現代サッカーを見るうえで、いまや欠かせないルールとなった「5人交代制」。2020年、新型コロナウイルス感染拡大に伴うスケジュールの過密化による選手の疲労蓄積を防ぐために採用された当ルールは、いつしか試合の戦術的な幅を広げる役割を担い、ゲームの運命を左右する「ジョーカー」へのフォーカスをひときわ強める一因となった。では、データの面から見える、交代枠増加が引き起こした攻撃面の変化はどのようなものだろうか。
※8月21日時点でのデータを使用
●際立つ2020年の途中出場選手によるゴール数
上のデータは、3人交代制を通年で採用していた最後のシーズンである2019年、そして2020年から2022年の計4シーズンのJ1リーグを対象に、途中出場選手によるゴール数と総ゴール数に対する割合を比較した図である。2019年と比べ、やはり2020年以降の途中出場選手のゴール数とその割合が大きく引き上がっている。5人の交代枠によって途中から出場する選手数とその出場時間は大幅に伸びており(1試合平均の途中出場選手の合計出場時間と選手数 2019年:52分/2.9人、2020:88分/4.3人、2021年:87分/4.4人、2022年:91分/4.4人)、終盤の負傷やアクシデントを気にすることなく早い時間から交代カードを積極的に切れるようになったことで、ゴールを奪う可能性も高まったということだろう。
導入初年度となった2020年の途中出場選手によるゴール数を選手別に見ていくと、川崎フロンターレの三笘 薫と小林 悠がリーグ1位の8点、レアンドロ ダミアンが4点を奪取。チームとしても1位となる26点を途中出場選手が挙げている(2位の横浜F・マリノスは13点)。勝点でも2位に18の大差をつけてシャーレを掲げており、選手層の厚さがそのまま最終成績に表れた形となった。
今季の途中出場選手によるゴール数のチーム1試合平均値は0.23点で、2020年の0.27点には及ばないものの、割合は近い数値となっており再び途中出場選手の活躍が目立つシーズンとなっている。
●今季はセレッソ大阪の試合終盤に注目!
今季、「ジョーカー」の存在が最も脅威になっているクラブの1つにセレッソ大阪が挙げられる。ここまで途中出場選手によるゴールが11点とリーグで最も多く、オウンゴールを除くチームの全37点中、約3割を途中からピッチに入ったプレーヤーが奪っている。さらに特筆すべきは、第18節から直近の第24節まで、リーグ戦7試合連続で途中出場の選手が得点中だということ。この期間中は4勝3分けで無敗をキープしており、2試合で終了間際に決勝ゴールを挙げたジェアン パトリッキを筆頭に、ゲームを決める・救う「ヒーロー」が毎試合で現れている。一体感をベースにチームをまとめ上げる小菊 昭雄監督の下、誰が出ても遜色ないチーム編成に成功しており、この連続記録が今後どこまで伸びるのか、前述の川崎フロンターレの26点(1試合平均0.76点、今季のセレッソ大阪の1試合平均は0.46点)に迫れるかにも注目したい。
文章/データ提供:データスタジアム株式会社