『2-0は危険なスコア』というフレーズを聞いたことがないだろうか?2-0からの逆転劇で記憶に新しいのは「ロストフの悲劇」である。2018 FIFAワールドカップ ロシア大会 日本vsベルギーにおいて、2点先取した日本は後半に3失点し、逆転負けを喫した。このような例もあり、たしかに2点差は安心できない状況にも思えてしまう。
では、実際に2-0はどれほど『危険なスコア』なのだろうか?
明治安田生命J1リーグ戦、J2リーグ戦、およびJ3リーグ戦の過去4年間のデータを利用し、2-0の状況が生まれた試合について調査したところ、全3,871試合のうち、2-0の状態が生まれた試合は1,337試合あった。つまり、全体の約1/3の試合で2-0の状況が生まれていることになる。その1,337試合で2点を先取したチームの最終結果は以下の通りだ。
この結果を見ると、2点を先取したチームは9割以上の確率で勝利を収めており、敗北する確率は3%しかないため、2-0は圧倒的に優位な状況であると言える。
しかし、その優位な状況から1点返された状況、つまり「2-0から2-1になった状況」の危険度はどうだろうか?ここでは、同じ1点リードの状況である1-0と比較してみよう。
図1は「リードしているチームが同点に追いつかれた試合」がどれだけあったのか調査を行った結果である。例えば、図1の赤色の線の左端に注目してほしい。これを見ると、「後半0~5分の時間帯に2-1(厳密に言えば、1-0→2-0→2-1という得点経過で発生した2-1)の状態を保っていた試合のうち、その後に同点に追いつかれた試合の割合は約50%」であることがわかる。後半15分までの時間帯に着目すると、「1-0の状況」より「2-0から2-1に追い上げられている状況」の方が、その後に同点にされる可能性が高い。
反対に、追加点を挙げてリードを拡げる場合について考えてみよう。図2は「リードしているチームが得点してリードを更に1点拡げた試合の割合」を示している。どの時間帯においても、1-0(橙色の破線)より2-0→2-1(赤色の線)の方が、追加点が決まった試合の割合が低い。すなわち、1-0と比較した場合、2-1は追加点が決まり難い状況である。
もちろん、冒頭のデータの通り、2-0という状況自体は危険ではない。図1・2における青色のドット線が示すように、2-0は同点に追いつかれにくく、かつ追加点が入りやすいため、非常に安定した状態である。しかし、そこから1点返されて2-1になると、同点に追いつかれる可能性は高まり、2点差に戻せる可能性は低くなってしまう。
今回の調査をまとめると、以下のようになる。
・2-0は危険な状況ではなく、圧倒的に優位な状況である
・2-0→2-1の状況は1-0の状況に比べて同点に追いつかれる可能性が高い
・2-0→2-1の状況は1-0の状況に比べて追加点が決まる可能性も低い
以上のことから、『2-0は(2-1にされると、1-0より)危険なスコア』だと言えそうだ。
(文章/データ提供:データスタジアム株式会社)