『AFC U23アジアカップ ウズベキスタン2022』は6月18日に3位決定戦、19日に決勝戦が行われ幕を閉じた。大会自体は年齢制限が23歳以下とされている中、2024年のパリ五輪を見据えて「年下」世代のチームで臨んだ日本は、準決勝で開催国のウズベキスタンに敗れてしまったが、3位決定戦で勝利を収めて3位でフィニッシュ。年齢差のある相手に真剣勝負を行えたことは、今後の糧になるはずだ。選出されたメンバーを確認すると、同様の方針で東京五輪を見据えてU-21チームを送り込んだ2018年の同大会(当時の名称はAFC U-23選手権)は本大会メンバーに現役の大学生も多く目立っていたが、今回のメンバーは明治大学に所属する佐藤 恵允と、海外のチームに所属する4選手を除き、その他は明治安田生命Jリーグで活躍する選手たちとなっている。今回の数的有意コラムでは、今後の日本サッカーを担うであろう彼らが、明治安田生命Jリーグにおいてこれまでどのような成績・スタッツを残しているかご紹介したい。
※「パリ世代」は、2001年1月1日生まれ以降の選手が対象
※2022年6月12日時点のデータを使用
FW 鈴木 唯人(清水エスパルス)
高卒で清水エスパルスに入団した希代のアタッカーは、高いテクニックと類いまれな攻撃センス、推進力のあるドリブルなどを武器にJリーグの舞台でも活躍を見せている。これらの特徴は彼が今季残しているスタッツにも明確に表れており、ゴール数、アシスト数、スプリント回数、平均トップスピードはいずれもパリ世代の中でリーグ2位の数字だ。さらに、スルーパス数、タックル数(センターフォワード出場時)といった数値はパリ世代の中でリーグ1位の成績となっており、攻撃に関わるスタッツで満遍なく世代トップクラスを示す結果が出ている。また、単にパリ世代の中で突出しているだけでなく、PA(ペナルティエリア)内へのドリブル数はリーグで3位タイ(パリ世代では1位タイ)、オープンプレーでのラストパス数はリーグで4位タイ(パリ世代では単独1位)と、J1全体で比較しても高い数値を記録。「未完の大器」から「リーグ屈指のアタッカー」へとまさに進化を遂げている最中で、今後が期待される選手だ。
FW 細谷 真大(柏レイソル)
一瞬の抜け出しと体の強さを生かした前進でストライカーらしくゴールに迫る、パリ世代のエース候補。今季のJ1では一皮むけた様子を見せており、ゴール数(リーグ4位タイ)、敵陣PA内プレー数(リーグ2位)、敵陣PA内へのドリブル数(リーグ3位タイ)、スルーパス受け数(リーグ1位タイ)、スプリント回数(リーグ3位)といった項目で高い数値が出ている(いずれもパリ世代では1位の記録)。良い動き出しで味方からのスルーパスを引き出し、より危険な位置で仕事をする、まさに理想的なFWの役割を今季は担えているといえる。また、アシスト数はパリ世代でリーグトップ、オープンプレーからのラストパス数ではパリ世代でリーグ2位であることからも分かる通り、単にフィニッシャーとしての役割だけでなく、チャンスメイク力にも長けており、柏レイソルやパリ世代の攻撃の中心として、さらなるブレイクが期待される。
MF 松岡 大起(清水エスパルス)
若くして豊富な経験を持つ、中盤のダイナモ。J1通算先発数はすでに89試合を数え、パリ世代でトップとなっている。今季は負傷の影響などもあり、やや出遅れてしまったものの、その実力は疑いようがなく、リーグや日本を代表するボランチとして広く認知されるまでにそう時間はかからないだろう。そのほか、J1通算タックル数や、2021シーズンの平均走行距離といったスタッツでパリ世代の1位に輝いている(2021シーズンの平均走行距離は11.8kmで、リーグ全体で見ても2位の成績)。巻き返しを図るチームとともに、彼自身が再び主力として活躍できるか、という点も後半戦の清水エスパルスにおける注目ポイントの1つだ。
MF 藤田 譲瑠チマ(横浜F・マリノス)
東京ヴェルディのアカデミーが育てた、中盤の逸材。高い身体能力を生かしたダイナミックなプレーと、まるでベテランかのように落ち着いたプレーの両方を高レベルで兼ね備える。今回のAFC U23アジアカップではゲームキャプテンを任されることも多く、チームをまとめ上げる存在としても評価を高めた。今季の横浜F・マリノスは過密日程を乗り越えるべく、積極的にメンバーを入れ替えるターンオーバー制を導入しているが、その中でも一定の出場機会を得続けており、主力として活躍を見せている。今季のスタッツではこぼれ球奪取数においてパリ世代で3位となっているほか、Jリーグ通算のインターセプト数ではパリ世代で2位の数字を残している。
MF 山本 理仁(東京ヴェルディ)
こちらも東京ヴェルディのアカデミーが生んだ、スーパーレフティー。主戦場とするインサイドハーフやアンカーの位置だけでなく、時には最終ラインも任され、正確な左足でボールをさばいて試合を支配する。これまでのJ2通算先発数は69で、パリ世代の中ではもっともJ2で先発している選手だ。今季は、シュート関与パス※1(パリ世代でリーグ4位)やタックル数(パリ世代でリーグ2位)といった項目で高い数値を残している。今後も右肩上がりに成長を続け、クラブや代表に欠かせない選手として確固たる地位を築けるか。
DF 馬場 晴也(東京ヴェルディ)
東京ヴェルディのアカデミー関連として、3人目は馬場 晴也をご紹介する。身長は181cmと、世界基準で見れば決して大柄なDFではないものの、予測力と身体能力が非常に優れており、頼りになるセンターバックとしてトップチームで定位置を得た。今季は自陣での空中戦勝利数がJ2のパリ世代選手では1位、リーグ全体で見ても10位タイとなっており、ハイボールへの強さを発揮している。そのほか、クリア数やシュートブロック数でもパリ世代でリーグ1位を記録するなど、成長が著しい。Jリーグで結果を残し続け、不動のセンターバックへと名乗りを上げたい。
DF 半田 陸(モンテディオ山形)
センターバックからサイドバックに転向し、J2の舞台で研鑽を積んでいる将来有望なDF。J2通算先発数は62でパリ世代中2位となっており、チームからの厚い信頼が伺える。タックル数でパリ世代のリーグ1位に輝いているほか、シュート関与パス数でもパリ世代でリーグ2位となるなど、攻撃参加でも一定の成果を上げており、プレーの幅は広がりを見せていると言えるだろう。
また、高卒1年目からJ1・FC東京のレギュラーの座を勝ち得た松木 玖生もタックル数やスルーパス数といったスタッツで世代トップクラスの数字を残している(いずれもパリ世代でリーグ2位)ほか、アルビレックス新潟の三戸 舜介は5月に2ゴール2アシストを記録し、明治安田生命Jリーグ KONAMI月間MVPに輝くなど、パリ世代の有望選手はまだまだ多い。明治安田生命Jリーグを観戦する際は、「パリ世代」の選手に着眼点を置いて見ると、将来の日本代表を今から応援する楽しさも味わうことができるかもしれない。
※1シュート関与パス:3プレー以内にシュートに至ったパス
文章/データ提供:データスタジアム株式会社