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2022/10/26 18:00

2022明治安田生命J1リーグ データから見る優勝争いの行方

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2022明治安田生命J1リーグもいよいよ残り2試合となった。最注目と言える優勝争いは、勝点62で1位の横浜F・マリノスと、2ポイント差の勝点60で首位を追い掛ける川崎フロンターレの2チームに絞られている。今回は、過去15シーズンの「残り2試合時点における1位と2位の動向」をご紹介するとともに、両チームが今季残しているスタッツから第33節、第34節の展望についても分析を行った。
※10月12日終了時点のデータを使用

上図はJ1が現行の勝点制度となった2003年以降かつ1ステージ制実施年度における、「残り2試合時点の1位と2位の勝点差」を表したものだ。2020年、2021年の2シーズンは川崎フロンターレが圧倒的な強さを見せ、残り2試合時点でそれぞれ勝点差15、13と2位に大差をつけて優勝を遂げた。今季も横浜F・マリノスが一時独走態勢に入ったかと思われたが、川崎フロンターレも驚異的な粘りを見せて残り2試合で勝点差2に迫っている。

15シーズン中、残り2試合時点での1位チームがそのまま優勝を果たしたのは11シーズン。やはり多くの年で1位が有利であることが分かる。最終節時点で5チームに優勝の可能性があり、大混戦の年として記憶される2005年も最終的には残り2試合時点で首位だったガンバ大阪が優勝を飾っている。今季の優勝争いと同様に、勝点差2をつけていたのは2008年、2009年、2014年の3シーズン存在するが、うち2シーズンは首位が逃げ切り、2014年のみガンバ大阪が逆転での優勝を果たした。

このまま優勝を狙う横浜F・マリノスにとって、前回の優勝にあたるのは2019年だ。長い期間FC東京に首位を守られながらも、終盤奪首に成功し、そのまま栄誉を勝ち取った。一方で、ショッキングなシーズンとなったのは2013年だろう。残り2試合時点で首位につけ、2位の浦和レッズに4ポイント差、3位のサンフレッチェ広島には5ポイント差となっていたが、最終的にサンフレッチェ広島の大逆転劇を許して苦杯を嘗めた(今回対象の15シーズンで、残り2試合時点で3位以下のチームが優勝したのは、2013年の広島が唯一)。後半戦の多くの時期で首位を守ってきたという点では今季も同様の展開となっているが、悪い記憶を振り切り、しっかりと逃げ切った2019年の経験を生かして盤石の優勝を飾りたい。

逆転優勝での三連覇を目指す川崎フロンターレは、独走した直近2シーズンだけでなく、自身が逆転優勝を遂げた2017年の記憶も新しいだろう。残り2試合時点での勝点差は今季よりも厳しい4ポイントだったが、そこから浦和レッズ、大宮アルディージャを相手にしっかりと6ポイントを積み、最終的に得失点の差で優勝を成し遂げた。今季も同様に残り2試合で勝点6を挙げて吉報を待ちたい。

ここからは、両チームが今季残してきたスタッツと、残り2試合で横浜F・マリノスが対戦する浦和レッズとヴィッセル神戸、川崎フロンターレが対戦するヴィッセル神戸とFC東京のデータを交え、試合を展望していく。

横浜F・マリノスは第33節、ホームに浦和レッズを迎える。今季も横浜F・マリノスは自慢の攻撃陣が光っており、得点63はリーグ最多。スルーパス数558もリーグ1位となっている。対戦相手の浦和レッズは被スルーパス数が4番目に少ないことから、このカードでは裏を狙う攻撃と裏を取られない守備という点に注目したい。一方、浦和レッズが今季得意としているセットプレーには要警戒だ。ここまでで20得点を奪い、リーグ2位となっている。横浜F・マリノスはセットプレーからの失点がリーグで4番目に多いだけに、相手の武器には注意を払いたい。また、今季の浦和レッズは苦手なパターンがある程度明確になっており、「相手よりスプリント回数が少ない試合は未勝利」という結果が出ている(該当は16試合で0勝10分け6敗)。横浜F・マリノスとしては攻守にメリハリをつけて前線から厳しくプレスを掛け、相手のビルドアップに自由を与えないプレーを心掛けることで「浦和レッズが苦手な展開」に持ち込めるだろう。

最終節はアウェイでヴィッセル神戸と対戦。横浜F・マリノスが今季得意としているクロス攻撃だが(クロスからの得点が21でリーグ1位)、ヴィッセル神戸は吉田 孝行監督が就任した以降の試合では、クロスからの失点が1試合平均0.07点とリーグでもっとも少ない。また、ラストパス(シュートに至ったパス)の内訳をみると、クロス比率が高いヴィッセル神戸に対し、横浜F・マリノスは被ラストパスのクロス比率がもっとも高いチームであり、クロスやクロスからのシュートの精度が勝敗を分ける可能性もあるだろう。ちなみに、第10節の同カードでは西村 拓真が2ゴールを挙げたが、今季の横浜F・マリノスは彼がゴールを挙げた試合で全勝を続けており(8戦8勝)、「背番号30」の出場があれば、勝利に直結する得点にも期待がかかる。

川崎フロンターレは第33節、ホームにヴィッセル神戸を迎える。ここまでの川崎フロンターレは横浜F・マリノスにつぐ得点数(60ゴール)を誇っており、こちらも攻撃陣が自慢だ。得点を挙げた試合の数も29試合とリーグ1位となっている。中でもセットプレーからの得点がリーグで最多となっており(21ゴール)、この試合でもCKや良い位置からのセットプレーを獲得できるかという点も1つのカギとなるだろう。一方で1-0とリードしてからの失点が10回とリーグワースト1位で、今季の課題となっている。幸先よく先制点を挙げてからも守備を引き締め直し、優位に立って勝点3を挙げたい。対戦相手のヴィッセル神戸は吉田 孝行監督が就任して以降リーグ戦は絶好調で、9月14日に行われたFC東京戦を皮切りに5連勝中。吉田監督指揮下の14試合で平均勝点2.07、平均失点0.71を記録しており、これは今季のJ1における「監督別データ」でどちらも1位の数字。川崎フロンターレが得意とするセットプレーにも強く、現在3試合連続無失点が続いており、今まさにリーグで最も手強い相手と言えるかもしれない。それでも、逆転優勝を狙う川崎フロンターレにとっては3ポイント奪取が至上命令。劇的勝利を挙げた前回対戦と同様に、白星をつかみ取れるか。

最終節はアウェイでFC東京と対戦。今季のFC東京は先制に成功した試合で勝率100%(12試合)、1-0でリードしている間の失点は0(J1でFC東京のみ)と、幸先よくスタートできた試合では無類の強さを誇っているため、川崎フロンターレとしては相手に最初の1点を与えないことが重要だ。一方で川崎フロンターレが今季も得意としている「敵陣で奪ってからの得点(16点でリーグ1位)」はFC東京の守備陣が苦手としている部分(自陣で奪われてからの失点が15でリーグワースト3位タイ)と重なっており、これまでの自分たちの強みをそのまま発揮できれば「多摩川クラシコ」での歓喜、ひいては3連覇へつながるかもしれない。

文章/データ提供:データスタジアム株式会社