●川崎フロンターレ 今季も無類の強さを見せた王者 「史上最堅」に挑む
昨季に続き、今季も圧倒的な強さで連覇を達成した川崎フロンターレ。特に前半戦は歴史的な成績を残しており、開幕からの無敗記録はこれまでのJ1記録を塗り替えて驚異の25試合となった。(2位は2015年の浦和レッズで19試合)。また、昨季終盤からまたいでの無敗記録は30試合で、2012年から2013年にかけて大宮アルディージャが樹立した21試合の無敗記録を大幅に更新した。Jリーグ全体で見ても、2019年から2020年のブラウブリッツ秋田(当時J3)の記録に並び、1位タイとなった。
すでに優勝を決めている今季だが、残りの試合結果によって記録更新がかかっているものもある(*1)。1つは、「1試合平均獲得勝点」の最多記録だ(*2)。残り2試合を2勝で終えると平均獲得勝点は2.47となり、2020年の川崎フロンターレ自身が残した2.44という記録を更新。引き分け以下を含むと、これを下回ってしまうため、2戦全勝が条件となる。
さらにもう1つ、更新がかかっている記録は「1試合平均失点数」だ。これまでのJ1全クラブで、平均失点が最少だったのは2008年の大分トリニータ(平均0.71)だが、今季の川崎フロンターレは第36節を終えて26失点。残り2試合とも無失点で抑えることができれば、平均失点は0.68となるため、「J1の歴史上もっとも守備が堅いチーム」として新たな記録を打ち立てることになる。また、歴代のJ1優勝チームのみを取り上げてみると、もっとも堅守だったのは2018年の川崎フロンターレで平均失点は0.79。今季の川崎フロンターレが残り2試合を4失点以内で乗り切ると、自身の記録を更新した上で優勝を飾ることができる。攻撃力の高さが取り上げられがちな川崎フロンターレだが、今季は守備でも記録的な数字を残していることが連覇の原動力となったと言えるだろう。
●横浜F・マリノス 前田 大然のスプリント力は記録ずくめ 水沼 宏太はジョーカーとして新記録
横浜F・マリノスが誇る「スプリント王」前田 大然は、今季スプリントに関する多くの記録を塗り替えた。もっともインパクトを残したのは、試合別のスプリント回数だ。前田 大然は8月15日に行われた大分トリニータ戦で64回のスプリントを記録。これは、Jリーグでトラッキングデータの計測が始まった2015年からの全試合で、もっとも多いスプリント回数だ。前田 大然の驚異のスプリント力が発揮された試合はこの試合にとどまらず、4月6日に行われたセレッソ大阪戦では62回、11月6日のFC東京戦では55回のスプリントを記録するなど、歴代試合別スプリント数のトップ10のうち、実に6つが今季の前田 大然によって打ち立てられた。また、年間累計のスプリント回数もここまでで1,358回となり、すでに新たなJリーグ記録を樹立(2位は2016年の湘南ベルマーレ・高山 薫で累計1,127回)。前人未到の大記録は残り2試合でどこまで積み上がるだろうか。
もう1つ、横浜F・マリノスに関連する興味深い記録として、水沼 宏太が途中出場試合数のJ1記録を更新したことを挙げたい。今季の水沼 宏太はここまで33試合に途中出場し、2015年の中島 裕希(当時モンテディオ山形、現在FC町田ゼルビア所属)、2011年の金 根煥(元横浜F・マリノス)、1998年の長谷川 健太(元清水エスパルス)が記録した30試合を超えてJ1最多となった。もちろん今季の交代枠が5つであることは考慮しなければいけないが、それでも監督が代わった中で年間を通して信頼を勝ち取り、ジョーカーとして起用され続けたことがこの新記録につながったことは間違いない。また限られた時間の中で、今季リーグ2位の9アシストという数字を残していることは、彼の能力の高さを証明している。
●名古屋グランパス 強固な守備陣がクリーンシートを量産
3季目を迎えたマッシモ フィッカデンティ監督の下、YBCルヴァンカップで初優勝を飾った名古屋グランパスは年間を通して強固な守備を披露している。無失点に関する記録として、9試合連続無失点、823分間連続無失点というJリーグ新記録を達成したほか、リーグ戦におけるクリーンシート数もここまで20試合を記録しており、J1史上最多となった(2位は1995年の横浜マリノスで18試合)。また、総試合数に対するクリーンシート数の割合は現時点で55.6%となっており、こちらもJ1史上最高となることが確定している。残り2試合でクリーンシート記録をさらに伸ばすことはできるだろうか。ここまで全試合出場を続けているGKランゲラックを中心とした、鉄壁の守備陣のプレーは必見だ。
●サガン鳥栖 史上最も「走る」チームとなるか
現在16勝を挙げて7位につけているサガン鳥栖は、3月10日に行われたベガルタ仙台戦において試合別の記録で歴代最長(*3)となる走行距離133.974kmを達成した。また、シーズン通しての1試合平均走行距離でも、ここまで123.462 kmを記録し、2020年の横浜F・マリノスが記録した121.048kmを上回ることが濃厚。途中出場試合数の記録と同様に、交代枠が5つである影響を考慮しなければいけないが、1試合平均で7.196kmも走る特異なGK朴 一圭が所属していることを考えれば、妥当な記録と言えるだろう(今季のフル出場GKの平均走行距離は5.130㎞)。「走る」ことをチームスタイルとして掲げてきたサガン鳥栖が、新たにJリーグの歴史に名を残すことになるかもしれない。
(*1)2021年11月24日時点
(*2)現行の勝点制度(勝ち:3、引き分け:1、負け:0)となった2003年以降
(*3)スプリント記録と同様に、Jリーグでトラッキングデータの計測が始まった2015年以降
(文章/データ提供:データスタジアム株式会社)