いよいよ本日、明治安田生命Jリーグチャンピオンシップ決勝の第1戦が開催される。その試合を前に今回は鹿島アントラーズが川崎フロンターレを下した23日の準決勝の戦いを振り返ってみたいと思う。
この大会のレギュレーション上、年間勝点で鹿島よりも上位にいた2位の川崎Fは、引き分けでもファイナルへ駒を進められるのに対し、鹿島は勝利でしか決勝に行けないという状況にあった。そうした両者の心理が、立ちあがりからよく表れていたように思う。次の映像でも見て分かる通り、とりわけ鹿島は積極的に前から取りに行っていたように“勝つ”ということを意識した戦いを前面に押し出していた。
一方の川崎Fは、怪我人の影響があったことは否定できないと感じた。中村 憲剛はベンチスタートで、小林 悠と大島 僚太はメンバーにも入れなかった。ボランチには板倉 滉、シャドーの位置に三好 康児、そして1トップに長谷川 竜也と若い3人を抜擢。彼らは直近の天皇杯の浦和レッズ戦で好パフォーマンスを見せていただけに、風間 八宏監督はその勢いを買った側面もあったように思う。一方で試合巧者の鹿島に対し、この大舞台でどれだけできるのかという不安要素も少なからずあったとは思うんだけどね。
■限られた中で最大限のことをやった川崎F
そんな中で川崎Fは選手が“いないなり”の戦いを実践していたと思う。板倉は大島とはタイプが異なり、高さがありフィジカルを活かした守備で貢献していた(ここで大島だったら・・というシーンもあったことは事実だが)。三好も自由に動いて果敢なプレーを見せていた。また、映像でピックアップするけど、スピードに長けた長谷川を生かすためにシンプルに裏を突くという意図もこの試合では感じられた。これがこの試合の川崎Fの狙いの一つだったように思う。限られた手駒のなかで、最大限やれることをやっていたという印象を受けたよ。
しかしみなさんもご存じの通り、前半21分でその長谷川が負傷退場となってしまったよね。結果的に早い段階で中村を出場させることになったわけだけど、これが良かったか悪かったかはわからない。それでも用意してきたモノを予想外の事態で変更せざるを得なくなったわけだから、川崎Fにはやっぱり、小さくないダメージがあっただろうと思う。
またこの試合は、川崎Fは動き出しのタイミング、パスの出し手と受け手のタイミング、足元で欲しいのかスペースで欲しいのか、そういった細かい部分で選手間にズレがあり、結果ボールロストが増えてしまい、いつものリズムが作り出せない時間が続いていたように感じる。これも負傷者が多かった事が少なからず影響をしていたのではないだろうか。
■小笠原と永木のボランチ
そうしたアクシデントに苛まれた川崎Fに対し、鹿島は狙い通りの戦いができていたと思う。とりわけ際立ったパフォーマンスを見せていたのが、小笠原 満男と永木 亮太の2ボランチだ。次の映像を見ると分かる通り、このふたりはこの試合、中盤で相手のボールを奪い続けていた。
後半立ち上がりに先制してからは、次第に重心が後ろになって逃げ切り型に移行していったけど、個人的にはそれまで通りに前から奪いに行ったほうがいいのかなと思っていた。
受け身になると相手の圧力に耐えきれないことがよくあるからだ。それでも鹿島は昌子 源を中心に最後の場面を良く持ちこたえた。登里 享平が出てくれば永木を同サイドに回し、終盤のエドゥアルドのパワープレーに対しては、高さのある植田 直通をあてがって対応したりと、石井 正忠監督の采配も理にかなっていたと思う。こうした一発勝負の戦いに慣れている鹿島が、この大一番で伝統の勝負強さを発揮した。クラブとして勝ち方を知っているのは、やはり大きな強みだよね。
■まとめ
これで決勝は浦和と鹿島の対戦となった。たしかに鹿島とすれば、2ndステージは苦しい戦いが続いていたけど、この準決勝で悪い流れを一掃できたんじゃないかな。
一方の浦和は、最後の公式戦から2週間以上も試合から離れている。あまり試合間隔が空いてしまうのは選手の立場からすれば嫌なのは間違いない。シーズンを良い流れできていたわけだから、なおさらだろうね。
今季のリーグ戦での両チームの対戦は、1勝1敗と五分。1stステージでは鹿島が勝ち、2ndステージでは浦和が勝ったわけだけど、ともにアウェイゲームをモノにしているのが興味深い点だ。その意味で第1戦は鹿島のホームとはいえ、そのアドバンテージが上手く働くかは定かではない。
もっとも勝ち上がってきたチームのほうに勢いが備わっているのも事実だろうね。鹿島とすれば川崎F戦と同様の戦いを演じたいところだろうけど、決勝は一発勝負ではなく、ホーム&アウェイ方式で、2試合をトータルで考える必要があるからまた違った駆け引きになるだろう。
注目はやはり第1戦。鹿島は当然勝ちに行くはずだし、浦和は負けたくないという気持ちが強く働くと川崎Fみたいになってしまう可能性もあるから、こちらもアグレッシブに行きたいところだろう。とはいえ、相手の勢いや自分たちの試合勘といった要素を踏まえれば、慎重に戦う可能性もある。浦和がどういった姿勢で試合に入っていくのか。まずはそこが見どころだね。
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