2023明治安田生命J2リーグはすべての日程が終了し、J1昇格プレーオフに出場するチームが確定した。2018年、2019年、2022年はJ1の16位チームも参加する「J1参入プレーオフ」が開催されていたため、J2クラブのみで行われるプレーオフは実に2017年以来6年ぶりとなる。今回は、出場4チームの今季後半戦のスタッツをもとにそれぞれのチームの特色を紹介し、過去のJ1昇格プレーオフの結果も振り返りながら展望を行う。
※J2リーグ 第22節~42節のデータを使用
■過去のJ1昇格プレーオフ
上図は2012年から2017年に開催されたJ1昇格プレーオフのトーナメント表だ。J2リーグの年間順位3位~6位の4チームが出場する大会だが、2014年はJ2で5位に入った北九州がJ1ライセンスを持っていなかったため、3チームで開催された。全6回での最多出場チームは千葉の4回。千葉は決勝を2度戦っているが、どちらもJ1昇格は果たせていない。今大会に出場する4チームのうち、清水はJ1参入プレーオフも含めプレーオフは初出場となる。
リーグ戦の順位とプレーオフの勝ち上がり状況をみると、2012年から2014年までの3大会は8試合中6試合でリーグ戦の下位チームが勝利を収める「下剋上」が発生していたものの、以降3大会での下位チームの勝利は9試合中1試合のみと、波乱は少ない傾向となっている。J1昇格を果たしたチームのリーグ戦の順位をみても、2012年から順に6位→4位→6位→3位→4位→3位と、直近3大会は4位以上のチームがJ1昇格を勝ち取っている。今大会でも3位の東京Vや4位の清水が順当に勝ち上がるのか、それとも5位の山形や6位の千葉がデータを覆すような結果を残すだろうか。なお、引き分けの場合はリーグ戦の順位が上のチームが勝ち上がるレギュレーションが採用されているが、これに該当したケースは6大会の計17試合で6回(準決勝4、決勝2)だった。
■2023J1昇格プレーオフ出場チームの後半戦スタッツ
※セットプレーからの得失点数:CKまたはFKから5プレー以内によるもの
※スルーパスからの得失点数:スルーパスから3プレー以内によるもの
※PA外からの得失点数:CK/FKでの直接シュートを除くペナルティエリア外からのシュートによるもの
今季のリーグ戦を3位で終え、今回のJ1昇格プレーオフでもっとも優位に立つのは東京V。リーグ最少失点を誇る安定した守備がチームを支え、ラスト10試合は6試合の無失点を含む負けなしで締めくくった。今季後半戦のスタッツで目立つのは、「セットプレーからの失点の少なさ」と「先制後の勝負強さ」だ。後半戦では11試合で先制点を挙げており、先制した試合の結果は9勝2分と無敗(通年でも1敗のみ)。堅守を生かし、先行逃げ切りの形を確立している。プレーオフ出場チームの中でリーグ戦最上位である東京Vにとっては、すべての試合で「負けない戦い」を繰り広げられれば昇格にたどり着くだけに、リーグ戦同様の守備力を発揮できるかが昇格のポイントとなりそうだ。過去に出場した大会では、2017年は福岡に先制点を取られてそのまま敗戦となったが、2018年のJ1参入プレーオフでは2試合で先制点を奪って2回ともウノゼロ勝利を挙げ、J1との決定戦へ進出した歴史も持っている(決定戦ではJ1の磐田に0-2で敗戦)。
その東京Vと初戦で当たるのはリーグ戦6位の千葉。8月の第31節からの7連勝など、後半戦での怒涛の追い上げが実を結んだ。スタッツでは、勢いのある攻撃力が目立つ。後半戦の21試合中20試合で得点を挙げ、さらに12試合で複数得点を記録。後半戦での13勝はリーグ1位、得点数42は町田に次ぐリーグ2位の数字だ。今回のプレーオフでは、無得点で終わることがそのまま敗退を意味する状況(千葉はリーグ戦6位のため、準決勝・決勝とも引き分けの場合は敗退)に置かれているだけに、後半戦同様の攻撃陣の活躍が求められる。特に武器となっているのが、ペナルティエリア(PA)外からのシュートだ。後半戦のみで126本のシュート、11点のゴールを記録し、これはどちらもリーグ1位となっている。PA外から4点を挙げているドゥドゥ、3点を挙げている見木 友哉や風間 宏矢らが見せ場を作れるかが鍵になりそうだ。
最終節前までは自動昇格へ向けて優位に立ちながらも、最終節の結果で4位に転落してしまい、リバウンドメンタリティーが求められる清水。後半戦のスタッツを確認すると、スルーパスからの攻撃に特色を持っていることが分かる。スルーパスからのシュート数は69でリーグ1位、得点数は11で1位タイだ。トップ下として攻撃のタクトを振る乾 貴士と、抜け出しを得意とする中山 克広、北川 航也ら、前線選手とのコンビネーションがプレーオフでも発揮されるか。またセットプレーから9得点を挙げており、これもリーグ1位タイの記録となっている。特に、初戦の相手である山形はスルーパスやセットプレーからの失点が他チームと比べて多いため、清水にとっては狙いどころと言えるだろう。破壊力抜群の攻撃力でJ1昇格を狙う。
最終節に劇的な形で5位に滑り込んだ山形は「プレーオフ巧者」だ。J1参入プレーオフを含め、出場した3回のプレーオフはすべて初戦を突破、さらにいずれも下位順位からの「下剋上」の形となっており、上位の清水との一戦に向けてネガティブな意識はないはずだ。今大会もこれまでの再現となるだろうか。スタッツで目立つのは、先制した試合の結果が10勝1分という点だ。先制時の勝率を計算すると後半戦、通年のどちらもリーグ1位の高さを誇る。初戦では勝利が絶対条件と確実に得点が必要な状況のため「先制すれば勝てる」という得意の試合展開を披露したい。なお、山形と清水はともに前半15分までに先制点が決まる試合が非常に多く、このカードは序盤から目の離せない展開となる可能性も高い。
文章/データ提供:データスタジアム株式会社