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コラム

川端 暁彦の千態万状Jリーグ

2016/9/24 17:45

熱い16歳の「約束された死闘」へ。この戦いはJの未来へ繋がっていく(♯44)

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「鉄は熱いうちに打て」と言う。その意味で言えば、16歳は熱さの盛り。9月15日からインド・ゴア州内で開催されているAFC U-16選手権に臨むU-16日本代表が、まさに正念場にして決戦を迎えようとしている。打てるか、打てないか。それを懸けて。

FIFA U-17ワールドカップに出場できるアジアの枠は全部で4つ。平たく言ってしまえば、「ベスト4に入れば世界行き」である。これを逆に言えば、「準々決勝で負ければ終わり」ということになる。日本時間の25日23時30分から、U-16日本代表はそんな最終決戦に臨むことになる。

U-17W杯出場をかけ、U-16日本代表がいよいよ最終決戦に臨む
U-17W杯出場をかけ、U-16日本代表がいよいよ最終決戦に臨む

この大会にはJリーグからも熱い視線が注がれている。単純にメンバー23名中19名がJリーグのアカデミーに所属しているクラブの未来を背負うべき選手たちということもあるが、「アジアで勝てなくなった」と言われて久しいJクラブにとっては学びの場でもある。異なる環境、異なるスタイルの相手に、どう戦ってどう勝つか。その方法論のヒントは、16歳の戦いの中にも眠っている。

Jリーグでは日本サッカー協会との連携事業「JFA/Jリーグ協働プログラム」の一環として、今大会と10月に行われるAFC U-19選手権にJ1からJ3までの各クラブからアカデミーダイレクター(育成部門の責任者)や現場の指導者たちを派遣している。人的交流を促すと同時に、グループワークや個々の試合分析を通じてのディスカッションも行う。日本サッカー協会からも木村 浩吉技術委員らが出席し、チームや大会についての解説を行うなど、双方が多忙な中でどうしても情報共有がなくなりがちなJリーグとJFAの橋渡しの場として活用している。

アジアで勝てなくなったJリーグ関係者からも今大会は熱い視線が注がれている
アジアで勝てなくなったJリーグ関係者からも今大会は熱い視線が注がれている

「インド組」には、今回教え子を大量6名も送り出したC大阪U-15の大畑 開監督など当事者意識を持てる指導者も多く参加。育成年代のリーグ戦が当たり前となる中で、所属チームの活動に追われて指導者がチームの外に出て学ぶ時間が減ってしまっているという指摘もあるだけに、こうした場の持つ意味は小さくない。インドには計22名、バーレーンには計27名のJクラブ関係者が参加することとなっているほか、ドイツ、オランダ、ベルギー、イングランドにも指導者を研修で派遣し、本場から「学ぶ」ことを促していく考えだ。

2年前、U-16日本代表はアジアの準々決勝に散って、世界大会への切符を得られなかった。今回も「絶対にタフな試合になる」(森山 佳郎監督)という覚悟を持って、UAEとの世界切符獲得マッチに臨むことになる。試合前日の記者会見に臨んだ森山監督は「若い選手が段階的に世界を経験することには大きな意味がある。U-17ワールドカップという舞台は選手が大きく成長する機会だと思っている。そういう機会を逃したくないという気持ちで戦う」と力強く語った。

U-16日本代表の森山監督は「成長する機会を逃したくない気持ちで戦う」と力強く語った
U-16日本代表の森山監督は「成長する機会を逃したくない気持ちで戦う」と力強く語った

16歳のうちから経験する死闘必至の「アジアの戦い」。単に試合をこなしたというだけでも財産になる部分はあるだろうけれど、ぜひ「勝利経験」となって彼らの心身に蓄積し、近未来において彼らがクラブの一員としてAFCチャンピオンズリーグを戦うとき、あるいは日本代表の一員としてワールドカップ予選などを戦うときに、一つの武器となってくれることを願いたい。

たかが16歳の大会と思われてしまうかもしれないが、ここに出ている選手たちと彼らが出場権を手にすることで、来年の世界大会へのチャンスを得る同世代の選手たちが未来のJリーグと日本サッカーを背負っていくのだ。Jリーグの関係者だけにとどまらず、より幅広い人たちに「約束された死闘」を観てもらいたい。