6月17日(日) 2007 J2リーグ戦 第22節
福岡 2 - 0 草津 (13:04/博多球/7,711人)
得点者:'18 アレックス(福岡)、'84 久藤清一(福岡)
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博多の森が大歓声で包まれたのは84分のことだった。左サイドでボールを奪った柴村直弥から布部陽功へ。そして布部が狙いすまして最終ラインの裏へとボールを送る。待ち受けていたのは久藤清一。草津DFの間を反身の態勢からボールを前方へ流して抜け出すと、飛び出してくるGK本田征治の鼻先でボールをつま先でつつく。そして、本田の股間を抜けたボールがゴールへと吸い込まれた。福岡が我慢の末に奪った2点目。勝利を確信するゴールだった。
試合は予想通り、中盤でつぶし合う展開で幕を開けた。福岡の狙いは奪ったボールを両サイドのスペースへと送りこんで縦への突破を仕掛けること。そして草津は、奪ったボールをシンプルにラインの裏へ送り、そこへ2トップ、あるいは2列目の選手が斜めに走り込む。試合をリードするのは福岡。7分には久永辰徳の突破から得たチャンスにアレックスが、14分には再び久永の突破から布部が、それぞれ決定的なシュートを放つ。
そしてゴールネットを最初に揺らしたのも福岡。時間は18分のことだった。立ち上がりから再三好機を演出していた久永がドリブルでペナルティエリアへ。対峙していた山崎渡の足が久永の前方をふさぐ。倒れ込む久永。その瞬間、ホイッスルが鳴り響いた。微妙な位置だったが主審が指す指の先はペナルティスポット。そして、これをアレックスが確実に決めて先制点を奪うことに成功した。3試合ぶりのゴールに博多の森に安堵感が漂う。
しかし、ここから試合の主導権を握ったのは草津だった。櫻田和樹を中心に高い位置からボールを追って中盤を制圧すると、秋葉忠宏がダイアゴナル(対角線の)パスを両サイドに配る。起点を作るのは左SBの吉岡聡。高い位置でボールを受けて福岡ゴールへと迫った。後手を踏んだ福岡はボールを後追いするばかりで草津にプレッシャーを与えられない。草津がフィニッシュの部分に課題を抱えていることもあって、福岡は何とか最終ラインで跳ね返してはいたが、試合の流れは間違いなく草津にあった。
後半も草津ペースは変わらない。「2点目が重要」(リトバルスキー監督・福岡)と指示された福岡だったが、勝てない試合が続いているせいか低い位置にとどまってしまい、セカンドボールを拾えない苦しい展開に追い込まれた。しかし、それでも福岡は、ゴール前に人数を集めて跳ね返すという泥臭いスタイルで辛抱強く耐えた。そんな福岡が奪った終了間際のゴール。それは我慢し続けた福岡へのサッカーの神様からのプレゼントだったかもしれない。
中盤でボールを追いこんで、奪ったボールを両サイドへ展開した草津は、ゲームの組み立てという点では狙いどおりだった。悔やまれるのはそこから先の段階を詰め切れなかったこと。植木繁晴監督(草津)は、「もう少しきちっと奪ったボールをひとつ、ふたつつなげると、自分たちのポゼッションが生きてくると思うが、あまりにもミスが多すぎた。まだうちのチームには足りないものがたくさんあるということを見せてもらったゲーム」と試合を振り返った。
「この試合での何よりの収穫は勝点3。我々にとって本当に大切な勝点だった」とはリトバルスキー監督(福岡)。内容には多くの課題が残ったが、今の福岡にとって何よりも必要だったのは勝ち点3。素直に勝利を喜びたい。そして改めて存在の大きさを示したのが布部、久藤、久永のベテラン3人だった。「賢くプレーするという面で若い選手は彼らから見習わなければいけない」(リトバルスキー監督)。奇しくも、この日は「父の日」。3人のお父さんプレーヤーの活躍が福岡に勝利をもたらした。
以上
2007.06.17 Reported by 中倉一志
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