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コラム

川端 暁彦の千態万状Jリーグ

2017/3/17 19:04

ルヴァンカップ開幕戦を終えて…。新レギュレーション「U-21枠」の意義(#53)

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昨季途中から大会名称を改めてJリーグYBCルヴァンカップ。今季は開幕からその名を冠しつつ、新ルールの下での開幕を迎えることとなった。最も大きな影響を与えるであろう新レギュレーションは、「21歳以下の選手を1名以上先発に含める(決勝を除く)」というシンプルな一文に表される。「東京五輪を見据えてJリーグも(代表強化に)貢献していく必要がある」(Jリーグ・村井 満チェアマン)という考えから、新たに導入された施策だ。

元よりチームのレギュラーに21歳以下の選手が含まれている場合は特に従来と違いもなさそうだが、そうでないチームも少なくない。各チームの監督は21歳以下の選手から「誰」を選ぶのかを問われることになるし、21歳以下の選手にとってはその一人になるための争い、あるいは“望み”のようなモノが生まれてくることになる。

開幕戦では、小川(磐田)ら今季初先発となる選手が「U-21枠」でピッチに立っている
開幕戦では、小川(磐田)ら今季初先発となる選手が「U-21枠」でピッチに立っている

第1節の6試合に臨んだ12チームでは、合計25名の21歳以下の選手たちがスターティングラインナップに名を連ねた。その中には柏DF中山 雄太や新潟MF原 輝綺のように普段のリーグ戦から先発している選手も多いが、新たな「1名」としてチョイスされた選手も少なくない。磐田FW小川 航基、清水DF立田 悠悟、鳥栖FW田川 亨介らが「1名」として今季初先発のピッチに立っている。

もちろん若手は試合にちょっと出せば育つなどという単純なものでないことは言うまでもないが、ノーチャンスでないことはモチベーションにもつながる。また指揮官にとっては熟練の選手を外して若手を使うチャレンジに関し、背中を押される一面もあるだろう。若手の起用が大失敗に終わったとしても、「規定があったので仕方なかった」と言えるし、起用が上手くハマれば“めっけ物”である。

甲府の「U-21枠」として出場した熊谷。吉田監督は「いいモノを見せてくれた」と振り返った
甲府の「U-21枠」として出場した熊谷。吉田監督は「いいモノを見せてくれた」と振り返った

私が観戦した広島と甲府のルヴァンカップ開幕戦では、甲府の吉田 達磨監督が高卒3年目のMF熊谷 駿を21歳以下枠の選手としてチョイス。正直に言えば不安もあったようだが、実際のプレーは及第点のものを見せた。「僕が思っていたより、ほとんどの人が思っていたよりもいいモノを見せてくれた」と振り返った指揮官は、制度の意義についても、以下のようにコメントした。

「若い世代が出やすくなる施策で、とても前向きに捉えている。どうしてもくすぶりがちな若い選手に刺激を持った(試合に向けた準備期間の)1週間なり3日間なりが与えられる。この枠があったことで、今日、一人の選手が経験を積むことができた」(吉田監督)

「この枠があったことで、一人の選手が経験を積むことができた」と吉田監督はこの制度に肯定的な意見を残している
「この枠があったことで、一人の選手が経験を積むことができた」と吉田監督はこの制度に肯定的な意見を残している

もちろん、大会における競争力という意味では難しい面もある。甲府のように財政規模の大きくないクラブはどうしても高卒の有力な新人を獲得できない傾向があり、「(大きなクラブの若手よりも)鍛えなければいけない18、19歳が多い。下の年代にいけばいくほど(個人能力の)差が広がる」(吉田監督)というのは一面の事実だろう。単純に「勝つ」ことを考えれば21歳以下の選手層で劣る甲府のような中堅クラブにとって嬉しい制度ではない。ただ、そんな立場にあるクラブの指揮官が、制度に肯定的だったのは印象的だった。

個人的には、スモールクラブに若手の有力選手が行きたがらない傾向自体がどこかおかしいとも感じていて、ビッグクラブでベンチ外になるより、スモールクラブでピッチに立つことを選ぶ若手がもっと増えていいとも思うのだが、その辺りの機微についてはまた別稿に譲ることとしたい。いずれにせよ、21歳以下枠を使ってピッチに立った選手は、いわば下駄を履いてピッチに立ったに過ぎない。この新制度が成功だったと言えるのは、この日新たに出場機会を得た選手たちがリーグ戦でも先発するようになってからにしたいと思う。