6月17日(日) 2007 J2リーグ戦 第22節
水戸 3 - 0 愛媛 (14:04/水戸/2,298人)
得点者:'15 吉本岳史(水戸)、'17 鈴木良和(水戸)、'43 金基洙(水戸)
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ただの1勝ではない。水戸にとって今季ホーム初勝利、そしてホーム通算50勝を達成。それに加え、今季これまで苦しみながらも貫いてきたアクションサッカーが成就しての完勝だけに大きな価値がある。結果だけでなく、観衆を魅了してやまないアクションサッカーでの勝利。「守備」のイメージの強かった水戸だが、この試合でそのイメージは払拭されたことだろう。「人もボールも動くサッカー」(前田監督)がついに花を開くこととなったのだ。
そのアクションサッカーを支えていたものこそ、ハードワークである。厳しい日差しが照りつける中での試合となったが、序盤から激しく動き回る水戸が主導権を握った。特に「ウチのFWの運動量はすごい」と前田監督が胸を張るように岩舘、塩沢の2トップが前線で相手にプレスをかけ続け、愛媛に自由を与えず。やや下がって相手の司令塔である青野を封じたことで愛媛の攻撃を完全に断つことに成功した。そして、攻撃面でもボールをうまく引き出す動きでチャンスを作り出していった。
15分には連動したプレスでボールを奪った鈴木和から右サイド金澤へ。金澤のクロスに飛び込んだ塩沢がペナルティエリア内で倒され、PKを奪取。キッカーの吉本が一度はGKに止められるものの、こぼれ球を冷静に押し込んで待望の先制点を挙げる。その後も攻め手を緩めない水戸は17分にも華麗なパス回しから最後は鈴木良が追加点を奪い、43分にも左サイドを崩し、中央でボールを受けた金基洙がミドルシュートを叩き込み、勝利を確実にする3点目を加えることに成功した。
前半、「ほぼ完璧な内容」(吉本)で水戸は愛媛を圧倒した。その中心として君臨したのが小椋である。「マムシ」と呼ばれるように密着マークが得意で守備に定評のある選手だが、日々攻撃面で成長を見せており、この試合ではゲームメイカーとしてプレー。そして、2列目から果敢に飛び出していくなど自信に満ち溢れるプレーでチームを引っ張った。切れ味抜群のスルーパスで2点目を演出するなどU-22日本代表の名に恥じないプレーを連発した。
また、吉本の存在も大きい。彼が復帰して以来、チーム全体に落ち着きが生まれている。平松や金基洙が思い切りのいいプレーができているのも吉本がしっかりとコーチングをしているからこそ。「横に吉本さんがいるので、安心してプレーができる」と金基洙も吉本の存在の大きさを手放しに認めている。真ん中に1本の芯が通ったことで「チームが一つになってきた」(前田監督)ことが連勝の秘訣である。3点リードした後半は大味な試合となり、何度も訪れた決定機を決めきることができないという課題を残したが、そんな中でも守備の集中を切らすことなく完封。攻守が噛み合った水戸の圧勝で試合は終わった。
クラブ史上初の3連勝を狙った愛媛であったが、水戸のアクションサッカーを前にアグレッシブさを欠いた。特に運動量で水戸に圧倒され、ペースを握ることができなかった。この試合で顕著に表れたのが、青野を抑えられると攻撃の形が作れなくなるということ。水戸のダブルボランチと2トップに青野が抑え込まれたため、攻め手を失うこととなってしまった。「攻撃は今やっていることを続けたい」と望月監督。いかにパスの出所を増やせるかが今後の課題となるだろう。
そして、水戸。試合後、宮田裕司新社長のクラブ方針についての記者会見が行われた。そこでは今後のクラブのビジョンの詳細が話されたが、その中で「今日の2点目は水戸の目指すサッカーを具現化したもの」と語った。村松からのクサビのパスを受けた塩沢が軽やかなステップで前を向き、フリーの小椋へ。そして、小椋から岩舘にスルーパス。ゴール前でボールを受けた岩舘は冷静にゴール前へと折り返す。そこまでの速いボールの動きに愛媛DFはついてこられず、ゴール前でフリーでボールを受けた鈴木良が無人のゴールへと流し込んだ。テンポのよいパス回しで相手ディフェンスを完全に崩してのビューティフルゴール。今までの水戸では考えられないゴールだが、今後はこれこそが、「水戸らしい」ゴールになるのである。2011年の昇格に向け、チームは育成部門から一貫したチーム作りをしていくことを発表。その根幹になるものこそ、「今の前田監督が目指している攻撃サッカー」だと宮田社長は語る。そのためにも今後も今のサッカーを貫いてもらいたいと宮田社長は抱負を語った。『夢』に向かって確かな手応えをつかんだ勝利と言っていいだろう。
しかし、だからといって、これが「夜明け」ではない。まだ、わずか3勝であり、順位も最下位ということを忘れてはいけない。シーズンは長い。まだこれからいろんな状況がある中でいかにこうした戦いをしていくことができるかが重要だ。「夜明けが近づいている」ぐらいの表現にとどめておいた方がいいだろう。水戸が求めているものはもっともっと大きなものなのだから。
以上
2007.06.17 Reported by 佐藤拓也
J’s GOALニュース
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