ギリシャとの戦いを終えて、サッカー日本代表は予選リーグC組最強と伝えられるコロンビア戦を残すのみとなった。ナタールからリオ・デ・ジャネイロを経由して、サンパウロで国内線を乗り継ぎ、第三戦の試合会場となるクイアバに向かう機内でこのコラムを書いている。ブラジルは国土が広く移動も大変だ。
写真はブラジルの航空会社TAM航空の機内誌である。航空便の航路図のページを撮影したものだが、日本で見慣れた地図と異なり、当然ブラジルが中心になっている。左のニューヨークと右のマドリード、下中央のサンパウロを結ぶと大西洋を挟んだ逆二等辺三角形になる。この位置関係を見れば、コロンブスがアメリカを目指したのも、ポルトガル人がブラジルに移住したのもうなずける。ちなみに、この地図には日本は表記されず、日本がいかに遠い所に位置するのか改めて実感する。
日本代表はこの第三戦を通じて、地球の裏側に位置する日本にどのようなメッセージを送ることになるのだろうか。
第三戦、クイアバのスタンドは隣国コロンビアの地の利を生かして数多くのコロンビアサポーターで黄色に染まり、完全なアウェイ状態になることだろう。また、赤道直下にあるコロンビアの選手にとって、クイアバの暑さはさほど問題ではないはずだ。決勝トーナメント進出を決めたコロンビアはスタメンの入れ替えが想定されるが、出番を待つ控え選手は飢えた狼のようにゴールを狙い自らをアピールするだろう。いずれにしても簡単に勝てる相手ではない。
これをお読みいただいている皆さんもそして私も、日本代表がコロンビアを圧倒し、ギリシャ・コートジボワール戦の結果次第ではあるが、「クイアバの奇跡」とか「最後まであきらめない事の大切さ」といった嬉しいメッセージが届くことを信じている。
また、考えたくはないが、これまでの2戦と同じような結果となった場合、「最後まで本来の実力が発揮出来なかった。」というメッセージになるのだろうか。または、三度目ともなれば「そもそも世界と戦える実力が無かった。」といったトーンになるのかもしれない。
今日、クイアバへ移動までの空き時間にリオの人気クラブ、「CRフラメンゴ」のクラブハウスを訪ねる機会を得た。このクラブはジーコが活躍したクラブとして有名だ。クラブ名称はClube de Regatas do Flamengoとあるように、レガッタクラブが起源で、湖のほとりにクラブハウスを配置している。サッカーはこのクラブではむしろ後発なのだ。
クラブハウスではレガッタクラブというだけあって水球に興じる人もあれば、赤と黒のエンブレムの前でサッカーに熱中するシニアの方々の笑顔もある。ここにはアディダスのオフィスもあり、世界のメディア関係者にオフィスを開放しワールドカップの情報発信基地にもなっていた。
私は彼らを見ながら、別の思いを抱いた。
そうだ。サッカーは本来、悲壮感を漂わせて行うものではなく、ゲームに熱中し、没頭し、興じ、楽しむものなのだ。ストリートサッカーしかり、ビーチサッカーしかり、放課後のサッカーしかり。だから、日本代表には世界の檜舞台で最高の相手と思いきりサッカーに興じる喜びを表現してもらいたい。そして、早朝からテレビの前やパブリックビューイング会場で日本の勝利を願って声援を送り続ける多くのファン・サポーターにサッカーの楽しさ、素晴らしさを伝えてほしい。
それこそが、世界の頂きに挑戦し続ける日本サッカー界にとって最高のメッセージなのだから。