2019明治安田生命J1リーグも折り返し地点を過ぎて、いよいよ勝負の後半戦へと突入した。今回は後半戦のキーマンとなるかもしれない選手を、「出場している時と出場していない時のチームのパフォーマンスの違い」という観点から考察してみよう。
考察にあたっては、以下の選手別データを用いた。
[1-1] 出場している時の自チームのシュート数
[1-2] 出場していない時の自チームのシュート数
[2-1] 出場している時の相手チームのシュート数
[2-2] 出場していない時の相手チームのシュート数
[3-1] 出場した時間(秒単位)
[3-2] 所属チームの総試合時間(秒単位)
これらのデータから、
「ある選手が出場している時と出場していない時で、同じ時間あたりのチームのシュート数と被シュート数(=相手チームのシュート数)がどれくらい変化するか」
の割合を算出することとし、それらを合算したものを
『SCOOP(Shot Compare On / Off the Pitch)』
と呼ぶことにする。計算方法は以下の通り。
①出場時の自チームのシュート数の変化率(%)
[1-2] 出場していない時の自チームのシュート数
に対する
[1-1] 出場している時の自チームのシュート数
の増減の割合(増えるほど良い)
②出場時の相手チームのシュート数の変化率(%)
[2-2] 出場していない時の相手チームのシュート数
に対する
[2-1] 出場している時の相手チームのシュート数
の増減の割合(減るほど良い)
SCOOP = ① - ②
(大きいほど良い)
なお、今回のSCOOPについては、[3-1]が極端に少ない(=出場時間が極めて短い)場合や[3-1]と[3-2]が極めて近い(=全試合フル出場に近い)場合は異常な値となってしまうため、以下の計算で導かれる『出場率』が30%以上70%以下であった133選手を対象としている。
出場率=出場した時間÷所属チームの総試合時間
[3-1] [3-2]
それでは、SCOOPの上位20選手を見てみよう。
先日、レアル・マドリード(スペイン)に完全移籍することが発表された久保 建英が堂々の1位となった。特に、自チームのシュート数の変化率(赤いバー)は+75となっており、次点のアンデルソン ロペスの+46を圧倒的に上回る数値を記録している。
これは、久保 建英が出場している時は出場していない時に比べてチームのシュート数が75%増えることを意味しており、まさに驚異的な影響力と言えるだろう。また、相手チームのシュート数が27%減るという守備面での影響力の高さも見逃せない。
2位以降も日本代表クラスの選手や得点ランキング上位の選手が並ぶなか、7位の遠藤 保仁や8位の中村 憲剛などベテランと呼ばれる選手たちも、影響力の高さは健在であることを窺わせる。
チーム単位で興味深いのは、攻撃面で高い変化率を持っている選手が複数人ランクインしているC大阪(ブルーノ メンデス、藤田 直之、水沼 宏太)と湘南(梅崎 司、鈴木 冬一)の2チーム。彼らの出場時間が伸びていくようであれば、後半戦のシュート数の増加が期待できる。逆に守備面で高い変化率を持っている選手が複数人ランクインしている川崎F(守田 英正、中村 憲剛)と清水(二見 宏志、ヘナト アウグスト)の2チームは、選手起用次第で後半戦の被シュート数が減っていくかもしれない。
シュート数や被シュート数は、試合展開や対戦相手、他の出場メンバーなど様々な要素に影響されるため、今回のSCOOPの数字がそのまま選手の能力を示すわけではない。ただ、こうした影響力を持った選手がこれから出場機会を増やすのか、出場した際にどんなパフォーマンスを発揮するのか、という視点で後半戦を見ていくのも面白いだろう。
(文章/データ提供:データスタジアム株式会社)