10月30日に決勝を迎える2021JリーグYBCルヴァンカップ。今年は初の決勝進出となった名古屋グランパスと、2017年以来の優勝を目指すセレッソ大阪の対決となった。そこで、今回はJ STATSを使ってこの試合を展望していきたい(*1)。
■先制点はどちらに?
ACLでは準々決勝で敗退となったものの、J1リーグでは4位につける名古屋グランパス。その特長は鉄壁を誇る守備だ。J1リーグで最少失点を記録した昨季に続き、今季も失点数は2番目の少なさである24、クリーンシート試合数は32試合消化の段階でJ1リーグの年間新記録となる19と抜群の安定感を見せている。特に、先制した試合では17勝1分1敗と圧倒的な成績を残しているだけに、彼らが先に得点を奪うようであれば、タイトル獲得の可能性はより高まると言えるのではないだろうか。逆に、相手チームに先制を許した9試合を見てみると、8試合で黒星を喫しているだけでなく、その9試合で挙げたゴールはわずかに4。うち6試合は無得点で終わるなど、苦戦を余儀なくされている。
対するセレッソ大阪は先制した試合が15試合あるものの、勝利を収めたのは8試合のみ。しかし総得点40の中で後半に決めた得点数が28とリーグで5番目に多く、先制されても15試合中6試合で引き分けか逆転勝ちに持ち込む反発力を見せている。
直近10年のYBCルヴァンカップ(ヤマザキナビスコカップを含む)決勝において、先制点を奪ったチームが優勝したケースは7回。また、残りの3試合の中で2試合はPK戦までもつれこんでいる。どの試合であっても先制点が大事であることは間違いないが、今回の対戦ではとりわけ重要だといえる。
■セットプレーを与えるな!
一発勝負でカギを握るのがセットプレーだろう。特にセレッソ大阪はセットプレーからの得点数がJ1リーグで2番目に多い13で、総得点の32.5%を占める。
また、両チームに共通している特徴は、FKから3プレー以内でのシュート数が多いことだ。どちらもリーグ最多タイとなる42本を記録。その要因として、マテウス(名古屋グランパス)や原川 力(セレッソ大阪)といった精度の高いボールを蹴ることができるキッカーがいるだけでなく、アタッキングサード(*2)でファウルを受けた回数が多く、チャンスとなる位置からのFKが多いことが挙げられる。準決勝ファーストレグでもFKから得点を奪った名古屋グランパスはJ1リーグで2番目に多い81回で、セレッソ大阪は同4番目の65回。選手別で見るとマテウス(名古屋グランパス)がJ1リーグ2位タイの15回で、坂元 達裕(セレッソ大阪)が4位の14回であった。両選手ともにボールを持った際の推進力があるだけに、対面する選手にはファウルを与えぬよう粘り強く対応することが求められることは間違いない。
■両チームのホットラインに注目!
誰から誰へのパスでシュートを打っているかを見ると、名古屋グランパスで最も本数が多い関係は相馬 勇紀からマテウスへの6本であった。
一方、セレッソ大阪において最多だった関係は丸橋 祐介から加藤 陸次樹へのパスで、こちらも6本。この2人の関係と言えば、準決勝のセカンドレグにおいて決勝点が生まれた場面のことを覚えている人も多いのではないだろうか。名古屋グランパスとの直近の直接対決では3戦連続で無得点に抑えられているだけに、決勝の舞台ではこのホットラインに注目したい。
■中2日の影響は?
両者は、決勝戦の直前となる10月27日の天皇杯準々決勝でも激突する。名古屋グランパスは走行距離で相手を上回った試合数が21で、そのうち敗れたのは川崎フロンターレと戦った2試合のみ。一方のセレッソ大阪は、相手チームよりもスプリント回数が少なかった16試合において1試合しか勝利していない。両者とも中2日での連戦となるだけに、展開や相手に左右されるとはいえ、どこまで足を止めずに走り切れるかも大きなポイントになるだろう。
今季は5月の第13節で対戦した両者。結果は1-0と、先制点を奪い、走行距離・スプリント数でも上回った名古屋グランパスがそのまま勝利を収めた。果たして、決勝を制して栄冠に輝くのはどちらとなるのか。
(注釈)
(*1) 2021年10月17日までに開催されたJ1リーグが対象
(*2) ピッチを攻撃方向に対して3分割した際に、最も相手ゴールに近いエリア
(文章/データ提供:データスタジアム株式会社)