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【第87回天皇杯3回戦 山形 vs 鹿屋体育大学】プレビュー:3度目のアップセットを狙う堅守速攻の鹿屋体育大。山形はその壁を崩し、ゴールをこじ開けられるか?(07.10.07)

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10月7日(日)第87回天皇杯3回戦 山形 vs 鹿屋体育大学(13:00KICK OFF/NDスタ)
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●スターティングメンバーはニュース&レポートに掲載します。
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 4年連続7回目の出場となる鹿児島県代表の鹿屋体育大学は、松江での天皇杯2回戦を終えると翌週には秋田わか杉国体にチームの主力メンバーを送り込み、先月30日に日程を終えたあとも地元に戻らず、3日から山形で調整を続けている。

 九州大学リーグ1部では前期8チーム中6位といまひとつ波に乗れていないが、昨年は2回戦で敗退した天皇杯で、今年は2度のアップセットを起こし3回戦進出を果たした。1回戦では、総理大臣杯を制し唯一の大学枠で出場した流通経済大学を1−1からPK戦の末に、2回戦では鳥取県代表・JFLガイナーレ鳥取を3−1で下した。特に、流経大との試合は90分間でシュート数が4対19、120分間でも7対23と圧倒的に攻め込まれながら、GK古田典之を中心に失点を1に抑えるしたたかな試合運びを見せ、全国のサッカーファンの脳裏に「鹿屋」の名を強烈に刻み込んだ。

 ふだんは4−4−2で戦っているが、「相手のサイドが強いとどうしてもギャップができる。スペースを相手に与えないということが大事」(井上尚武監督)と天皇杯本戦を戦うにあたり採用したのが、スウィーパーを置く5−3−2システム。堅守速攻を徹底したこのスタイルで流経大に勝てたことで自身をつかみ、この大会に懸けるモチベーションも上がっている。「天皇杯の目標が『Jリーグのチームと試合をすること』だった。それを実現できてチームの士気は高い」(キャプテン・DF吉良仁志)。狙うは3度目のアップセットだ。

 失点をしない目的で導入したこのシステムで持ち味を増しているのがFW比嘉啓太だ。スピードに乗ったドリブルと高い決定力を特長とした、那覇西高時代にはU−17日本代表の経験もあるエースストライカー。比嘉本人も「自分はカウンターで裏へ入るほうが合っている」と2試合で3得点を挙げた自身の好調ぶりを分析しているが、山形・樋口靖洋監督も「小柄だけどスペースに出るタイミング、特にカウンターのときに動き出すタイミングを持っていて、シュートで終われる選手」と警戒する。流経大から挙げた1点も、FC東京・赤嶺真吾の弟で10番を背負うMF赤嶺佑樹からのパスをスペースで受け、ゴールまで人で持ち込んだもの。鹿屋体育大としては、縦のボールを入れたあと、サポートの押し上げをいかに早くし、比嘉が攻めきれないケースでいかに攻撃のバリエーションを確保するかという課題もあるが、失点をしないことが何にも増して優先される。「僕らは相手が一番やりたいことを全部消すということ。消せばチャンスがある。勝負だから、そこは徹底してやりたい。相手がプロであろうと何であろうと」と井上監督は1、2回戦と戦い方に何らブレがないことを強調している。

 J2チームにとっては、リーグ戦も含めると今回の天皇杯3回戦が3連戦の初戦にあたる。しかも、中2日で戦うのが仙台とのダービーマッチということもあり、さらに、J1昇格へは残り全勝して幸運を待たねばならないチーム事情もある。この3回戦とどう向き合うか、難しくデリケートな判断が要求される。リーグ戦への影響を考え、主力を温存するチームもあるようだが、「天皇杯はトーナメントだから負けたら終わり。J1にチャレンジして倒すという選手のモチベーションもあるし、自分たちの存在感を示すという意味でもしっかりと戦いたい」(樋口監督)と、山形はリーグ戦とほぼ同じメンバーでこの一戦に臨む方針だ。

 この試合最大の焦点は、リーグ戦で得点力不足に悩まされている山形が、守備固めを徹底する鹿屋体育大を攻略できるか否か、という点だろう。3日後に仙台戦を控えていることを考えれば、90分できっちりと試合を終わらせること、欲を言えば、早めの先制、追加点でゲームの展開自体を楽なものにするのが理想だ。しかし、勝ち負けは一方のチームの理想で決まるものではない。相手がリトリートするだけにボールを持つ時間は確保できるが、それが得点という形に結びつかなければ、山形は時間の経過とともに苦しい状況に追い込まれることになる。J2にはスタイルの多少の違いはあっても、ここまで徹底して引いてくるチームはいない。「やってみないとわかんない、そればっかりは」というDF小原章吾の言葉にこめられているのは謙遜ではなく、偽りのない実感だ。トレーニングのなかでは盛んにサイドチェンジを使って相手のギャップを突き、勝負のパスで高い位置で起点をつくったあとは少ないタッチ数で崩していくパターンを繰り返しているが、「最終的には個人のドリブルでの打開であったり、ミドルレンジからのシュートで相手を引き出す」(山形・樋口監督)という個人の精度の問題が大きくかかわってくる。

 その山形が最大の得点チャンスと見ているのがセットプレーだ。しかし、鹿屋体育大もGKを含めた先発5人が180cm超と高さでは引けを取っていない。山形は高さ以外にもボールの精度や動き出し、また、早いリスタートで相手が整う前に揺さぶりをかけるなど、あらゆる手段を使って「プロとアマチュアの差」を結果に結びつけたい。
 
 ボール支配率は圧倒的に山形優位となりそうだが、相手の攻撃回数が限られるとは言え、リスクマネージメントには一瞬の緩みも許されない。ボールの失い方が悪ければバランスを崩したなかで一気に裏のスペースを突かれ兼ねない。と同時に、4−4−2に対して5−3−2とシステム的にはまっていないため、切り換えの瞬間に後手を踏む危険性も十分にある。自陣で数的優位を保つことはさほど難しいことではないが、確実にマークを受け渡すことや、1対1でミスをしないことなど、守備ではパーフェクトに近いパフォーマンスを追求しながら、攻撃ではシュートで終わること、マイボールのリスタートを得る確率を上げる必要がある。先制点の行方が勝敗を大きく左右することは言うまでもない。

 遡ること9年。第78回天皇杯2回戦を山形は1−0と勝利するが、その対戦相手・明治大のメンバーのなかに、現在、チームキャプテンとして山形を引っ張る宮沢克行がいた。結果的に、その試合が大学生活最後の試合となったが、翌99年にはJ2への新規参入が決まっていた山形に対し、「『Jには絶対負けねえよ』と闘争心を燃やしていた」と当時を懐かしく思い返しながら、「大学は、場合によっては社会人よりも危険なチーム」と警戒感も隠さない。一方、当時の山形はこの明治大戦の勝利がなければ、続く3回戦でG大阪を撃ち破る歴史もつくれなかったことになる。

 そのチームの置かれた状況やカテゴリーは違っても、勝者のみが次へ進めるというルールは変わらない。Winner takes all. 夢の続きが欲しければ、奪い取るしかない。

以上

2007.10.06 Reported by 佐藤円
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