コロンビア戦を終え日本に戻った。そして、このコラムは成田空港のラウンジで書き上げた。実はこのまま成田で乗換えて、ミャンマーに向かう。ヤンゴンでセレッソ大阪対ミャンマー代表が戦う国際親善試合「ヤンマーカップ」の視察のためだ。
今回のFIFAワールドカップブラジル大会において、残念ながら日本代表チームはグループステージを突破することができなかった。眠い眼をこすりながら、最後の最後まで熱い声援を送っていただいたファン・サポーターの皆様には心から感謝を申し上げたい。皆様のご期待に応えていくためにも、日本サッカー協会(JFA)とともに今回の総括をしっかりと行い、Jリーグのさらなるレベルアップ、JFAと連携した育成システムの充実、スタジアムをはじめとする環境の整備など、様々な改革の歩みを止めることなく力を尽くしていこうと思う。
写真はブラジル滞在中にずっと握りしめていた「旅のしおり」だ。後段のMEMOのページに試合結果を書き込み続けていた。移動が続く道中ではインターネットに接続できない場所も多く、あれこれ考えるには手書きのメモも結構便利なものである。
この「旅のしおり」を眺めながら、あれこれと考えていた。サッカーに勝利の女神がいるとしたら、女神は最後まで日本チームには微笑んでくれなかった。しかし、女神は何度か「ウインク」くらいは送ってくれていた。コートジボワール戦での「先制点」。ギリシャ戦の「数的優位」。そしてコロンビア戦は「前半の同点弾」に加え、決勝トーナメント進出の条件だった「ギリシャの優勢」など。こうした「ウインク」を一つでも「笑顔」に変えられていたらと思うものの、これが現実。「こうしたいくつかの重要な局面において、自分たちで局面を打開していく力を持たなければ」と思うブラジルだった。
メモを見ながらの単純な集計であるが、今回のワールドカップに参加する南米6か国のうちエクアドルを除く5か国がグループステージを突破(ブラジル、チリ、コロンビア、ウルグアイ、アルゼンチン)。南米とほぼ時差の変わらない北中米・カリブ海地域4か国のうち、ホンジュラスを除く3か国も同様に突破(メキシコ、コスタリカ、アメリカ)。ホームに近いと考えられる合計10か国のうち実に8か国がグループリーグを突破しているのだ(突破率は80%)。一方でアジアは、日本を含め参加4か国すべてがグループステージ敗退。ヨーロッパ地区もアフリカ地区も突破率は50%を切っている。ぎりぎりの戦いが繰り広げられるワールドカップにおいては、いかに地の利が大切であるかがわかる。逆に言えば、アウェイのチームにとっては、心身ともにコンディション調整が重要ということだろう。
また、グループステージ突破には、初戦がきわめて大切だと言われてきたが、ラウンド16に進出した国のうち、初戦に勝利したチームは実に12か国、75%が初戦に勝利しているのだ。その他、引き分けが1か国。初戦に敗れた後に突破することができたのは3チームのみだった。(ウルグアイ、ギリシャ、アルジェリア)。初戦の90分のために、4年間の準備があるといっても過言ではない。
そして、勝利のためには先制点が重要視されるが、初戦を勝利してグループステージを突破した12か国のうち9か国が初戦で先制点を挙げている。これも75%である。だとすると、日本は初戦のコートジボワール戦で先制点を挙げたにもかかわらず、最後までゲームをコントロールできなかったとが本当に悔やまれる。しかし、これも統計どおりにはいかない現実だ。
さあ、後悔はこのくらいにして、次の一歩を踏み出そう。「心・技・体」という言葉があるが、プレッシャーに打ち克つメンタリティや最後まで闘い抜く闘争心、ボールをコントロールする世界水準の技術、90分走り負けしないフィジカルなど改善要素は事欠かない。
個々の「心・技・体」に加えて、何より重要なのはチームとして結束し、自分たちで戦況を考え判断し軌道修正していく高い人間力の結集だろう。こうした要素を若い世代から育てていくには監督、コーチをはじめとした指導者の育成が不可欠だ。場合によっては日本の教育の在り方まで問い直さないといけないのかもしれない。また、全体のレベルを上げていくためには、選手のみならず、レフェリーの技量を高めていくことは不可欠だ。
そして、一番重要なのはJFAやJリーグによる将来を構想する力だろう。総力を結集して臨まなければならない。歩みを止めることはできない。私はチェアマンとして、Jリーグから日本代表の底上げを図っていこうと思っている。
これからもサッカーを愛する皆様のご協力をお願いいたします。