放ったシュートはわずかにゴール右に流れてしまう。

一方、守備においては、前半終盤以上に消耗がみられ、後手を踏むシーンも多々。両サイドを簡単に突破されるシーンも増え、セカンドボールも拾えず苦しい時間帯が続く。それでも「相手に押し込まれた中でもいくつかうちもカウンターでチャンスを作れていたので、ここを守り切れば、という気持ちで集中してやれていたと思う」とDF中澤聡太が話したように、最後まで守備陣の集中は途切れず。ロスタイムに、清水の右サイド、MFマルコスパウロのクロスにあわせたFW原一樹のシュートが右ポストを叩いた直後、試合終了のホイッスル。 引き分けという結果ながら、『アウェイゴール』をきっちり手にして第２戦へと繋げた。

90分を通してみるなら、G大阪の勢いが完全に復活したとは言い難い。結果的には奪ったゴールも，FKでの１点のみ。守備の脆さを露呈したシーンもいくつか見られた。それでもMF遠藤不在の中、ピッチに立つ誰もが、泥臭く、激しく、持ちうる力の精一杯で『勝ち』に拘る姿勢を見せたのは事実だ。加えて、FW播戸の復活など、プレー面のみならず、メンタル的にも頼もしい存在が戻ってきたことは、目には見えないが、確かな勢いをチームに呼び戻しつつある。それを本物にするために、欲しいのは『勝利』。第２戦、それが手に入れば、連覇のかかる決勝への道が拓けるのみならず、G大阪完全復活の大きな足がかりになるはずだ。だから、勝たなければいけない。心強き、ホームスタジアムで、勝たなければ。

以上

2008.09.04 Reported by 高村美砂