試合数にばらつきがあるものの、全てのチームが前半戦を終えた2021明治安田生命J1リーグ。ここまでの振り返りと後半戦の注目ポイントとして、J STATSを基に前半戦で印象的な活躍や特徴的なスタッツを残した選手をピックアップした。
※7月17日終了時点でのデータを基に作成
まずは、首位を独走し、連覇へ向けて順調に勝点を重ねている川崎フロンターレで、前半戦に特徴的なスタッツを残した2選手をご紹介。今季もエースとしてゴールを量産しているレアンドロ ダミアンはすでに12ゴールを挙げ、得点ランキングで2位タイにつけている。さらに今季目立つのは、アシストの多さだ。自ら得点を奪うだけでなく、お膳立ても一級品で、ここまでリーグ1位となる8アシストを記録。計20得点に直接絡み、川崎フロンターレの圧倒的な攻撃を支える大きな原動力となっている。敵陣PA(ペナルティエリア)内でのプレー数がリーグ1位であることからも分かる通り、相手にとって常に危険な位置でボールにかかわっていることがこの結果に結び付いていると言える。
また、チームメイトの山根 視来も、リーグ2位の7アシストを記録。こちらも、レアンドロ ダミアンと同様に敵陣PA内でのプレー数が目立ち、DF登録の選手に限定すればリーグで最も多い。さらに、本職の守備面でもタックル数でチーム内2位につけるなど、攻守両面で好成績を残して大きな貢献を果たしている。
2位につけている横浜F・マリノスからは、快足ストライカーを取り上げる。現在10ゴールで得点ランク5位の前田 大然だ。彼の最大の魅力は、何と言ってもスプリント能力だろう。スプリント回数はここまで764回で、2位以下を大きく引き離してリーグ1位の数字。その走力は攻撃のみならず、最前線からの守備の際も武器となり、FW登録の選手に限定したタックル数がリーグで最も多いことも特徴的なスタッツだ。
順調に勝点を積み重ね、来季のACL出場も狙える位置につけているヴィッセル神戸。後半戦の注目ポイントとして、菊池 流帆を挙げたい。不動のセンターバックとして22試合中21試合に先発出場している今季は、守備面で圧倒的な数字を残している。クリア数、タックル数はともにリーグ1位で、シュートブロック数もリーグ1位タイと、守備プレーで求められるさまざまな能力を兼ね備えていることが分かる。さらには空中戦勝率も80%を超えてこちらもリーグ1位と、まさにJ1屈指のDFと評しても過言ではない。ゴールもここまで4得点(DF登録の選手ではトップ)を挙げていて、ヴィッセル神戸にとって替えの効かない、キープレーヤーとして活躍を見せている。
13位に終わった昨季から、大きく巻き返しているサガン鳥栖。前半戦で特徴的なスタッツを残した選手として朴 一圭を取り上げる。最も目を引くのは、走行距離の多さだ。ここまでの1試合平均の走行距離は7.4kmと、GKの中では最も高い数値で、フィールドプレーヤーにも匹敵するほど。GKとしては歴史的なペースで走っており、後半戦も「朴 一圭の走行距離」がどこまで伸びるのか、目が離せない。この豊富な運動量を生かし、パス数はGK内でトップの890本、シュート関与パス(3プレー以内にシュートに至ったパス数)数もGK内でトップと、サガン鳥栖のビルドアップに欠かせない役割を果たしていることが分かる。さらに、本職である守備面でも、セーブ率は8割を超えてリーグ1位と、随一の堅守を誇るディフェンス陣の中心として結果を残し、攻守両面でトップクラスのGKといえる。
もう1人、サガン鳥栖で目立ったスタッツを残している選手としてエドゥアルドがいる。前半戦でリーグ1位の縦パス数を記録しており、センターバックの位置から攻撃のスイッチ役として大きな働きを見せていることが分かる。上で挙げた朴 一圭とともに、後方からサガン鳥栖の攻撃を支える彼らに後半戦も注目だ。エドゥアルドは守備面でも好成績を残しており、ここまでのクリア数とシュートブロック数はチーム内1位。リーグ最少失点のチームを支えている立役者と言えるだろう。
新監督を迎え、新たなチームへと変貌を遂げた浦和レッズ。最前線で大きな存在感を見せているのが、チームに途中合流したストライカー、キャスパー ユンカーだ。リーグ戦に初出場したのは5月に入ってからだが、いきなり5月度の明治安田生命Jリーグ KONAMI月間MVPを受賞するなど、鮮烈なデビューを飾った。すでに挙げたゴールは7点で、今季新加入の外国籍選手ではトップタイの数字となっている(シーズン当初から加わっている清水エスパルスのチアゴ サンタナが7ゴールで同数)。さらに、シュート枠内率はリーグ1位と、その得点力を支えるのが高いシュート能力であることがうかがえる。
「若手の活躍」に目を向けて2001年以降に生まれた選手に絞ってスタッツを見ると、鹿島アントラーズの荒木 遼太郎の数字が目立っている。ゴール数6、アシスト数5は、ともにこの世代の中では最多。さらに、サイドのみならず、中央でプレーすることも多くなった今季は、スルーパス数がチーム内で1位となるなど、若くして伝統あるクラブの攻撃の中心的存在になりつつある。
北海道コンサドーレ札幌の金子 拓郎は、ドリブラーとして特徴的な数字を残している。総ドリブル数はリーグ1位、ドリブルからのクロス数もリーグ1位と、今季の前半戦で最も多くのドリブルチャンスを見せたJリーガーとなった。さらには、チャンスメイクのみならず、ドリブルからのシュート数もリーグ3位と、自ら打ち切る形を持っていることも大きな魅力の1つだ。後半戦もどのようなプレーを見せてくれるのか、大きな注目が集まる。
今季J1に昇格を果たしたアビスパ福岡と徳島ヴォルティスからは、キャプテンかつボランチの一角として、文字通りチームを中央で支える2人の選手を取り上げる。
守備的なサッカーを見せるアビスパ福岡では、前 寛之の存在に触れずして、このチームを語ることはできない。タックル数とインターセプト数は、リーグ全体で見てもともに3位タイ。ピッチ全体に目を光らせて「番人」のごとく守備を行うプレーは、後半戦も注目ポイントだ。さらに、比較的ボールを持たないチームの中でも、パス数、スルーパス数のチーム内トップはどちらも前 寛之であり、攻撃でも一役買っていることは明らかだ。
一方、徳島ヴォルティスの岩尾 憲は、パス数、ラストパス数ともにチーム内で1位。ポゼッションサッカーを続ける徳島ヴォルティスの攻撃の担い手として、今季も存在感抜群の成績を残している。さらに、タックル数もチーム内で2位と、守備面での貢献も忘れてはならない。
前 寛之と岩尾 憲の比較で最も面白い点は、2人のここまでの「先発試合での1試合平均走行距離」が同じで、かつともにチーム内トップであること。走、攻、守、3拍子をそろえた両キャプテンのさらなる活躍に期待がかかる。
(文章/データ提供:データスタジアム株式会社)